「最近、障害年金の審査が厳しくなったらしい」「不支給になる人が増えているらしい」——インターネット上でこうした声を目にして、不安になっている方もいらっしゃるかもしれません。これから申請を考えている方にとっては、「自分も該当しないのではないか」と心配になるのも当然のことです。
この記事では、こうした声の背景にある事実を、厚生労働省が公表した調査報告書をもとに整理し、申請にあたって実際に大切にしたいポイントをお伝えします。難しい数字の話もありますが、結論としてお伝えしたいことはシンプルです。落ち着いて読み進めていただければと思います。
「不支給が増えた」というのは、事実として確認されています
まず結論からお伝えすると、不支給の件数・割合が増えたこと自体は、厚生労働省の調査でも確認されている事実です。ただし、その内容を正しく理解することが大切です。

令和6年度、不支給の割合が上昇しました
厚生労働省が令和7年6月に公表した調査報告書によると、令和6年度に決定された新規の障害年金のうち、「非該当」(不支給)となった割合は13.0%でした。令和5年度の8.4%と比べると、大きな上昇です。この数値は、令和6年度に決定された件数の中から無作為に抽出した1,000件をもとに集計されたものです。なお、令和元年度から障害年金業務統計の公表が始まっていますが、過去にもっとも非該当割合が高かったのは令和元年度の12.4%で、今回の13.0%はそれとおおむね同水準にあたります。
増加が大きいのは「精神障害」の申請です
傷病の種類別にみると、増加の内訳には大きな違いがあります。精神障害の非該当割合は、令和5年度の6.4%から令和6年度には12.1%と、ほぼ倍増しました。一方で、外部障害(肢体・視覚・聴覚などの障害)は10.2%から10.8%、内部障害(内臓疾患などによる障害)は19.4%から20.6%と、増加の幅はわずかでした。「審査が厳しくなった」という実感は、精神障害で申請されている方に、特に強く表れている可能性があります。
すでに受給している方への影響は、ほとんどありません
今回大きく増えたのは、新たに申請する「新規裁定」における不支給です。すでに障害年金を受給している方を対象とした「再認定」(更新)については、支給が止まる割合は令和6年度で1.0%、令和5年度では1.1%とほぼ同じ水準でした。すでに受給されている方が、今回の件によって急に支給が止まりやすくなったわけではありません。今、受給を続けている方は、過度に心配しすぎる必要はないといえます。
「審査の基準が厳しくなった」わけではありません
不支給の増加を受けて、「組織的に審査を厳格化したのではないか」という報道もありました。厚生労働省はこの点についても調査を行い、結果を公表しています。
「審査を厳しくするよう指示があった」事実は確認されませんでした
調査では、日本年金機構の理事長や障害年金センター長を含め、特定の職員が審査を厳しくするよう指示していた事実は確認されなかったとされています。また、病気やケガの状態をどのように評価するかという「障害認定基準」そのものが変更されたという事実もありません。判断のものさし自体が厳しくなったわけではないということです。
この調査結果の詳細は、厚生労働省が公表している報告書でもご確認いただけます。
▶ 令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書(厚生労働省・PDF)
増加の背景には、「目安との整合性」の確認強化があるとみられています
精神障害の審査では、「障害等級の目安」というガイドラインが用いられています。調査では、令和6年度の不支給事案のうち、この目安よりも低い等級に認定されたケースの割合が、令和5年度に比べて大きく増えていたことが分かりました。背景としては、申請件数全体の増加(症状が比較的軽い方からの申請も増えているという声がある)や、診断書と病歴・就労状況等申立書の内容を照らし合わせて確認する体制が、より丁寧になってきていることなどが挙げられています。
では、認定されやすい申請にはどんな特徴があるのか
「基準そのものは変わっていない」のであれば、これまでと同じように、ご自身の状態を正確に伝えることが、変わらず大切だということになります。調査結果からも、いくつかのヒントが見えてきます。

診断書・申立書に「実際の生活の様子」が正確に書かれているか
調査で示された例では、診断書に「一人暮らしで、家族の援助や福祉サービスは受けていない」と記載され、病歴・就労状況等申立書にも「身の回りのことは自発的にできる」と記載されていたケースがありました。この場合、診断書の特定の項目から算出される「障害等級の目安」では2級とされていたものの、両方の書類に書かれた実際の生活状況を総合的にみて、最終的には3級と判断されています。
つまり、「目安」と「最終的な等級」は必ずしも一致するものではなく、診断書・申立書に書かれた実際の生活の様子が、結果を左右します。日常生活の中で「実はこういう場面では難しい」「家族の手助けがあるからこそ何とかできている」という事情がある場合、その点を診断書・申立書の両方に具体的に書き残しておくことが大切です。「一人でできている」という記述だけが先に立つと、実際よりも軽く評価されてしまう可能性があります。
「働いている」という事実だけでなく、その実態が伝わっている
就労している場合、「働けているなら問題ない」と判断されるわけではありません。調査でも、就労していることのみをもって日常生活能力が向上したと捉えず、仕事の内容、職場で受けている援助、他の従業員とのコミュニケーションの状況などを総合的に確認するという考え方が改めて示されています。「一般雇用だが単純作業のみを担当している」「出勤しているが欠勤が多い」「家族の付き添いで何とか通勤できている」など、働き方の実態を具体的に伝えることが重要です。
一人暮らしでも、必要な支援の状況を具体的に伝える
一人暮らしをしているという事実だけで、「日常生活に支障がない」と判断されるわけではありません。家族からの援助や福祉サービスを実際に受けているか、あるいは受けていないとしても本来は必要な状態かどうかが考慮されます。「現在受けている支援」と「本来必要な支援」の両方を、具体的に整理しておくことが大切です。
今後、より丁寧な審査に向けた見直しが進められています
今回の調査を受けて、日本年金機構では、より客観的で公平な審査に向けた見直しが進められることになりました。これから申請を考えている方にとっても、知っておいて損はない動きです。
複数の医師による審査・担当医の無作為決定
今後は、不支給となるすべての事案について、複数の医師が審査を行う体制に見直されます。また、どの医師が審査を担当するかについても、担当者の意向が入らないよう、無作為に決定する仕組みが導入される予定です。判断の理由についても、申請者にとってより分かりやすい記載となるよう、ルールが整備されることになっています。
不支給となった事案の再点検
あわせて、令和6年度以降に不支給となった精神障害等の事案については、常勤の医師を中心としたチームによる再点検が行われることになっています。点検の結果、判定を見直すべきと判断された場合には、処分が取り消され、改めて支給決定が行われる可能性があります。すでに不支給通知を受け取っている方も、今後の公表情報を確認してみる価値があるかもしれません。
まとめ:基準は変わっていません。だからこそ「伝え方」が変わらず大切です
障害年金の不支給割合が上昇したことは事実ですが、これは認定基準そのものが厳しくなったわけではなく、組織的に厳格化する指示があったわけでもないことが、厚生労働省の調査で確認されています。むしろ、診断書と申立書の整合性、そして生活や仕事の実態を具体的に伝えることの重要性が、改めて浮き彫りになったといえるでしょう。
「審査が厳しくなった」という言葉だけを聞くと、不安になってしまうのも無理はありません。けれども大切なのは、ご自身の状態を正確に、一貫性を持って伝えることです。それは、これまでも、これからも変わりません。「自分の状態は正しく伝わっているだろうか」と不安に感じたときは、一人で抱え込まず、専門家に相談することも一つの方法です。
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