監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づき作成しています。
この記事の結論
更年期障害という診断名だけでは、原則として障害年金の対象になりません。加齢に伴う生理的な変化とみなされ、精神の障害の対象疾患には含まれていないためです。
ただし、更年期の不調をきっかけにうつ病や適応障害などと診断され、その認定基準を満たせば、障害年金の対象になります。
診断書の傷病名が「更年期障害」のままだと、実際にはうつ病相当の症状があっても審査で不利になることがあるため、正式な診断名の確認が重要です。
更年期の不調で仕事や日常生活がつらくなり、「これは障害年金の対象にならないだろうか」と考える方から、ご相談をいただくことがあります。
結論からお伝えすると、更年期障害という診断名だけでは、障害年金の対象にはなりません。ただし、これで終わりというわけでもありません。更年期の不調がきっかけとなって、うつ病などの診断に至るケースは少なくなく、その場合は状況が変わってきます。
この記事では、更年期障害と障害年金の関係を、社労士の視点から整理します。
更年期障害だけで、障害年金はもらえますか?
原則としてもらえません。更年期障害は、障害認定基準に定められた精神の障害の対象疾患に含まれていないためです。

対象疾患には、決まった一覧があります
精神の障害として障害年金の対象になるのは、うつ病、双極性障害、統合失調症、発達障害、知的障害、高次脳機能障害、てんかん等、認定基準に定められた疾患に限られます。更年期障害は、女性ホルモンの急激な減少に伴う心身の不調ですが、この一覧には含まれていません。
「対象外」であって「軽い」という意味ではありません
更年期障害が対象疾患に含まれないのは、加齢に伴う一時的・生理的な変化とみなされているためであり、症状そのものが軽いと判断されているわけではありません。ほてりや動悸、強い倦怠感、気分の落ち込みなどにより、仕事や生活に大きな支障が出ているケースも珍しくありません。
| 診断名の状況 | 障害年金の対象になるか |
|---|---|
| 更年期障害(単独) | 対象外(対象疾患の一覧になし) |
| 更年期の不調からうつ病等の診断に移行 | うつ病等の基準で判断(対象になりうる) |
更年期障害からうつ病に移行した場合はどうなりますか?
うつ病の認定基準を満たせば、障害年金の対象になります。
更年期障害は「入り口」になっていることがあります
婦人科で更年期障害と診断された後、症状が長引く中で気分の落ち込みや意欲低下が強くなり、心療内科や精神科でうつ病と診断名がつくケースは少なくありません。この場合、障害年金の請求対象となる傷病名は、更年期障害ではなく、うつ病になります。
初診日は、更年期障害での受診日になることがあります
後から診断されたうつ病が、更年期障害と関連性がある(相当因果関係が認められる)と判断された場合、最初に更年期障害で受診した日が、うつ病の初診日として扱われることがあります。婦人科への通院歴も、初診日を確認するうえで大切な記録になります。
婦人科で更年期障害と診断され、その後つらくて心療内科にも通うようになりました。障害年金の申請は、更年期障害として出せばよいのでしょうか?
社労士更年期障害という診断名のままでは、障害年金の対象にはなりません。心療内科で正式にうつ病等の診断名がついているのであれば、そちらを請求傷病として申請することになります。診断書の傷病名欄がどうなっているか、まずは主治医に確認してみましょう。
診断書の病名は、どのように影響しますか?
診断書の傷病名欄が「更年期障害」のままだと、実際の症状の重さにかかわらず、審査で不利になることがあります。
正式な診断名を確認することが第一歩です
ご本人が「更年期のせいだと思っていた」症状でも、実際には医師からうつ病や適応障害の診断がついているケースがあります。障害年金の申請を検討する際は、まず診断書に記載される正式な病名が何になるのか、医師にあらためて確認することが重要です。
何科を受診すればよいですか?
婦人科と心療内科・精神科、両方の受診歴があると、経過を伝えるうえで有利になります。

婦人科だけで抱え込まないことが大切です
更年期障害の治療は婦人科が中心になりますが、気分の落ち込みや意欲低下が強い場合は、心療内科や精神科への受診も検討することをおすすめします。両方の通院歴があることで、症状の全体像や経過を、診断書や申立書に反映しやすくなります。
よくある質問
Q. ホルモン補充療法を受けていることは、認定に影響しますか?
A. 治療内容そのものよりも、実際にどの程度日常生活や就労に支障が出ているかが重視されます。ホルモン補充療法を受けていても、症状が続いている場合はその実態を診断書に反映してもらうことが大切です。
Q. 更年期障害の症状で仕事を辞めた場合、障害年金の対象になりますか?
A. 更年期障害という診断名のままでは対象になりません。退職に至った経緯にうつ病などの診断が関わっている場合は、その診断名での申請を検討することになります。
Q. 更年期障害とうつ病、両方の診断名がついている場合はどうなりますか?
A. うつ病による症状として診断書に反映されていれば、うつ病を請求傷病として申請できます。更年期障害の症状とうつ病の症状が診断書上で混在しないよう、医師と内容を確認しておくと安心です。
Q. 男性の更年期障害(LOH症候群)も同じ扱いですか?
A. 同様の考え方になります。男性ホルモンの減少による不調も、それ単独では対象疾患に含まれておらず、うつ病等の診断がつけば、その基準で判断されます。
Q. 初診日は、婦人科の受診日になりますか?
A. うつ病等との因果関係が認められれば、婦人科での更年期障害の受診日が初診日として扱われることがあります。因果関係が認められない場合は、心療内科等での受診日が初診日になります。
まとめ:診断名の確認が、申請の可否を分ける
更年期障害だけでは、障害年金の対象にはなりません。しかし、その背景にうつ病などが隠れているケースは多く、その場合は更年期障害での受診歴が初診日として扱われることもあります。診断名だけで諦めず、正式な診断名を確認することが大切です。
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