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発達障害の障害年金|対象・等級・金額の基本

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監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は障害認定基準(第8節 精神の障害)、および厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月)、日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。

この記事の結論

発達障害は、障害認定基準「第8節 精神の障害」と「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」にもとづき、自閉スペクトラム症(ASD)・ADHD・学習障害(LD)などが障害年金の対象になります。

等級は「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」の組み合わせから目安が決まり、1級・2級・3級(3級は障害厚生年金のみ)のいずれかに認定されます。

知能指数が高くても対人関係や意思疎通に著しい困難がある場合は、その点が等級判定で考慮される仕組みになっている点が、発達障害特有のポイントです。

発達障害は、子どもの頃から症状がある方もいれば、大人になってから初めて診断される方もいる、幅広い傷病です。「自分の場合、対象になるのか」「何級くらいになるのか」「いくらもらえるのか」といった基本的な疑問を、まず整理したいという方は少なくありません。ネットで検索すると個別の体験談は見つかっても、制度全体の基本を整理した情報にはなかなかたどり着けない、という声もよく耳にします。

この記事では、発達障害の障害年金について、対象となる傷病・等級の決まり方・受給できる金額という3つの基本を、公的な資料にもとづいて整理します。個別の症状の詳しい解説は、他の記事もあわせてご覧ください。

目次

発達障害の障害年金は、どんな傷病が対象になりますか?

自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、学習障害(LD)などが、障害認定基準「第8節 精神の障害」の対象になります。これらの傷病は、平成28年から実施されている「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の対象にも含まれており、精神障害・知的障害とあわせて、地域差の少ない統一的な基準で判定されます。

知的障害を伴う発達障害と、知的障害を伴わない発達障害とでは、考慮される要素が一部異なります。知的障害を伴う場合は療育手帳の判定区分も考慮材料になりますが、伴わない場合は、社会的行動や意思疎通能力の障害の顕著さが中心的な考慮材料になります。診断名がひとつであっても、実際の生活の困難さの現れ方は人によって大きく異なるため、この違いを理解しておくことが申請準備の第一歩になります。

パニック障害や適応障害も対象になりますか?

いわゆる神経症(適応障害、社会不安障害、パニック障害、強迫性障害など)は、原則として障害年金の対象とされていません。発達障害の方がこうした症状を併発している場合、主治医とよく相談し、どの症状を中心に申請を組み立てるかを整理する必要があります。

障害基礎年金と障害厚生年金、どちらが対象になりますか?

初診日にどちらの年金制度に加入していたかで決まります。厚生年金加入中に初診日があれば3級を含む障害厚生年金の対象に、国民年金加入中であれば1級・2級のみの障害基礎年金の対象になります。発達障害は幼少期に症状が現れることも多く、その場合は20歳前傷病として障害基礎年金の対象になることがあります。

等級はどうやって決まりますか?

発達障害 2

診断書の「日常生活能力の程度」(5段階評価)と「日常生活能力の判定」(4段階評価の平均)を組み合わせた「等級の目安」をもとに、様々な要素を考慮した総合評価で最終的な等級が決まります。この2つの指標を組み合わせた早見表が、厚生労働省の等級判定ガイドラインに示されています。

ただし、これはあくまで「目安」であり、目安どおりの等級になるとは限りません。目安に加えて、現在の病状、療養状況、生活環境、就労状況など、5つの分野にわたる要素を考慮したうえで、認定医が総合的に判定します。目安が「2級または3級」のように複数にまたがる場合は、この総合評価の段階で慎重に判断されることになっています。

診断書に書かれた「日常生活能力の判定」の点数が低いと、それだけで低い等級になってしまうんでしょうか?

社労士

点数はあくまで目安のひとつです。特定の項目だけに著しい偏りがあり、日常生活に大きな支障が出ている場合は、平均点が高くてもその状況が考慮されることになっています。点数だけで諦めず、実際の生活の様子を具体的に伝えることが大切ですよ。

3級とはどのような状態ですか?

3級は、労働に一定の制限を受ける程度の状態です。ただし、障害基礎年金には3級が存在しないため、初診日が国民年金加入中(自営業・学生・専業主婦等)の場合は、3級相当の状態であっても「2級非該当」として不支給になります。

1級とはどのような状態ですか?

日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度、つまり自分では日常生活に必要なことができず、常に他人の援助が必要な状態が目安になります。在宅で家族等から常時個別の援助を受けている場合や、入所施設で常時個別の援助が必要な場合などが、1級の可能性として考慮されます。

知能指数が高くても認定されることはありますか?

