病気の診断を受け、これまで通りに働くことが難しくなる——指定難病や特定疾患と向き合う中で、そんな状況に直面される方は少なくありません。収入が減って生活が不安、自分は障害年金の対象になるのだろうかと、先の見えない不安を抱えていらっしゃるかもしれません。
結論からお伝えすると、指定難病・特定疾患であっても、障害年金を受給できる可能性は十分にあります。障害年金は、決して特別な人だけのための制度ではありません。大切なのは、制度の仕組みを正しく知り、ご自身の状態を過不足なく伝えることです。この記事では、社会保険労務士の視点から、難病の認定の考え方と、申請で押さえておきたいポイントを、できるだけ分かりやすくお伝えします。
指定難病・特定疾患と障害年金は「別の制度」です
まず最初に知っていただきたいのが、指定難病・特定疾患と障害年金は、それぞれ目的の異なる別の制度だということです。ここを整理すると、ご自身が対象になるかどうかが見えやすくなります。
「指定難病」「特定疾患」とは
指定難病は、難病法に基づき、医療費の自己負担を軽くするための助成制度の対象として国が定めた病気のことです。かつて特定疾患と呼ばれていた制度が引き継がれ、現在も多くの病気が対象に加えられています。つまりこれらは、治療にかかる医療費の負担をやわらげるための仕組みです。
障害年金は「病名」ではなく「日常生活・仕事への支障」で判断される
一方で障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事にどれくらいの支障が出ているかに応じて支給される制度です。判断のものさしは病名そのものではなく、その病気のために生活や働くことがどれだけ制限されているかです。日本年金機構の障害認定基準でも、障害の程度は日常生活の制限の度合いや労働能力の喪失の程度によって判断するとされています。
障害年金には障害の重さに応じた等級があり、障害基礎年金では1級・2級、会社員などが加入する障害厚生年金では1級から3級までと、3級より軽い状態に対する障害手当金が設けられています。難病であっても、症状の重さによってこれらの等級に当てはまる可能性があります。
「指定難病だから対象外」とは限りません
この2つが別制度であるということは、裏を返せば、指定難病に認定されていなくても障害年金を受けられる場合がある一方で、指定難病だからといって自動的に受けられるわけではない、ということでもあります。医療費助成の対象かどうかにとらわれすぎず、まずは今の自分の生活や仕事にどれだけ支障があるかという視点で考えてみてください。
難病はどのように障害年金の等級が判断されるのか
難病は、症状が多岐にわたったり、時期によって状態が変わったりすることが多い病気です。そのため、認定にも難病ならではの考え方があります。
難病は「総合的に」認定されます
日本年金機構の障害認定基準では、難病について特別な考え方が示されています。難病は発病の時期がはっきりしないことが多く、症状もさまざまな形であらわれるため、ひとつの数値だけで機械的に判断するのではなく、客観的な検査所見に加えて、日常生活への支障の程度を十分に考慮して総合的に認定するとされています。つまり、検査の数字と実際の生活のしづらさの両方が見られるということです。
複数の症状があるときは、合わせて評価されます
難病は、ひとつの臓器や部位だけでなく、全身にさまざまな症状が出ることがあります。たとえば、手足の動かしにくさ、内臓の機能の低下、強い倦怠感などが重なるケースです。このような場合、それぞれの症状を別々に切り離すのではなく、組み合わせて全体として評価する仕組みがあります。ひとつひとつは軽く見えても、合わさることで生活への影響が大きいことは、きちんと考慮されます。
検査数値に表れにくい症状も対象です
難病の中には、強い疲労感や痛み、しびれなど、検査の数値だけでは重さが伝わりにくい症状を伴うものもあります。線維筋痛症や慢性疲労症候群などがその例です。こうした病気についても、日本年金機構は診断書の記載例や認定の事例を示しており、数値に表れにくいからといって受給を諦める必要はありません。大切なのは、その苦しさを診断書や書類にていねいに反映してもらうことです。
難病で障害年金を申請するときの3つのポイント

ここからは、難病で障害年金を申請する際に、特に意識しておきたい3つのポイントをお伝えします。どれも、実態を正しく伝えるための大切な準備です。
① 初診日をていねいに確認する
障害年金では、その病気で初めて医師の診療を受けた日、いわゆる初診日が、とても重要な基準になります。ところが難病は、診断が確定するまでに複数の病院を回ったり、長い時間がかかったりすることが少なくありません。いつ、どの病院で最初に受診したかを落ち着いて思い出し、診察券やお薬手帳、領収書など、手がかりになるものを早めに探しておくと安心です。
② 診断書に「生活と仕事の支障」を反映してもらう
障害年金の審査では、主治医が作成する診断書が大きな役割を果たします。難病の場合、診察室での短い時間では、ご自宅での実際の生活のしづらさまでは伝わりきらないことがあります。家事のどんな場面で困っているか、どのくらいの時間で疲れてしまうかなど、日常の具体的な様子をメモにまとめて主治医に伝えると、診断書に実態が反映されやすくなります。
③ 病歴・就労状況等申立書で「波」や「見えない苦しさ」を伝える
申請の際には、ご自身で病歴・就労状況等申立書という書類を作成します。これは、発病から現在までの経過や、生活・仕事への影響を、ご自身の言葉で伝えられる大切な書類です。難病は症状に波があったり、外からは分かりにくい苦しさを伴ったりするため、調子の良い時だけでなく、悪い時にどれだけ生活が制限されるかを具体的に書き残すことが、適切な評価につながります。
「働いているから受給できない」とは限りません

少しでも働いていると障害年金はもらえないのでは、と心配される方は多いですが、必ずしもそうではありません。
働き方の「実態」が見られます
障害年金は、働いているかどうかだけで一律に判断されるわけではありません。どのような配慮を受けながら働いているのか、勤務時間や仕事内容にどんな制限があるのかといった、就労の実態が考慮されます。短時間勤務や在宅勤務、職場の理解のもとで限られた業務だけを担っている場合など、働けてはいるが多くの支えが必要な状態は、きちんと伝えることが大切です。
休職・退職に至った経緯も大切な情報です
難病のために休職や退職をされた場合、その経緯も重要な情報です。どんな症状で、どのように働けなくなったのかを具体的に伝えることで、現在の状態がより正確に伝わります。無理をして頑張ってきた事実は、決してマイナスにはなりません。こうした経過は、後から思い出そうとすると意外とあいまいになりがちですので、早い段階から少しずつ記録を残しておくことをおすすめします。
まとめ:指定難病・特定疾患でも、実態を伝えれば道は開ける
指定難病・特定疾患と診断され、働くことが難しくなったとき、不安でいっぱいになるのは当然のことです。けれども障害年金は、病名ではなく、生活や仕事への支障の程度で判断される制度です。難病は総合的に評価され、検査数値に表れにくい症状や症状の波も、伝え方しだいできちんと考慮されます。初診日の確認、診断書への実態の反映、申立書での具体的な記載。この3つをていねいに準備することが、受給への確かな一歩になります。一人で抱え込まず、不安なときはどうか専門家を頼ってください。
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