監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は障害認定基準(第9節 神経系統の障害)および日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
片頭痛は、障害認定基準「第9節 神経系統の障害」の疼痛の規定にもとづき、原則として認定の対象にはなりません。
ただし、労働に常に支障がある程度まで重度な場合は、例外的に障害厚生年金3級または障害手当金として認定される可能性があります。
認定基準に片頭痛が対象外と明記されているわけではなく、疼痛の頻度・強さ・持続時間・他覚的所見をもとに総合的に判断される仕組みのため、うつ病等の精神症状を併発していれば、そちらの基準で認定されるケースも少なくありません。
強い片頭痛が続き、仕事や家事もままならない状態が続くと、「この症状で障害年金は使えないのだろうか」と考える方がいらっしゃいます。一方で、「頭痛くらいで年金なんてもらえるはずがない」と、申請自体を検討すらせずにあきらめてしまう方も多いのが実情です。実際に、片頭痛単独で障害年金を受給している方は、他の傷病に比べると多くありません。
結論から言えば、片頭痛単独での受給は簡単ではありません。ですが、認定基準を正しく理解すれば、まったく可能性がないわけでもないことが分かります。
この記事では、片頭痛が障害年金の対象になる条件と、実際に認定されるとすればどのような等級になるのかを整理します。
片頭痛だけで障害年金はもらえますか?
原則としてもらえません。障害認定基準「第9節 神経系統の障害」では、疼痛(痛み)は原則として認定の対象とならないと明記されています。片頭痛はこの「疼痛」に分類されるため、通常の頭痛の範囲では対象外と判断されます。
ただし、認定基準には「片頭痛は対象外」と病名を名指しで除外する記載があるわけではありません。疼痛には例外規定があり、症状が極めて重く、労働に常に支障が出るほどの状態であれば、その例外規定にあてはめて認定される可能性があります。「疼痛」という大きな枠組みの中で、片頭痛かどうかという病名よりも、実際にどれだけ生活や仕事に支障が出ているかが重視される仕組みになっています。
なぜ疼痛は原則として対象外なのですか?
痛みは主観的な感覚であり、他覚的(客観的)に程度を測ることが難しいためです。検査数値のように誰が見ても同じ結果になる指標がないため、原則として慎重に扱われています。
群発頭痛や慢性連日性頭痛でも同じですか?
頭痛の型(片頭痛・群発頭痛・慢性連日性頭痛等)による区別は、認定基準上は設けられていません。型そのものではなく、疼痛の頻度・強さ・持続時間や、日常生活・労働への支障の程度で判断されます。
疼痛が認定の対象になるのは、どんな場合ですか?

灼熱痛、脳神経・脊髄神経の外傷による神経痛、根性疼痛、悪性新生物に随伴する疼痛、糖尿病性神経障害による激痛等の場合に、例外的に認定の対象となります。認定基準はこれらを列挙したうえで「等」という表現を使っており、片頭痛を明確に除外してはいません。
判断の際に見られるのは、疼痛発作の頻度、強さ、持続時間、そして疼痛の原因となる他覚的所見です。頭痛日記や検査記録などで、これらを客観的に示せるかどうかが重要になります。痛みという主観的な感覚を、できるだけ客観的な記録に置き換えて伝えることが、認定の可能性を左右します。
| 判断される要素 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 頻度 | どのくらいの間隔・回数で発作が起きるか |
| 強さ | 日常生活・労働にどの程度支障をきたすか |
| 持続時間 | 発作1回あたりどのくらい続くか |
| 他覚的所見 | MRI等の検査結果、原因疾患の有無 |
頭痛がひどくて、月の半分近くは寝込んでしまうんですが、これは対象になりますか?
社労士その頻度や強さが医学的に裏付けられれば、対象になる可能性はあります。いつ、どのくらいの強さの発作が、どれくらい続いたかを記録しておくと、診断書を作成してもらう際の重要な資料になりますよ。
原因となる病気が分かっている場合は有利になりますか?
低髄液圧症候群など、頭痛の背景にある原因疾患がMRI等の検査で確認できる場合は、他覚的所見として認定の判断材料になりやすくなります。原因不明の頭痛よりも、客観的な根拠を示しやすい傾向があります。
薬でコントロールできている場合はどうですか?
薬物治療で発作の頻度や強さが抑えられ、労働や日常生活への支障が軽い場合は、認定基準の水準に届かないことがほとんどです。治療を続けても改善が乏しい状態が、判断のポイントになります。
何級として認定される可能性がありますか?
疼痛の例外規定では、3級と障害手当金の2つの基準が示されています。「軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度」のものは3級、「一般的な労働能力は残存しているが、疼痛により時には労働に従事することができなくなり、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される」ものは障害手当金に該当するとされています。
ここで注意したいのは、この規定に1級・2級の記載がないことです。つまり片頭痛のみで想定されているのは、3級または障害手当金という比較的軽い等級であり、1級・2級に相当するような重い認定は想定されていません。他の傷病を併発していない限り、片頭痛単独で1級・2級に至ることは基本的にないと考えておいたほうがよいでしょう。
障害基礎年金の対象にはなりませんか?
