「就労移行支援に通っているのですが、障害年金は申請できますか?」
こうしたご相談を、当センターでは定期的にいただきます。
就労移行支援を利用しながら障害年金を申請することは、制度上可能です。
ただし、就労移行支援の利用状況が審査に影響する場合があり、何も考えずに申請すると不利な結果につながることもあります。
この記事では、就労移行支援と障害年金の関係を整理したうえで、審査への影響と申請時の注意点をわかりやすくお伝えします。
就労移行支援とはどのようなサービスか
まず、就労移行支援の仕組みを簡単におさらいしておきましょう。
障害年金との関係を理解するうえで、このサービスの性質を正しく把握しておくことが重要です。
就労移行支援の目的と対象者
就労移行支援は、障害のある方が一般就労(企業などへの就職)を目指すために、必要なスキルや知識を身につける場所です。
障害者総合支援法に基づく福祉サービスのひとつであり、主な対象者は以下のとおりです。
- 一般就労を希望し、知識・能力の向上や職場探しなどを通じて、適性に合った職場への就労が見込まれる障害のある方
- すでに就労中の方で、職場復帰に向けた一時的な支援が必要な方(休職者も所定の要件を満たす場合に利用可)
原則として65歳未満の方が対象ですが、65歳に達する前の5年間、継続して障害福祉サービスの支給決定を受けており、かつ65歳に達する前日において就労移行支援の支給決定を受けていた方は、65歳以降も引き続き利用することができます。
プログラムの内容は事業所によって異なりますが、ビジネスマナー・パソコンスキル・コミュニケーション訓練・体力づくりなど、就職に向けた準備を段階的に行います。
利用期間は原則24ヶ月(2年間)ですが、市町村審査会の個別審査を経て必要性が認められた場合に限り、最大1年間の延長が可能です。
就労移行支援は「働いている」状態ではない
重要なポイントとして、就労移行支援の利用は「就労(働いている状態)」とは異なります。
賃金・給与は発生せず、あくまでも就労に向けた「訓練・準備」の段階です。
この点は、障害年金の審査において「就労状況」をどう評価されるかに大きく関わってきます。
就労継続支援(A型・B型)との違い
就労移行支援と混同されやすいのが、就労継続支援A型・B型です。
就労継続支援A型は雇用契約を結んで賃金が発生するサービスであり、就労継続支援B型は雇用契約なしで工賃が支払われるサービスです。
一方、就労移行支援は雇用契約も賃金も発生しない「訓練」の場です。
障害年金の審査においては、この違いが評価のポイントになることがありますので、自分がどのサービスを利用しているかを正確に把握しておきましょう。
就労移行支援の利用が審査に与える影響
就労移行支援を利用していることは、障害年金の審査においてどのように評価されるのでしょうか。
「就労に向けて動いている」と評価される可能性がある
審査官は診断書や申立書をもとに、申請者の日常生活能力や就労能力を総合的に判断します。
就労移行支援に通えているという事実は、「一定の行動能力がある」と見なされる可能性があります。
特に、週5日フルタイムで通所できている場合、「日常生活はある程度自立できているのではないか」という印象を与えることがあります。
これが審査に影響し、等級が低く判定されたり、不支給となるリスクがあります。
通所の実態と「できていないこと」を正確に伝えることが重要
就労移行支援に通っていても、そこでの実態はさまざまです。
週に数日しか通えていない・午前中だけで疲弊してしまう・プログラムに参加できない日が多い・体調の波が激しいといった状況は、審査において重要な情報になります。
「通えている」という表面的な事実だけでなく、「どのような状態で通っているか」「どんな困難があるか」を、診断書と申立書に具体的に記載することが非常に重要です。
主治医が就労移行支援の実態を把握していない場合がある
就労移行支援の利用状況について、主治医が詳しく知らないまま診断書を作成するケースがあります。
「先生には通所のことを話していない」「就労移行支援での様子を診察で伝えていない」という場合、診断書に実態が反映されない可能性があります。
就労移行支援でどのような状況にあるか・どんな困難があるかを、主治医に正確に伝えておくことが、適正な診断書作成につながります。
就労移行支援利用中に申請する際の注意点
就労移行支援を利用しながら申請を進める際に、特に気をつけていただきたいポイントをまとめます。

注意点① 通所状況を「正確に」申立書に記載する
病歴・就労状況等申立書には、就労移行支援の利用状況を記載する欄があります。
ここには、通所日数・通所時間・体調の波・できていないことなど、実態をできる限り具体的に書くことが大切です。
「週3日通えているが、通所後は疲弊して翌日は動けないことが多い」
「プログラムに参加できず休憩室で過ごす日が週の半分以上ある」
こうした具体的なエピソードが、審査官に実態を伝えるための重要な情報になります。
注意点② 就労移行支援のスタッフから支援記録をもらう
就労移行支援の事業所では、利用者の通所状況や支援の内容を記録しています。
申請の際に、こうした記録を参考資料として添付することで、申立書の内容を補強できる場合があります。
「記録を提供してもらえるか」を事業所のスタッフに相談してみてください。
提供できる情報の範囲は事業所によって異なりますが、協力的な事業所であれば快く対応してもらえることが多いです。
注意点③ 申請のタイミングを慎重に検討する
就労移行支援の利用開始直後や、就職活動が活発な時期に申請すると、「就労意欲が高く、働ける状態に近い」と判断されやすくなることがあります。
体調が安定せず通所が困難な時期・日常生活への支障が大きい時期に申請する方が、実態に即した審査結果につながりやすいことがあります。
「いつ申請するか」のタイミングについては、社労士に相談しながら検討することをおすすめします。
まとめ:就労移行支援の利用中でも申請できる。ただし「実態をどう伝えるか」が鍵

就労移行支援を利用しながら障害年金を申請することは可能です。
ただし、通所しているという事実が「働ける状態に近い」と判断されるリスクがあるため、実態を正確に伝える準備が欠かせません。
今回のポイントをまとめます。
- 就労移行支援は賃金が発生しない「訓練」であり、就労とは異なる
- 週5日フルタイムで通えている場合、日常生活能力が高いと判断されるリスクがある
- 通所の実態(困難な状況・体調の波・できていないこと)を申立書に具体的に記載する
- 主治医に就労移行支援での状況を正確に伝え、診断書に反映してもらう
- 申請のタイミングは体調・通所状況を考慮しながら社労士と相談して決める
「自分の状況で申請できるのか」「どう伝えればいいかわからない」という方は、まずご相談ください。
就労移行支援の利用状況も含めて、あなたの実態を最大限正確に伝えるためのサポートをいたします。
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