監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は医師法、日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
主治医が変わる前に、診断書・紹介状・診療サマリーの依頼と、お薬手帳や診察券など手元の記録の整理をしておくことが、申請への影響を最小限にする鍵です。
他の病院の医師は、自分が診察していない期間の診断書を勝手に書くことはできないため、転院前後で担当期間を分けて依頼する必要があります。
病院が閉院した場合でも、カルテの管理責任は元の管理者に引き継がれるのが原則で、代替資料や第三者証明で対応できる場合もあります。
「先生が退職されると聞いて、急に不安になってしまいました」「病院が閉院するかもしれないと言われ、どうすればいいかわからなくて…」障害年金の申請を考えている方にとって、主治医や通院先の変化は大きな不安材料のひとつです。
主治医が変わることや病院が閉院することは、残念ながら自分ではコントロールできません。しかし、事前に準備しておくことで、障害年金の申請への影響を最小限に抑えることはできます。この記事では、主治医が変わる前・病院が閉院する前にやっておくべき準備を解説します。
なぜ「転院前の準備」が障害年金に影響するのですか?
診断書を書いてもらえる医師がいなくなるリスク、カルテや診療記録が失われるリスク、初診日の証明が難しくなるリスクの3つが、転院・廃院が申請に影響する主な理由です。
診断書を書いてもらえる医師がいなくなるリスク
障害年金の診断書は、長期にわたって診療してきた主治医が書くことで、症状の経過や日常生活への影響が正確に反映されます。転院直後の医師はあなたのことをまだよく知らないため、十分な診療期間がないまま診断書を依頼しても、症状の実態が正確に反映されにくく、審査に不利な内容になってしまうことがあります。
カルテや診療記録が失われるリスク
病院が閉院する場合、カルテの保管先が不明になったり、最終的に破棄されたりするリスクがあります。カルテは初診日の証明や症状の経過確認に使われる重要な記録です。閉院後に「あの頃の記録が必要だった」と気づいても、すでに手に入らない状況になっていることがあるため、閉院が決まったと聞いたら早く動き始めることが大切です。
転院・廃院前に、何を準備しておけばいいですか?
「診断書・紹介状・診療サマリーの依頼」「自分の受診記録の整理」「転院先の医師への早めの申告」の3つが、優先度の高い準備です。

| 準備 | 依頼先・対象 |
|---|---|
| ①診断書・紹介状・診療サマリーの依頼 | 転院前の主治医 |
| ②受診記録・お薬手帳・領収書の整理 | 自分自身で保管 |
| ③申請予定の申告 | 転院先の新しい主治医 |
すでに障害年金の申請を考えている方は、転院前に診断書を書いてもらうことを強くおすすめします。「まだ申請するかどうか決めていない」という段階でも、紹介状や診療サマリーだけでも手元に残しておくと、将来の申請に役立ちます。転院先が決まったら、できるだけ早い段階で新しい主治医に申請予定を伝えておくと、診察の中で必要な情報を意識してもらいやすくなります。
まだ申請するかどうか決めていないのですが、それでも準備しておいた方がいいですか?
社労士はい、おすすめします。紹介状や診療サマリーだけでも手元に残しておけば、後で申請することになったときに大きな助けになります。記録は失われてしまうと取り戻せないことが多いので、早めの準備が安心です。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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転院後の診断書は、どんな点に注意すればいいですか?
他の病院の医師は、自分が診察していない期間の診断書を勝手に書くことはできないため、転院前後で担当期間を分けて依頼する必要があります。この原則を知らずに転院すると、証明できない空白期間が生まれてしまうことがあります。
診断書は「実際に診療した医師」が作成するのが原則
診断書は、実際に診察・治療を行った医師がそれぞれの期間について作成するのが原則です。転院前の期間の証明が必要な場合は、転院前の病院で過去の分の診断書やその控えを取得しておき、転院後の期間については、新しい主治医に診察の上で改めて作成してもらう形になります。
空白期間を作らないための対応
傷病手当金などを申請中で受給を続けている場合は、前の病院から最後の期間の証明をもらい、転院後も途切れないよう新しい主治医に引き継ぎと証明を依頼することが重要です。紹介状(診療情報提供書)を必ず発行してもらい、これまでの病状や治療内容を新しい医師に正確に伝えましょう。
病院が急に閉院した場合は、どう動けばいいですか?
まず病院に連絡してカルテの保管状況を確認し、分からない場合は都道府県の医師会や保健所に相談するのが基本の流れです。計画的な転院と違い、準備の時間が限られますが、焦らずできることから始めましょう。

まず病院に連絡してカルテの保管状況を確認する
閉院が決まった病院では、カルテの引継ぎ先が設けられる場合があります。閉院後もしばらくの間、カルテの開示請求に対応してくれる体制が整っていることもあるため、「もう閉まってしまったから無理だ」とあきらめる前に、まず電話で問い合わせてみてください。カルテの管理責任は、閉院後も元の管理者に引き継がれるのが原則で、別の医療機関に事業承継された場合は新しい管理者が管理責任を引き継ぎます。
記録がなくても「代替資料」で対応できる場合がある
カルテが完全に失われてしまった場合でも、すべての道が閉ざされるわけではありません。お薬手帳・診察券・領収書などの代替資料や、当時の状況を知っている第三者による証明書を組み合わせることで、初診日の証明に対応できることがあります。「記録がないからもう無理」と判断する前に、社労士に相談して使える資料がないかを一緒に確認してみてください。
よくある質問
Q. 転院前の主治医に診断書を拒否されたらどうすればいいですか?
A. 正当な理由なく拒否された場合でも、紹介状や診療情報提供書だけは依頼し、新しい主治医への引き継ぎ資料として活用しましょう。
Q. カルテの保存期間はどれくらいですか?
A. 医師法第24条により、診療録の保存期間は5年間と定められています。実務上はこれより長く保管している医療機関もありますが、法律上の義務は5年です。
Q. 病院が廃院した場合、カルテは誰が管理しますか?
A. 廃院後もカルテの管理責任は元の管理者に引き継がれるのが原則です。別の医療機関に事業承継された場合は、新しい管理者が管理責任を引き継ぎます。
Q. 転院先で診断書を書いてもらえるまで、どのくらいの通院期間が必要ですか?
A. 明確な基準はありませんが、症状や生活状況を医師が十分に把握できるまで、数ヶ月程度の通院期間を求められることが一般的です。
まとめ:主治医が変わる「前」に動くことが、申請の安心につながる
転院や閉院は、障害年金の申請において想定外のトラブルを引き起こすことがあります。しかし、事前に準備しておくことで、そのリスクを大幅に減らすことができます。転院前の主治医に診断書・紹介状・診療サマリーを依頼し、お薬手帳や診察券などの手元の記録を整理・保管し、転院先の医師に早めに申請予定を伝える。この3つを押さえておきましょう。「転院してしまったから申請が難しくなった」と感じている方も、来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・医師法 第24条(e-Gov法令検索)
・障害年金(受給要件・請求時期・年金額)(日本年金機構)
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