強い倦怠感で起き上がれない、特定の化学物質に反応して体調を崩す——化学物質過敏症や筋痛性脳脊髄炎(ME/CFS、慢性疲労症候群)は、見た目には分かりにくく、検査をしても異常が出にくいため、「怠けている」と誤解されてしまうことの多い病気です。本人は深刻な不調に苦しんでいるのに、周囲に理解されにくいという二重のつらさがあります。こうした「見えない不調」でも、障害年金は対象になります。この記事では、化学物質過敏症・ME/CFSで障害年金を申請する際の認定の考え方と、症状を正しく伝えるためのコツを整理します。
検査に表れにくい病気でも障害年金の対象になります
これらの病気は、血液検査や画像検査などで明確な異常が出にくく、診断そのものに時間がかかることが少なくありません。しかし、客観的な数値が出にくいことと、障害年金の対象にならないことは別の問題です。日常生活や仕事にどれだけ支障が出ているかが正しく伝われば、認定を受けられる可能性があります。

「その他の疾患による障害」として総合的に判断されます
化学物質過敏症やME/CFSは、障害認定基準の「その他の疾患による障害」の枠組みで認定されます。明確な数値基準があるわけではなく、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療や病状の経過、そして具体的な日常生活の状況などを踏まえて、総合的に等級が判断されます。検査で異常が出にくい病気だからこそ、「日常生活でどんな支障があるか」を丁寧に示すことが、何よりも重要になります。
ME/CFSは重症度分類(PS値)が参考にされます
ME/CFS(慢性疲労症候群)については、厚生労働省の研究班による重症度分類(PS値:パフォーマンス・ステータス)があり、疲労・倦怠の程度がPS0からPS9までの段階で示されます。この分類や診断基準が、認定の際の参考とされます。ご自身の状態がどの段階にあたるかを主治医に確認し、該当する症状を診断書に反映してもらうことが大切です。
検査では異常なしと言われ続けています。それでも申請できるのでしょうか?
社労士はい。これらの病気は検査数値より、日常生活への支障をどう伝えるかが鍵になります。その伝え方を一緒に整えていきましょう。
知っておきたい「初診日」の特別な取扱い
これらの病気の申請では、「初診日」の特定が大きな壁になりがちです。この点について、知っておくと役立つ取扱いがあります。
確定診断までに時間がかかる病気への配慮があります
化学物質過敏症やME/CFS、線維筋痛症などは、確定診断がつくまでに複数の医療機関を受診し、長い時間がかかることが珍しくありません。この実情を踏まえ、厚生労働省からは「線維筋痛症等に係る障害年金の初診日の取扱いについて」(令和3年8月24日 事務連絡)が出されています。この通達では、線維筋痛症・化学物質過敏症・慢性疲労症候群・重症筋無力症について、確定診断がついた日ではなく、その病気に関する一連の診療のうち初めて医師の診療を受けた日を初診日として取り扱う、という考え方が示されています。最初に症状で受診した日と確定診断がついた日が大きく離れている場合でも、申し立てた初診日が認められることがありますので、あきらめずに受診の経過を整理しておくことが大切です。
専用の診断書記載例が用意されています
日本年金機構では、化学物質過敏症・慢性疲労症候群・線維筋痛症などについて、診断書の記載例や認定事例を公開しています。これらの病気は一般的な診断書の様式だけでは症状が伝わりにくいため、こうした記載例を参考にしながら、主治医に病状を正確に書いてもらうことが、適切な認定につながります。なお、化学物質過敏症で請求する場合は、診断書とあわせて専用の調査様式(照会様式)の提出が必要です。
「見えない不調」を伝えるための準備のコツ
検査数値で示せない病気だからこそ、日常生活の実態を「言葉」で具体的に示すことが、申請の成否を分けます。準備の段階で意識しておきたいコツを挙げます。

「できないこと」を具体的な場面で記録する
「だるい」「疲れやすい」という言葉だけでは、症状の深刻さは伝わりません。たとえば「短時間の家事をしただけで翌日から数日間起き上がれない」「シャンプーや柔軟剤の匂いで頭痛と吐き気が起き、外出ができない」「会話に集中できず、内容が頭に入らない」など、できなくなった具体的な場面を記録しておきましょう。労作後に強い疲労が起こる(労作後倦怠感)といった、この病気特有の症状も、具体的なエピソードとして残しておくことが大切です。
「良い日」と「悪い日」の差を伝える
これらの病気は症状に波があり、たまたま調子の良い日に診察を受けると、実態より軽く見られてしまうことがあります。1週間のうち寝込んでいる日が何日あるか、月にどのくらい外出できないかなど、一定期間の中での「悪い日」の頻度を具体的に示すことで、波のある症状の全体像が伝わりやすくなります。日々の状態を簡単にメモしておくと、診断書や申立書を作成する際の有力な材料になります。
病歴・就労状況等申立書で生活全体を描く
診断書だけでは伝えきれない生活の実態を補うのが、病歴・就労状況等申立書です。発症からの経過、症状によって失われた生活、仕事や家事への影響などを、時系列に沿って具体的に記載することで、診断書の内容を裏付けることができます。検査数値という客観的な根拠が乏しい病気だからこそ、この申立書の役割は特に重要です。書き方に迷うときは、社労士などの専門家に相談しながら整えていくと安心です。
まとめ:見えない不調こそ、伝え方の準備が大切です
化学物質過敏症やME/CFSは、検査に表れにくく周囲に理解されにくい病気ですが、「その他の疾患による障害」として、日常生活への支障をもとに総合的に認定されます。ME/CFSでは重症度分類(PS値)が参考にされ、初診日の取扱いにも一定の配慮があります。検査数値で示せないからこそ、「できないこと」を具体的な場面で記録し、症状の波や生活全体への影響を申立書で丁寧に描くことが、適切な認定への近道です。一人で抱え込まず、伝え方の準備から一緒に始めていきましょう。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
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