監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・障害認定基準・診断書(精神の障害用)記載要領に基づき作成しています。
この記事の結論
身体症状症(身体表現性障害)は、ICD-10でF45に分類される神経症圏の病気で、障害年金では原則として認定の対象になりません(障害認定基準 第8節)。
精神病の病態を示す場合や、うつ病などを併発している場合は審査の対象になるため、主治医に今の病態と傷病名を確認してください。
痛みが主な症状でも精神の障害として審査され、神経の損傷などによる「疼痛」の基準とは扱いが別です。
検査では異常が見つからないのに、痛みや体の不調が続いて働けない。そうした状態で身体症状症や身体表現性障害と診断され、「障害年金は対象外」と聞いて、あきらめかけている方もいらっしゃいます。
この記事では、身体症状症が障害年金でどう扱われるか、例外として審査の対象になる場合、痛みの基準との違い、申請を考えるときの確認点を、日本年金機構の資料をもとに整理します。
身体症状症(身体表現性障害)でも、障害年金はもらえますか?
原則としてもらえません。ただし、精神病の病態を示している場合などは、例外として審査の対象になります。
身体表現性障害は神経症圏の病気
身体表現性障害は、ICD-10(WHOが定めた病気の分類)で「F45 身体表現性障害」に当たり、「F40-F48 神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害」の中に含まれます。身体症状症は、別の診断基準(DSM-5)での呼び名です。症状は体に出ていても、精神の障害として扱われます。
障害認定基準の原則と例外
障害認定基準 第8節は「神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない」としています。そのうえで「その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う」と例外を定めています。
どんな場合なら、審査の対象になりますか?
精神病の病態を示している場合と、うつ病など認定の対象となる精神疾患を併発している場合の2つです。
| 状態 | 診断書での書き方 | 審査での扱い |
|---|---|---|
| 身体症状症だけ | 傷病名欄にF45 | 原則として認定の対象外 |
| 精神病の病態を示している | 備考欄に、その病態とICD-10コード | 統合失調症又は気分(感情)障害に準じて審査 |
| うつ病などを併発している | 傷病名欄に、全ての傷病名とICD-10コード | 併発している病気の程度などで審査 |
精神病の病態は、備考欄に書いてもらう
診断書(精神の障害用)の記載要領は、神経症圏(F4)の傷病名でも、気分(感情)障害などの病態を示しているときは「その病態と ICD-10 コードを記入してください」と医師に求めています。傷病名欄だけでなく、備考欄の記載が審査の分かれ目になります。
併発している病気は、傷病名欄に並べて書く
記載要領は、複数の精神疾患がある場合、「障害年金を請求する全ての傷病名及び該当するICD-10コード」を書くよう定めています。うつ病などの診断も受けているなら、身体症状症と並べて書かれているかを確認しましょう。

「身体表現性障害は対象外」と聞いて、相談するのもためらっていました。
社労士病名だけで決まるわけではありません。今の病態や、ほかの診断があるかで扱いが変わるので、まずは主治医と一緒に確かめてみましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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痛みが強い場合、「疼痛」として認められますか?
身体症状症による痛みは、精神の障害として審査されます。神経系統の「疼痛」の基準は、神経の損傷など原因がはっきりした痛みを対象にしたものです。
第9節「疼痛」の定め
障害認定基準 第9節(神経系統の障害)は「疼痛は、原則として認定の対象とならない」としています。例外は、神経の損傷による灼熱痛、神経痛、根性疼痛、悪性新生物に伴う疼痛などで、疼痛の原因となる他覚的所見などから判断します。等級も、3級(軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度)と障害手当金だけです。
線維筋痛症などは、別の診断書で審査される
日本年金機構は、線維筋痛症は肢体の障害用、慢性疲労症候群はその他の障害用の診断書で、記載例と認定事例を公表しています。同じ痛みや倦怠感でも、医師がどの病気と診断するかで、使う診断書も審査の基準も変わります。
申請を考えるとき、まず何を確認すればいいですか?
主治医に、今の傷病名とICD-10コード、うつ病などの病態や併発の有無を確認します。あわせて初診日を確かめます。
病名を変えてもらうのではない
どの病名を付けるかは、医師の医学的な判断です。お願いするのは、今の病態について医師がどう見ているかの確認です。気分の落ち込みや意欲の低下、眠れない日の多さなど、体の痛み以外の症状も、メモにして伝えましょう。

初診日は、体の症状で受診した日のことも
国民年金法第30条第1項は、初診日を、その病気について「初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」としています。体の症状で最初に内科や整形外科にかかっていれば、その日が初診日になることがあります。当時の受診先を、思い出せる範囲で書き出しておきましょう。
よくある質問
Q. 身体症状症の診断書は、どの様式を使いますか?
A. 精神の障害用の診断書を使います。痛みなど体の症状が中心でも、身体症状症は精神の病気として分類されるためです。うつ病などを併発している場合も、同じ精神の障害用の診断書に、全ての傷病名を書いてもらいます。
Q. 身体症状症で不支給になったら、もう請求できませんか?
A. 請求できる場合があります。決定に不服があれば、決定を知った日の翌日から3か月以内に審査請求ができます(社会保険審査官及び社会保険審査会法第4条)。病態が変わったり併発が診断されたりした場合は、改めて請求する道もあります。
Q. 例外として審査された場合、3級もありますか?
A. あります。気分(感情)障害などに準じて審査され、労働が制限を受ける状態であれば3級の対象です。ただし3級は障害厚生年金だけの等級で、初診日に厚生年金に入っていたことが必要です(厚生年金保険法第47条第2項)。
Q. 身体症状症と言われましたが、別の体の病気かもしれません。どうすればいいですか?
A. まず、体の病気を専門とする医師に相談してください。線維筋痛症など別の病気と診断されれば、その病気に合った診断書で審査されます。どの病気かを判断するのは医師で、障害年金の申請はその診断をもとに進めます。
まとめ:「対象外」と決める前に、病態と傷病名を確かめる
身体症状症(身体表現性障害)は、障害年金では原則として対象外です。ただ、精神病の病態を示している場合や、うつ病などを併発している場合は審査の対象になります。まずは主治医に今の病態と傷病名を確認し、痛み以外の気分や睡眠の症状も伝えましょう。ご自身が例外に当たるか迷うときは、お気軽にご相談ください。
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この記事に関連する受給事例
身体症状から始まり双極性障害で障害厚生年金2級を受給した事例|香川県
参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・障害認定基準 第8節 精神の障害(日本年金機構)
・障害認定基準 第9節 神経系統の障害(日本年金機構)
・診断書(精神の障害用)記載要領(日本年金機構)
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