監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は障害認定基準(第7節 肢体の障害、第12節 腎疾患による障害、第14節 血液・造血器疾患による障害、第18節 その他の疾患による障害)および日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
全身性エリテマトーデス(SLE)は、関節・腎臓・血液など症状が及ぶ部位に応じた認定基準にもとづき、日常生活や労働に支障が出ていれば障害年金の対象になります。
関節の症状が中心であれば「肢体の機能の障害」、腎機能の低下があれば「腎疾患による障害」など、症状の中心がどこにあるかを診断書に正確に反映してもらうことが重要です。
どの症状にも明確に当てはまらない全身症状が中心の場合は、「いわゆる難病」として第18節にもとづき、日常生活全体の制限度合いから総合的に認定されます。
全身性エリテマトーデス(SLE)は、関節の痛みや倦怠感だけでなく、腎臓や血液など複数の臓器に症状が及ぶことがある病気です。「症状が多岐にわたるせいで、障害年金の申請でどう説明すればいいのか分からない」というご相談は少なくありません。
実際、SLEは指定難病のひとつで、障害基礎年金・障害厚生年金のいずれでも、1級から3級まで幅広い等級で受給されている実績が確認できる傷病です。ただし、どの認定基準があてはめられるかは、症状がどの臓器に強く出ているかによって変わります。
この記事では、SLEの症状のタイプごとに、どの認定基準にもとづいて等級が判断されるのかを整理します。
全身性エリテマトーデス(SLE)は障害年金の対象になりますか?
日常生活や労働に支障が出ていれば、障害年金の対象になります。SLEは発熱・関節痛・皮疹といった全身症状に加え、ループス腎炎、血液の異常、中枢神経症状など、人によって症状の現れ方が大きく異なる病気です。
そのため、SLEには「この節で判断する」という単一の認定基準があるわけではなく、症状の中心がどこにあるかによって、あてはめられる認定基準がまるごと変わります。この仕組みを理解しておくことが、診断書の依頼先や記載内容を考えるうえで重要になります。
| 症状の中心 | 適用される認定基準 |
|---|---|
| 関節の痛み・動かしにくさ | 第7節 肢体の障害(肢体の機能の障害) |
| ループス腎炎(腎機能の低下) | 第12節 腎疾患による障害 |
| 貧血・血小板減少などの血液異常 | 第14節 血液・造血器疾患による障害 |
| いずれにも明確に当てはまらない全身症状 | 第18節 その他の疾患による障害(いわゆる難病として総合認定) |
SLEは指定難病ですか?
はい、SLEは厚生労働省が定める指定難病のひとつです。障害認定基準の「いわゆる難病」の規定では、発病の時期が不定・不詳であり、臨床症状が複雑多岐にわたる疾患について、客観的所見にもとづく日常生活能力の程度を十分考慮して総合的に認定する、とされています。
障害基礎年金と障害厚生年金、どちらが対象になりますか?
初診日にどちらの年金制度に加入していたかで決まります。厚生年金加入中に初診日があれば3級を含む障害厚生年金の対象に、国民年金加入中であれば1級・2級のみの障害基礎年金の対象になります。SLEは20〜40代の女性に多く発症するため、就労中に初診日を迎えるケースも少なくありません。
関節の症状が中心の場合、何の認定基準で判断されますか?
関節の痛みや動かしにくさが上肢・下肢などの広い範囲に及んでいる場合、障害認定基準「第7節 肢体の障害」のうち「肢体の機能の障害」にもとづいて判断されます。これは関節リウマチと同じ枠組みで、関節可動域・筋力・巧緻性・速さ・耐久性などを考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定するものです。
「新聞紙をつまめるか」「タオルを絞れるか」「ボタンをとめられるか」といった、日常生活の具体的な動作がどこまでできるかが、診断書上でも重要な判断材料になります。
関節の痛みで家事がつらいのですが、これは対象になりますか?
社労士痛みそのものよりも「実際にどこまで動作ができないか」が見られます。タオルを絞る、ボタンをとめるといった具体的な動作のレベルで、できないことを医師に伝えておくと診断書に反映されやすくなりますよ。
関節リウマチの認定基準と同じですか?
はい、関節の症状が広範囲に及ぶ場合は、関節リウマチと同じ「肢体の機能の障害」の認定基準・認定要領が使われます。原因となる病名がSLEであっても、関節への影響の大きさそのものが判断材料になります。
皮疹や日光過敏などの症状は考慮されますか?
皮疹や日光過敏だけを理由に等級が上がることは多くありません。ただし、全身の症状の一部として、日常生活全体にどれだけ支障が出ているかを判断する材料のひとつにはなります。
ループス腎炎(腎臓の症状)がある場合は、何の認定基準で判断されますか?

ループス腎炎により腎機能が低下している場合、障害認定基準「第12節 腎疾患による障害」にもとづいて判断されます。認定基準には、全身性疾患による腎障害として糖尿病性腎症や膠原病などが明記されており、SLEによる腎障害もこの枠組みで評価されます。
血清クレアチニン濃度や内因性クレアチニンクリアランス値などの検査成績と、日常生活の制限度合いをあわせて総合的に認定します。人工透析療法を行っている場合は、原則として2級と認定されます。
腎生検を受けていないと申請できませんか?
