易疲労感や強い倦怠感が続き、お腹が張る、食欲が出ない——肝硬変や肝がんによって、これまでどおり働くことが難しくなる方は少なくありません。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、症状が外からは分かりにくいため、「これくらいで申請してよいのだろうか」と迷う方も多い病気です。この記事では、肝疾患による障害年金の認定基準と、申請の準備で押さえておきたいポイントを整理します。
肝疾患でも障害年金の対象になります
肝疾患による障害年金の対象は、慢性かつびまん性の肝疾患の結果生じた肝硬変症、そしてそれに付随する病態(食道・胃の静脈瘤、特発性細菌性腹膜炎、肝がんを含みます)です。慢性肝炎の段階では原則として対象になりませんが、検査項目の異常の数などにより、障害の状態に相当すると判断される場合は対象となることがあります。

1級・2級・3級の認定基準(法令上の文言)
肝疾患による障害は、法令上、次のように身体機能の障害や病状の程度として定められています。
- 1級…身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 2級…身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 3級…身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの(障害厚生年金のみ)
3級は、初診日に厚生年金に加入していた方が対象となる等級です。初診日が国民年金のみだった場合は、1級・2級が対象となる点もあわせて覚えておきましょう。なお、この認定の対象となるには、認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とすることが前提とされています。
数値の基準がはっきりしている病気と違い、肝臓の病気は何を基準に判断されるのか分かりにくいです。
社労士そうですね。肝疾患は検査の異常項目数と、実際の生活の状態をあわせて総合的に見るのが特徴です。一緒に整理していきましょう。
「総合的に認定する」とはどういうことか
肝疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するとされています。聴覚や視覚の障害のように1つの数値で機械的に決まるわけではなく、複数の要素を組み合わせて判断される点が特徴です。
検査項目の異常の数が重視されます
重症度の判定には、血液生化学検査をはじめ、免疫学的検査、超音波検査、CT・MRI検査、内視鏡による食道・胃静脈瘤検査などが行われます。診断書には、こうした検査項目のうち異常が認められる項目の数が記載され、その数の多さが審査における重要な手がかりとなります。一つの検査結果だけで判断されるのではなく、複数の検査の積み重ねが評価される仕組みです。
自覚症状と一般状態区分表も大切な要素です
肝疾患の主要な自覚症状としては、易疲労感、全身倦怠感、腹部膨満感、発熱、食欲不振、悪心、嘔吐、皮膚のかゆみ、吐血、下血、有痛性筋痙攣などが挙げられます。これらの自覚症状とあわせて、日常生活の状態を5段階で示す「一般状態区分表」も重要な判断材料になります。検査数値が軽度でも、自覚症状や生活への影響が大きければ、それも含めて総合的に評価される仕組みです。
肝がんや肝硬変ならではの注意点
肝硬変はB型・C型肝炎ウイルスによるものが多い一方、自己免疫性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎、アルコール性肝硬変など、原因はさまざまです。原因によって申請時に気をつけたい点も異なります。
アルコール性肝硬変は治療の継続が前提とされます
アルコール性肝硬変については、継続して必要な治療を行っていることや、検査日までの状況が確認されたうえで認定が行われます。断酒を含む治療にしっかり取り組んでいることが分かるよう、通院の経過を記録しておくことが大切です。
肝がんを合併している場合も対象に含まれます
肝疾患による障害の対象には、肝がんを含む、と明記されています。肝硬変を背景として肝がんを発症した場合も、肝疾患の認定基準の枠組みで審査の対象になります。抗がん剤治療や手術による影響がある場合は、その経過もあわせて診断書に反映してもらうとよいでしょう。
申請の準備で押さえておきたいポイント
肝疾患の申請では、検査データの記録と、日常生活への影響をどう伝えるかが結果を左右します。準備の段階で意識しておきたいポイントを挙げます。
「最も状態を表している」検査データを残しておく
肝疾患の検査成績は変動しやすいという性質があるため、経過の中で最も病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定が行われます。一時的に数値が良くなる時期があっても、それだけで判断されるわけではありません。普段の通院の中で検査結果を保管しておき、状態が悪化した時期の記録も大切に残しておきましょう。
「だるさ」を具体的な生活の支障として伝える
易疲労感や倦怠感は、本人にとって「いつものこと」になりやすく、診察の場でも軽く伝えてしまいがちです。家事が途中で続けられない、横にならないと一日を過ごせない、仕事を休む日数が増えたなど、具体的な場面を診断書と病歴・就労状況等申立書の両方に反映してもらうことが大切です。
初診日の特定と通院の経過整理
肝疾患は、健康診断での指摘から数年かけて進行することも多く、初めて受診した医療機関がどこだったかが分かりにくくなりがちです。健康診断の結果や、お薬手帳、診察券なども初診日を裏付ける手がかりになりますので、できるだけ早い段階で確認しておきましょう。
まとめ:肝疾患は検査と生活の両面から総合的に判断されます

肝硬変や肝がんによる障害年金は、検査項目の異常の数、自覚症状、一般状態区分表など、複数の要素を踏まえて総合的に認定されます。検査数値が変動しやすい病気だからこそ、状態が悪いときの検査データと生活の様子をしっかり記録しておくことが申請のカギになります。「自分は対象になるのだろうか」と迷われたら、検査結果と日々の症状を一緒に整理するところから始めれば大丈夫です。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
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