3級と障害手当金は、いずれも障害厚生年金の等級です。障害基礎年金には1級・2級しかないため、初診日に国民年金にしか加入していなかった方(自営業・学生・無職等)は、片頭痛のみでは対象になりにくいのが実情です。初診日にどちらの制度に加入していたかが、大きな分かれ目になります。
障害手当金とはどんな給付ですか?
障害厚生年金の対象になるほどではないものの、一定の障害が残った場合に、一時金として支給される給付です。年金のように継続して受け取れるものではなく、1回限りの支給になります。
片頭痛が原因でうつ病になった場合はどうなりますか?
片頭痛による疼痛そのものではなく、併発したうつ病等の精神症状を根拠に、精神の障害の認定基準で審査される可能性があります。慢性的な頭痛によって外出や就労が難しくなり、抑うつ状態に至るケースは珍しくありません。
精神の障害の認定基準は、疼痛の規定とは異なり1級・2級の対象もあるため、精神症状を併発している場合は、そちらの基準にもとづく申請のほうが選択肢が広がることがあります。実際に、頭痛と精神症状の両方をあわせて申請し、認定に至った例も見られます。頭痛そのものを主訴にするか、精神症状を主訴にするかによって、使う診断書の様式も変わってきます。
頭痛と精神症状、どちらを主な病名として申請すればよいですか?
ご自身の症状の中で、日常生活・労働への支障がより大きく出ている方を中心に考えるのが基本です。判断に迷う場合は、両方の症状を主治医に伝えたうえで、どちらの診断書がより実態を反映できるか相談してみましょう。
診断書にはどんなことを書いてもらえばよいですか?

発作の頻度・強さ・持続時間、そして労働や日常生活にどれだけ支障が出ているかを、具体的に記載してもらうことが重要です。「頭が痛い」という主観的な訴えだけでは、疼痛発作の頻度・強さ・持続時間・他覚的所見を求める認定基準の要件を満たしにくくなります。月に何日発作が起き、そのたびに何時間動けなくなるのか、仕事をどのくらい休んでいるのかといった具体的な情報が、審査では重視されます。
頭痛日記などで、発作が起きた日時・強さ・持続時間・そのときにできなかったことを記録しておき、診察の際に主治医へ伝えると、診断書の内容がより実態に近いものになります。
診断書はどの様式を使いますか?
「肢体の障害用」の様式を使用するのが一般的です。精神症状を併発している場合は、あわせて「精神の障害用」の診断書が必要になることもあります。
よくある質問
Q. 頭痛日記は必ず必要ですか?
A. 必須の提出書類ではありませんが、疼痛発作の頻度・強さ・持続時間を客観的に示す資料として、診断書の内容を裏付けるうえで有効です。作成しておくことをおすすめします。
Q. 片頭痛以外の症状も併発している場合、有利になりますか?
A. 症状の内容によります。うつ病等の精神症状であれば、精神の障害の基準で申請できる可能性が広がります。めまいや吐き気など疼痛に付随する症状は、疼痛の程度を裏付ける材料として考慮されることがあります。
Q. 何度も病院を変えていると不利になりますか?
A. 転院そのものが直接不利になるわけではありませんが、経過が長期にわたる病歴・就労状況等申立書の作成が難しくなることがあります。通院歴が分かる資料はできるだけ保管しておきましょう。
Q. 障害手当金を受け取ると、その後の申請に影響しますか?
A. 障害手当金を受け取った後に症状が悪化した場合は、あらためて障害年金を請求することができます。ただし、障害手当金の額によっては年金額との調整が行われる場合があるため、詳細は個別に確認が必要です。
Q. 障害年金はいくらもらえますか?
A. 障害基礎年金は1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円です(令和8年度、子の加算を除く)。障害厚生年金は加入期間や給与水準によって金額が変わるため、一律の金額でお答えすることはできません。片頭痛のみで想定される3級・障害手当金も、加入期間等に応じた計算式で金額が決まります。
まとめ:片頭痛と障害年金の申請ポイント
片頭痛は、疼痛の規定にもとづき原則として障害年金の対象になりません。ただし、労働に常に支障がある程度まで重度であれば、例外的に障害厚生年金3級や障害手当金として認定される可能性があります。認定基準に片頭痛が明確に除外されているわけではない、という点は誤解されがちなポイントです。
香川・岡山・愛媛で障害年金のご相談をお受けしていても、「頭痛くらいで」と申請を最初からあきらめてしまう方に出会うことがあります。精神症状を併発している場合はそちらの基準で申請できることもあるため、頭痛だけで判断せず、ご自身の症状全体を一度整理してみることをおすすめします。頭痛日記など、症状の記録が手元にある方は、それを持って相談いただくと状況を整理しやすくなります。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
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