監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は民法、日本年金機構の公表情報および家庭裁判所の成年後見制度に関する情報に基づき作成しています。
この記事の結論
親が子の障害年金を代わりに申請することは、子どもの年齢や意思能力の状況によって可能で、必要な手続きは状況ごとに異なります。
18歳未満は親権者として(民法第824条)、18歳以上で意思表示できる場合は委任状によって、親が代理できます。
意思表示が著しく困難な場合は、家庭裁判所が選任する成年後見人による代理(民法第859条第1項)が必要になります。
「子どもが精神的に不安定で、自分では手続きができません。親の私が代わりに申請できますか?」「知的障害のある子どもの障害年金を、親が申請するにはどうすればいいですか?」こうしたご相談を、当センターでもご家族の方からよくいただきます。
結論からお伝えすると、状況によって「できること」と「必要な手続き」が異なります。この記事では、親が子の障害年金を代わりに申請するための法的な仕組みと手続きを、わかりやすく整理してお伝えします。
子どもの年齢によって、親が代理できる法的な立場は変わりますか?
お子さんが18歳未満の場合、親は民法第824条に基づき親権者として法定代理人の立場にあり、特別な委任状や成年後見制度を利用しなくても申請手続きを行うことができますが、18歳以上(成人)になると、親は自動的には法定代理人ではなくなります。年金事務所の窓口では「法定代理人(親権者)として申請する」と伝え、親権を確認できる書類(戸籍謄本など)を持参してください。
20歳前後で「立場」の整理が必要になる理由
知的障害・発達障害など20歳前に初診日がある場合、障害年金の受給は20歳到達時から始まります。18歳・19歳の時点ではまだ受給が始まっていないケースが多いため、実際に親が代理申請を検討するのは20歳前後であることが多いです。この年齢は法律上「成人」にあたり、親権者としての代理申請ができなくなるタイミングでもあるため、事前に「どのような立場で手続きするか」を整理しておくことが重要です。
成人した子どもの申請を、親が代わりに行うにはどうすればいいですか?
お子さんが意思表示できる状態であれば委任状による代理申請が、意思能力が著しく低下している場合は成年後見制度の利用が、それぞれ必要になります。この2つの方法のどちらに該当するかを見極めることが最初のステップです。

委任状には、委任する内容・本人(お子さん)の氏名・住所・押印・代理人(親)の氏名・住所・本人との関係を記載します。「意思表示できる状態」とは、委任状の内容を理解して署名・押印できる状態を指し、知的障害や精神障害があっても、内容を理解して意思を示せる場合は委任状による代理申請が可能です。年金事務所によって求められる書類が異なることがあるため、事前に電話で確認してから持参するとスムーズです。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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成年後見制度は、どのような場合に必要で、どんな手続きが必要ですか?
お子さんが委任状に署名・押印できない状態の場合、家庭裁判所が選任する成年後見人に、民法第859条第1項に基づく財産管理・代理権が認められることで、法定代理人として障害年金の申請ができるようになります。民法第7条に基づく後見開始の審判を経て、家庭裁判所が成年後見人を選任します。

| 類型 | 対象 | 権限 |
|---|---|---|
| 後見 | 判断能力がほとんどない方 | 成年後見人が広範な代理権を持つ |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分な方 | 重要な法律行為について保佐人の同意が必要 |
| 補助 | 判断能力が不十分な方 | 特定の法律行為について補助人がサポート |
成年後見人の申立て手続き
成年後見人の選任を申し立てるのは家庭裁判所です。申立てができるのは、本人・配偶者・四親等内の親族(親・子・兄弟姉妹など)・市区町村長などです。申立書、本人の戸籍謄本・住民票、本人の診断書(家庭裁判所所定の書式)、申立人の戸籍謄本、財産目録・収支状況報告書などが主な必要書類です。審判が確定すると「審判書」が交付され、これを年金事務所に提示することで法定代理人として申請が行えます。
成年後見制度を使う際の注意点
成年後見制度は、一度申し立てると原則として取り消すことができません。また、成年後見人には定期的な報告義務があり、財産管理など継続的な責任が生じます。「障害年金の申請だけのために」成年後見制度を利用することが本当に必要かどうかは、慎重に検討する必要があります。
委任状と成年後見制度、どちらを選べばいいですか?
委任状で対応できる場合は、成年後見制度より委任状を優先するほうがよいケースが多いです。成年後見制度は原則取り消しができず継続的な責任も伴うため、「障害年金の申請だけ」が目的であれば、まず委任状で足りるかどうかを検討することが現実的です。
子どもは簡単な受け答えはできるのですが、複雑な書類の内容を理解して署名できるか自信がありません。それでも委任状で大丈夫でしょうか?
社労士委任状の内容を理解して署名・押印できるかどうかが判断の分かれ目になります。判断に迷う場合は、まずは年金事務所や専門家に実際の状況をお話しいただき、委任状で対応できるか、成年後見制度の検討が必要かを一緒に確認するのがおすすめです。
よくある質問
Q. 委任状に決まった書式はありますか?
A. 決まった書式はなく手書きでも構いません。年金事務所に様式が用意されている場合もあるため、事前に電話で確認するか、日本年金機構のウェブサイトから様式を取得しておくと安心です。
Q. 保佐・補助類型でも障害年金の代理申請はできますか?
A. 障害年金の申請手続きは法律行為にあたるため、原則として後見類型の成年後見人であれば本人に代わって申請を行えます。保佐・補助の場合は代理権の範囲によるため、個別に確認が必要です。
Q. 成年後見制度を使うと、障害年金以外にも影響がありますか?
A. はい。成年後見制度は障害年金の申請のためだけの制度ではなく、財産管理や契約行為全般に及ぶ継続的な制度です。利用を始めると原則として途中でやめることができない点に注意が必要です。
Q. 親が成年後見人になれない場合、どうなりますか?
A. 家庭裁判所が本人の利益を考慮して弁護士や司法書士などの専門家を成年後見人に選任することがあります。この場合、専門家が本人に代わって障害年金の申請を行うことになります。
まとめ:お子さんの状況に合わせた方法を選ぶことが大切です
親が子の障害年金申請を代わりに行う方法は、お子さんの年齢・障害の状態・意思能力によって異なります。18歳未満は親権者として、18歳以上で意思表示できる場合は委任状で、意思能力が著しく低下している場合は成年後見制度で対応することになります。状況を正確に把握したうえで、最適な方法を選ぶことが重要です。
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参考資料
・民法 第824条・第859条(e-Gov法令検索)
・障害年金(受給要件・請求時期・年金額)(日本年金機構)
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