腎生検の結果がなくても申請自体は可能です。ただし、尿蛋白量や血清クレアチニン値などの検査成績が診断書に具体的に記載されていることが、適切な等級判定につながります。
人工透析になる前でも申請できますか?
できます。人工透析療法施行中は原則2級となりますが、透析導入前であっても、検査成績が中等度以上の異常を示し、日常生活に著しい制限が出ていれば、2級またはそれ以上に認定される可能性があります。
血液の異常(貧血・血小板減少など)がある場合はどうですか?

貧血や血小板減少などの血液異常が続いている場合、障害認定基準「第14節 血液・造血器疾患による障害」にもとづいて判断されます。SLEでは、免疫の異常によって赤血球や血小板が破壊される溶血性貧血や血小板減少がみられることがあります。
ヘモグロビン濃度や血小板数などの検査数値に加え、輸血の頻度や出血傾向の程度などをあわせて、等級が総合的に判断されます。
ステロイドで数値が改善していても対象になりますか?
治療によって数値が一時的に改善していても、頻繁な輸血が必要だったり、治療を続けても改善が乏しい状態が続いていたりする場合は、対象になる可能性があります。検査成績は変動しやすいため、経過の中で最も病状をあらわす時期の数値が参考にされます。
関節症状と血液の症状、両方ある場合はどうなりますか?
複数の障害が重複する場合は、それぞれの認定基準にもとづいて判断したうえで、「第19節 重複障害」の考え方にしたがって併せて認定されることがあります。単独では軽い等級でも、重複により結果的に上位等級となるケースもあります。
どの症状にも当てはまらない場合はどう判断されますか?
関節・腎臓・血液のいずれにも明確に当てはまらない全身症状が中心の場合は、「いわゆる難病」として障害認定基準「第18節 その他の疾患による障害」にもとづき、総合的に認定されます。発熱や強い倦怠感が続き、日常生活全体に支障が出ているものの、特定の臓器の検査数値だけでは説明しきれないケースがこれにあたります。
この場合は、検査数値以上に、日常生活の具体的な状況(一般状態区分表でいう「歩行や身のまわりのことができるか」「就床が必要な時間はどれくらいか」など)が重視されます。病歴・就労状況等申立書で、体調の波や生活への影響を具体的に伝えることが大切です。
症状に波がある場合はどう伝えればよいですか?
SLEは症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことが少なくありません。調子が良い日だけでなく、悪化したときにどれだけ生活に支障が出るかを、具体的なエピソードとして申立書に記載しておくことが重要です。
主治医に何を伝えておけばよいですか?
関節・腎臓・血液のどこに症状が強く出ているかによって使う診断書の様式が変わるため、現在の症状の中心がどこにあるかを主治医と共有しておくことが、申請の準備をスムーズにします。
よくある質問
Q. 複数の症状がある場合、認定はどうなりますか?
A. それぞれの認定基準にもとづいて障害の程度を判断したうえで、複数の障害が重複する場合は「第19節 重複障害」の考え方により、あわせて認定されることがあります。単独の症状では軽い等級でも、重複によって結果的に上位等級になることもあります。
Q. 診断書はどの様式を使えばよいですか?
A. 関節症状が中心であれば「肢体の障害用」、腎臓の症状であれば「腎疾患・肝疾患・糖尿病の障害用」、血液の症状であれば「血液・造血器・その他の障害用」を使用します。症状が複数の部位にまたがる場合は、中心となる症状に応じた様式を主治医と相談して選びます。
Q. 症状が落ち着いていても更新で等級が下がることはありますか?
A. あります。更新時の診断書の内容によって、症状が改善していれば等級が下がったり、支給が停止されたりすることがあります。逆に悪化していれば、上位等級に見直される場合もあります。
Q. 障害年金の更新はどのくらいの頻度でありますか?
A. 更新の頻度は個々の症状や状態によって異なり、1年から5年程度の間隔で診断書の再提出を求められるのが一般的です。SLEのように症状に波がある傷病は、比較的短い間隔で更新が設定されることもあります。
Q. 障害年金はいくらもらえますか?
A. 障害基礎年金は1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円です(令和8年度、子の加算を除く)。障害厚生年金は加入期間や給与水準によって金額が変わるため、一律の金額でお答えすることはできません。
まとめ:全身性エリテマトーデスと障害年金の申請ポイント
全身性エリテマトーデス(SLE)は、症状が及ぶ臓器によってあてはめられる認定基準が変わる病気です。関節が中心であれば肢体の障害、腎臓が中心であれば腎疾患による障害、血液であれば血液・造血器疾患による障害、そのいずれにも当てはまらない全身症状であれば、いわゆる難病として総合的に認定されます。
香川・岡山・愛媛で障害年金のご相談をお受けしていても、SLEは症状の現れ方に個人差が大きく、どの認定基準にあてはめて申請を進めるべきか、ご自身だけで判断するのが難しい傷病だと感じています。症状の中心がどこにあるかを整理するところから、専門家に相談していただくのも一つの方法です。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
- 障害認定基準 第7節 肢体の障害(肢体の機能の障害)(日本年金機構)
- 障害認定基準 第12節 腎疾患による障害/第14節 血液・造血器疾患による障害/第18節 その他の疾患による障害(厚生労働省)
- 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)
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