あります。等級判定ガイドラインには「知能指数が高くても日常生活能力が低い(特に対人関係や意思疎通を円滑に行うことができない)場合は、それを考慮する」と明記されています。知能指数だけでは測れない、対人関係の困難さや社会生活上の制約が、発達障害の等級判定では重視されます。

考慮される要素内容
知能指数と日常生活能力のギャップ知能指数が高くても対人関係・意思疎通に著しい困難があれば考慮
感覚過敏臭気・光・音・気温等の感覚過敏により日常生活に制限があれば考慮
発育・養育歴、教育歴専門機関による発達支援、特別支援教育の経歴等を考慮
青年期以降に判明した場合幼少期の状況、特別支援教育歴等を考慮

感覚過敏だけでも考慮されますか?

単独で等級を決定づけるものではありませんが、臭気・光・音・気温などへの過敏さによって日常生活に具体的な制限が生じている場合は、総合評価の考慮要素のひとつとして扱われます。

大人になってから診断された場合はどうですか?

青年期以降に発達障害と判明した場合は、幼少期の状況や、特別支援教育(またはそれに相当する支援)を受けた経歴があるかどうかが、考慮すべき要素として挙げられています。通知表や学校の記録が残っていれば、参考資料になることがあります。

就労している場合、認定は不利になりますか?

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就労していることだけで、直ちに不利になるわけではありません。等級判定ガイドラインでは、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず」、仕事の内容や職場で受けている援助の状況をふまえて判断するとされています。

仕事の内容が保護的な環境下での単純かつ反復的な業務である場合や、執着の強さ・臨機応変な対応の難しさから常時の管理・指導が必要な場合は、一般企業で就労していても2級の可能性が検討されるとされています。就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度を利用している場合も、同様に考慮されます。安定して働けているように見えても、その裏でどれだけの配慮や我慢が積み重なっているかが、実は重要な判断材料になります。

フルタイムで働けていると対象外になりますか?

それだけで対象外になるわけではありません。就労できていても、職場でどのような援助・配慮を受けているか、意思疎通にどの程度の困難があるかまで含めて、総合的に判断されます。

よくある質問

Q. 知的障害を伴う場合、療育手帳との関係はどうなりますか?

A. 療育手帳の判定区分が考慮要素のひとつになります。区分が中度より軽い場合でも、発達障害の症状により日常生活に著しい制限が認められれば、1級または2級の可能性が検討されます。

Q. ADHDと自閉スペクトラム症で、認定基準は分かれていますか?

A. 分かれていません。診断名による区分ではなく、等級判定ガイドラインでは「精神障害」「知的障害」「発達障害」という区分にとらわれず、日常生活能力の状態から総合的に評価するとされています。

Q. 診断書はどの様式を使いますか?

A. 「精神の障害用」の様式を使用します。発達障害に関連する記載欄があり、知能指数だけでなく、日常生活・就労面での具体的な困難さを記載してもらうことが重要です。

Q. 精神障害者保健福祉手帳を持っていないと申請できませんか?

A. 手帳を持っていなくても申請できます。手帳と障害年金は別々の制度として独立しており、どちらか一方の取得がもう一方の要件になることはありません。

Q. 障害年金はいくらもらえますか?

A. 障害基礎年金は1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円です(令和8年度、子の加算を除く)。障害厚生年金は加入期間や給与水準によって金額が変わるため、一律の金額でお答えすることはできません。3級は障害厚生年金のみに存在します。

まとめ:発達障害の障害年金、対象・等級・金額の基本

発達障害の障害年金は、ASD・ADHD・LDなどが対象で、診断書の「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」をもとにした目安に、生活環境や就労状況などを加えた総合評価で等級が決まります。知能指数が高くても、対人関係や意思疎通の困難さが考慮される点は、発達障害特有の重要なポイントです。

香川・岡山・愛媛で障害年金のご相談をお受けしていても、発達障害は「知能指数が高いから対象外だろう」と自己判断して申請を諦めてしまう方に出会うことがあります。ご自身の日常生活・就労での困難さを整理したうえで、まずは対象になるかどうかを一度確認してみることをおすすめします。個別の疾患ごとの詳しい解説記事もあわせて、状況に近いものを探してみてください。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。

参考資料

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この記事を書いた人

請川 智章のアバター 請川 智章 社会保険労務士・障害年金専門

香川県観音寺市を拠点とする障害年金専門の社会保険労務士
登録番号第37250012号 香川県社会保険労務士会会員
精神疾患・身体障害・難病など幅広い傷病の障害年金申請をサポートし、香川・岡山・愛媛を中心に中四国全域からの相談に対応。

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