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甲状腺の病気でも障害年金はもらえる?

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監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は障害認定基準(第18節 その他の疾患による障害、第11節 心疾患による障害、第1節 眼の障害)および日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。

この記事の結論

甲状腺の病気は、日常生活や労働に著しい支障が出るほど重い状態でなければ、障害年金の対象にはなりません。

対象になるのは、ホルモン異常が引き金となって心不全・不整脈・複視などの合併症が生じ、その合併症によって支障が出ているケースが中心です。

この場合、甲状腺の病気そのものではなく、合併症の種類に応じて第11節「心疾患による障害」や第1節「眼の障害」など、個別の認定基準があてはめられる点に注意が必要です。

「バセドウ病」や「橋本病」と診断されたとき、動悸や倦怠感が続くつらさに加えて、「これだけ働くのがつらいのに、障害年金は使えないのだろうか」と考える方は少なくありません。

実際にご相談をお受けしていても、甲状腺の病気だけで障害年金を受け取っている方は、他の傷病に比べると多くはありません。ですが、それは「甲状腺の病気が対象外」という意味ではなく、多くの方が薬による治療で症状が落ち着き、認定基準に届く水準まで進まずに済んでいるからです。逆に言えば、治療を続けても症状が改善しない場合や、合併症が出ている場合には、十分に対象となる可能性があります。

この記事では、甲状腺の病気がどのような場合に障害年金の対象になるのか、認定基準の考え方から具体的に整理します。

目次

甲状腺の病気は障害年金の対象になりますか?

日常生活や労働に著しい支障が出るほど重い状態であれば、障害年金の対象になります。逆に言えば、症状が軽く、薬でコントロールできている段階では、労働や日常生活への制限が障害認定基準の水準に届かないため、対象外と判断されるケースがほとんどです。

ここで押さえておきたいのは、障害年金が見ているのは「甲状腺の病気」という病名ではなく、「今、どれだけの支障が出ているか」という状態そのものだという点です。

甲状腺機能亢進症では動悸・体重減少・手の震え・多汗・イライラ感などが、甲状腺機能低下症では倦怠感・むくみ・体重増加・寒がりなどがみられます。これらの症状は軽度であれば治療により数か月から数年で落ち着くケースが多く、障害年金の対象になるほどの重症例はそれほど多くないのが実情です。

なぜ甲状腺の病気は申請数が少ないのですか?

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)も甲状腺機能低下症(橋本病)も、多くの場合は抗甲状腺薬やホルモン補充薬で症状をコントロールでき、安定すれば日常生活・労働への支障が障害年金の水準まで進まずに済むケースが大半だからです。

障害基礎年金と障害厚生年金、どちらが対象になりますか?

初診日にどちらの年金制度に加入していたかで決まります。厚生年金加入中に初診日があれば3級を含む障害厚生年金の対象に、国民年金加入中であれば1級・2級のみの障害基礎年金の対象になります。

どんな合併症があると障害年金の対象になりますか?

心不全・不整脈・複視などの合併症により、日常生活や労働に著しい支障が出ている場合、障害年金の対象になります。バセドウ病では甲状腺ホルモンの過剰分泌が心臓に負担をかけ続けることで、心房細動や心不全を引き起こすことがあります。またバセドウ病眼症により、複視や視力低下が生じることもあります。橋本病でも、重症化すると心嚢液貯留などの合併症がみられるケースがあります。

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甲状腺の病気そのもの心不全・不整脈などの合併症眼症状(複視・視力障害)
適用される認定基準第18節 その他の疾患による障害第11節 心疾患による障害第1節 眼の障害
判断のポイント全身状態・日常生活の制限度合いを総合的に判断心機能の程度・検査数値・日常生活の制限視力・注視野の測定結果

バセドウ病の心臓への影響にはどんなものがありますか?

動悸や頻脈が続くと心臓に負担がかかり、心房細動や心不全、狭心症・心筋梗塞のリスクが高まることが知られています。放置する期間が長いほど、心臓への影響が蓄積しやすくなります。

バセドウ病眼症とはどのような症状ですか?

眼球の突出、複視(物が二重に見える)、視力低下などがみられる合併症です。症状が重い場合は視神経が圧迫され、日常生活に大きな支障が出ることがあります。

バセドウ病による心不全や不整脈は、何の認定基準で判断されますか?

甲状腺の病気そのものではなく、障害認定基準「第11節 心疾患による障害」にもとづいて判断されます。心疾患の認定基準では、心不全の重症度や検査成績(心エコー、心電図等)、日常生活の制限の程度から総合的に等級が判断されます。

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認定基準には、不整脈それのみでは認定の対象とならないが、心不全を合併する場合やペースメーカーの装着を要する場合には対象となりうる、という趣旨の記載があります。甲状腺の病気が引き金であっても、実際の等級判定は心疾患の基準にもとづいて行われる点がポイントです。

バセドウ病で不整脈があるんですが、これも障害年金の対象になりますか?

社労士

不整脈だけでは対象になりにくいのですが、心不全を合併していたり、日常生活に大きな制限が出ている場合は対象になる可能性があります。診断書に、息切れや浮腫などの自覚症状を具体的に書いてもらうことが大切ですよ。

心不全の診断書にはどんなことを書いてもらえばよいですか?

