潰瘍性大腸炎やクローン病は、お腹の痛みや繰り返す下痢、血便、発熱、体重の減少などにより、仕事や日常生活に大きな支障が出ることがあります。症状が落ち着く「寛解」と、悪化する「再燃」を繰り返すため、見た目には分かりにくく、「これくらいで申請してよいのだろうか」と迷われる方も少なくありません。さらに、症状が重く人工肛門(ストーマ)を造設された方もいらっしゃいます。この記事では、香川を拠点に中四国で活動する社労士の視点から、潰瘍性大腸炎・クローン病、そして人工肛門を造設した場合の障害年金の認定基準と、申請で気をつけたいポイントを整理します。
潰瘍性大腸炎・クローン病でも障害年金の対象になります
潰瘍性大腸炎・クローン病は、いずれも国の指定難病ですが、「難病だから対象」「難病だから対象外」という決まり方はしません。障害年金は、病名ではなく、その病気によってどれだけ生活や仕事が制限されているか、という「障害の状態」で判断されます。
どんな病気で、なぜ生活に支障が出るのか
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に、クローン病は口から肛門までの消化管に炎症が起こる病気で、まとめて炎症性腸疾患(IBD)と呼ばれます。慢性的な下痢や腹痛だけでなく、栄養がうまく吸収できないことによる体重減少や貧血、強い倦怠感、関節の痛みなど、全身に影響が及ぶこともあります。トイレが近くて外出や勤務が難しい、体力が落ちて働き続けられないなど、生活への影響は人によってさまざまです。
「その他の疾患による障害」として判断されます
これらの病気は、障害認定基準の「その他の疾患による障害」という区分で審査されます。ここでは、全身状態や栄養状態、年齢、術後の経過や予後、原疾患の性質や進行状況、そして具体的な日常生活の状況などを総合的にみて、等級が判断されます。検査数値だけで機械的に決まるものではなく、暮らしへの影響が丁寧に見られる点が特徴です。
1級・2級・3級の基本的な考え方
消化器の障害は身体(内部)の障害ですので、症状の重さに応じて1級・2級、3級のいずれにも該当する可能性があります。おおまかな考え方は次のとおりです。
- 1級…身のまわりのことが自分ではできず、長期にわたる安静が必要な程度
- 2級…日常生活が著しい制限を受ける程度(軽い家事や事務作業も難しくなりやすい)
- 3級…労働が制限を受ける程度(働くことに支障が出ている状態。障害厚生年金のみ)
3級は、初診日に厚生年金に加入していた方が対象となる等級です。初診日が国民年金のみだった場合は、1級・2級が対象となる点もあわせて覚えておきましょう。
人工肛門(ストーマ)を造設した場合の認定基準
症状が重く、人工肛門(ストーマ)を造設された場合には、認定基準のなかではっきりとした取扱いが定められています。組み合わせによって等級が変わる点が大切なポイントです。

人工肛門・新膀胱・尿路変更術は原則3級
人工肛門を造設したもの、新膀胱を造設したもの、または尿路変更術を施したものは、原則として3級と認定されます。ここで注意したいのは、3級は障害厚生年金にしかない等級だということです。そのため、初診日が国民年金のみ(20歳前や被扶養配偶者の時期を含む)だった場合、人工肛門の造設だけでは障害基礎年金を受け取れないことがあります。
2級に認定される組み合わせ
次のような場合には、2級と認定されます。2級であれば、初診日が国民年金のみの方でも障害基礎年金の対象になります。
- 人工肛門を造設し、かつ、新膀胱を造設した、または尿路変更術を施したもの
- 人工肛門を造設し、かつ、完全排尿障害(カテーテルの留置または自己導尿を常に必要とする状態)にあるもの
全身状態によってはさらに上位の等級も
等級は造設した臓器の数だけで決まるわけではありません。全身状態や栄養状態、術後の経過や予後、原疾患の性質や進行状況などを総合的に判断し、さらに上位の等級(2級・1級)に認定されることもあります。原疾患であるクローン病や潰瘍性大腸炎そのものが重く、栄養障害や体力低下が著しい場合などは、その実態をしっかり伝えることが大切です。
知っておきたい「障害認定日の特例」
障害年金は通常、初診日から1年6か月を過ぎた「障害認定日」を基準に請求します。ところが人工肛門などの場合は、この1年6か月を待たずに請求できる特例が設けられています。

人工肛門は造設日から6か月で請求できる
人工肛門を造設した場合は、造設した日から6か月を経過した日が障害認定日として扱われます。尿路変更術の場合も、施術した日から6か月を経過した日が認定日です。初診日から1年6か月を待たなくても、造設・施術から半年が過ぎれば請求できる可能性があるということです。
新膀胱や組み合わせの場合の数え方
新膀胱を造設した場合は、造設した日そのものが障害認定日になります。また、人工肛門と尿路変更術を組み合わせて行ったような場合は、それぞれの手術日のうち遅いほうの日から6か月を経過した日が認定日となります。いずれにしても、手術を受けた日付の記録は申請のうえでとても重要ですので、しっかり控えておきましょう。
申請でつまずきやすいポイントと準備のコツ
潰瘍性大腸炎・クローン病の申請では、症状の波や「見えにくさ」のために、実態より軽く伝わってしまうことがあります。準備の段階で意識しておきたいコツを挙げます。
ストーマがない場合は「一般状態区分」がカギ
人工肛門を造設していなくても、内科的な治療を続けながら生活や仕事が大きく制限されていれば、障害年金の対象になり得ます。その判断で重視されるのが、日常生活の状態を5段階で示す「一般状態区分表」です。1日に何度もトイレに行く、強い倦怠感で家事が途中で止まる、体重が大きく減って体力が続かないなど、軽い作業もできない状態(区分でいう「ウ」「エ」「オ」)にあたるかどうかが大切な目安になります。
初診日の特定と病気の経過の整理
障害年金は、初めてその病気で受診した「初診日」がすべての出発点になります。お腹の不調で最初にかかった医療機関、そこから専門病院へ移った経緯などを、時系列で整理しておきましょう。長く通院していると当時の記録が分かりにくくなりがちですので、診察券やお薬手帳なども手がかりになります。
診断書と申立書に生活の支障を具体的に
調子の良い日に診察を受けると、ご本人は無意識に「大丈夫です」と答えてしまいがちです。けれども審査では、悪いときにどれだけ生活が制限されるかが重要です。トイレの回数や外出の難しさ、仕事を休んだ日数、食事の制限といった具体的な事実を、診断書と「病歴・就労状況等申立書」の両方に、食い違いなく反映してもらうことを意識しましょう。
まとめ:病名ではなく「生活への影響」を丁寧に伝えることが大切です
潰瘍性大腸炎・クローン病は指定難病ですが、障害年金は病名ではなく、生活や仕事への影響という「障害の状態」で判断されます。人工肛門を造設した場合は原則3級、新膀胱や尿路変更術との組み合わせ、完全排尿障害を伴う場合は2級となり、全身状態によってはさらに上位の等級に認定されることもあります。さらに、人工肛門なら造設日から6か月で請求できる認定日の特例もあり、思っているより早く動ける場合があります。「自分は対象になるのだろうか」と迷われたら、病気の経過と生活の様子を一緒に整理するところから始めれば大丈夫です。香川をはじめ中四国にお住まいの方は、来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
LINEでのご相談手順(24時間受付)
当センターでは、外出が難しい方でもスマートフォン一つでご相談いただけるよう、公式LINEでの無料相談・受給判定を承っております。
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