息切れ・浮腫・動悸などの自覚症状に加え、心エコーやBNP値などの検査数値、日常生活でどこまで制限されているかを具体的に医師に伝え、診断書に反映してもらうことが重要です。

心不全による等級はどのように決まりますか?

心不全の重症度や日常生活動作の制限度合いをもとに、1級から3級のいずれかに認定されます。具体的な等級は個々の症状によって異なるため、診断書の内容次第で結果が左右されます。

バセドウ病眼症による視力障害・複視も対象になりますか?

視力障害や複視が日常生活に大きな支障を及ぼしている場合、障害認定基準「第1節 眼の障害」にもとづいて対象になります。視力障害は矯正視力の測定値、複視は注視野の測定結果などをもとに等級が判断されます。

バセドウ病眼症が原因であっても、判定に使われる基準そのものは、他の原因による眼疾患と同じものが用いられます。

複視はどのように認定されますか?

複視の認定は、注視野の測定結果にもとづいて判断されます。両眼で見たときに物が二重に見える範囲が広いほど、日常生活への支障が大きいと判断されやすくなります。

眼科と内分泌内科、両方の受診が必要ですか?

甲状腺の治療を行う内分泌内科に加えて、眼症状については眼科での検査・診断書作成が必要になることが多く、両方の受診歴を整理しておくことが申請の準備につながります。

甲状腺の数値が正常化した後でも申請できますか?

甲状腺ホルモンの数値が正常化していても、合併症による後遺症が残っていれば申請できます。障害年金は「病名」ではなく「障害の状態」で判断される制度のため、治療によって甲状腺の数値そのものは落ち着いても、心臓や眼に生じた後遺症が続いていれば、その状態にもとづいて申請することが可能です。

初診日はどのタイミングになりますか?

甲状腺の病気で最初に医療機関を受診した日が初診日になるのが原則です。心不全や眼症状が後から現れた場合でも、それらが甲状腺の病気に起因すると医学的に判断されれば、同じ初診日として扱われます。症状が出ていた期間の記録が残っていれば、さかのぼって請求できる場合もありますが、時効により受け取れる年金は5年分が限度である点は押さえておいてください。

症状固定とはどう考えればよいですか?

治療を続けても症状の改善が見込めない状態になった時点を「症状固定」とし、そこから障害認定日を判断することがあります。治療効果が期待できない段階に至っているかどうかがポイントです。

よくある質問

Q. 橋本病でも障害年金の対象になりますか?

A. 橋本病も、心不全や粘液水腫などの重い合併症を伴えば対象になります。橋本病は甲状腺機能低下症の代表的な原因で、レボチロキシンによる補充療法で症状が安定するケースが大半ですが、治療が難しい重症例では対象になる可能性があります。

Q. 甲状腺の病気だけで障害厚生年金3級に認定された例はありますか?

A. 甲状腺の病気だけで3級に認定される例は多くありません。3級は「労働が制限を受ける程度」という基準ですが、多くの方は薬による治療でこの水準まで進まずに済んでいるためです。

Q. 甲状腺クリーゼでも障害年金の対象になりますか?

A. 甲状腺クリーゼ自体は急性の重篤な状態ですが、後遺症が残らなければ障害年金の対象にはなりにくいです。障害年金は継続する障害の状態を評価する制度のため、一時的な急性増悪だけでは認定要件を満たしにくい点に注意が必要です。

Q. 診断書はどの様式を使えばよいですか?

A. 甲状腺の病気そのものであれば「血液・造血器・その他の障害用」の様式を、心不全であれば「循環器疾患の障害用」、眼症状であれば「眼の障害用」を使用します。合併症が複数ある場合は、それぞれの様式を組み合わせて提出することもあります。

Q. 障害年金の更新はどのくらいの頻度でありますか?

A. 更新の頻度は個々の症状や状態によって異なり、1年から5年程度の間隔で診断書の再提出を求められるのが一般的です。症状が安定していれば、更新間隔が長くなる傾向があります。

Q. 障害年金はいくらもらえますか?

A. 障害基礎年金は1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円です(令和8年度、子の加算を除く)。障害厚生年金は加入期間や給与水準によって金額が変わるため、一律の金額でお答えすることはできません。

まとめ:甲状腺の病気と障害年金の申請ポイント

甲状腺の病気は、症状が落ち着いていれば障害年金の対象になりにくい一方、心不全や不整脈、複視などの合併症によって生活や仕事に大きな支障が出ている場合は、対象になる可能性があります。大切なのは「甲状腺の病気」という病名ではなく、今どれだけの支障が出ているかを診断書や申立書に具体的に伝えることです。

香川・岡山・愛媛で障害年金のご相談をお受けしていても、甲状腺の病気は合併症の種類によって使う認定基準が変わる、判断の難しい傷病だと感じています。「自分のケースは対象になるのだろうか」と一人で悩み続けるより、早い段階で専門家に症状を整理してもらうほうが、結果的に準備がスムーズに進むことも多いです。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。

参考資料

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この記事を書いた人

請川 智章のアバター 請川 智章 社会保険労務士・障害年金専門

香川県観音寺市を拠点とする障害年金専門の社会保険労務士
登録番号第37250012号 香川県社会保険労務士会会員
精神疾患・身体障害・難病など幅広い傷病の障害年金申請をサポートし、香川・岡山・愛媛を中心に中四国全域からの相談に対応。

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