「働いているから、どうせもらえないと思っていました」
障害年金の相談をお受けするとき、発達障害をお持ちの方から最もよく聞く言葉の一つです。
確かに、フルタイムで働いている状態での申請は、ハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、「就労していること=受給できない」ではありません。
発達障害(ADHD・自閉スペクトラム症など)の場合、たとえ週5日勤務であっても、職場からの特別な配慮や支援があってはじめて働けている実態があれば、障害年金の審査で適切に評価される可能性があります。
この記事では、フルタイム就労中でも受給に至った事例をもとに、職場での配慮内容と申立書をどう連動させるかについて、社労士の視点から具体的にお伝えします。
フルタイム就労中でも受給できる理由
「働いているから申請できない」と思い込んでいる方は多いですが、それは必ずしも正しくありません。審査で問われるのは就労の「有無」ではなく、「どのように働いているか」という実態です。
「働けているかどうか」より「どのように働いているか」が問われる
障害年金の審査において、精神疾患・発達障害の等級認定では、就労の「有無」だけでなく、就労の「質・実態」が重視されます。
厚生労働省が定める認定基準においても、就労している場合には「職場での援助の内容」「業務内容の制限」「就労継続のための工夫」などを総合的に考慮するとされています。
つまり、「毎日会社に行っている」という事実だけで不支給が決まるわけではなく、どれだけの配慮や支援があって、ようやく就労が成り立っているかが審査の焦点になるのです。
発達障害の「見えにくい困難」が審査で伝わりにくい理由
発達障害は、外見からは症状がわかりにくいという特性があります。
「毎日出勤している」「仕事をこなしている」という表面的な部分だけが見られてしまうと、審査では困難の実態が伝わりません。
しかし実際には、
- 業務の優先順位がつけられず、上司が毎回確認・指示している
- 電話対応や急な予定変更に対応できず、担当業務から外してもらっている
- 感覚過敏のため、別室や静かな席に配置換えしてもらっている
- ミスが多く、ダブルチェックを常に同僚に依頼している
といった「配慮なしでは成立しない就労」が続いているケースが多くあります。
この実態を審査に正しく伝えるための手段が、申立書(病歴・就労状況等申立書)と職場の配慮内容を連動させることです。
精神・発達障害の認定基準における「就労」の扱い
日本年金機構が定める「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では、就労状況について次のような考え方が示されています。
現に就労している場合でも、援助や配慮の状況によっては、必ずしも有利な判断材料にはならないとされています。具体的には、障害者雇用での就労や、職場での著しい援助・配慮がある場合は、その旨を考慮した上で総合的に判断されます。
裏を返せば、「これだけの配慮があってようやく働けている」という実態を具体的に示すことが、受給への大きな鍵になるということです。
職場での「配慮内容」を具体的に洗い出す
審査で実態を伝えるには、「配慮してもらっている」という一言では不十分です。どんな配慮が、どのような形で行われているかを具体的に整理することが、申立書を書く上での土台になります。
審査で有効な「配慮・支援」の具体例
申立書に記載する配慮内容は、できる限り具体的であることが大切です。「配慮してもらっている」という一言では、審査官には実態が伝わりません。
以下に、発達障害の方が職場で受けている配慮として、審査で有効に機能しやすい具体例を挙げます。

業務の調整・制限に関する配慮
- 口頭指示が理解しにくいため、指示はすべて文書・メモで受けている
- マルチタスクが困難なため、同時に複数の業務を依頼されない取り決めがある
- 締め切り管理が苦手なため、上司が毎日スケジュールを確認・調整している
- 電話対応・窓口対応を免除されている
環境・物理的配慮
- 感覚過敏(音・光など)のため、個室や仕切りのある席に配置されている
- 蛍光灯の光が苦手なため、デスクライトのみの使用を許可されている
- 休憩室への頻繁な退避を認めてもらっている
人間関係・コミュニケーション面の配慮
- 特定の担当者(支援者・上司)のみが窓口となり、他の社員との直接やり取りを最小限にしている
- 感情的になってしまった際のクールダウンタイムを認めてもらっている
- ミスをしても叱責されない環境を保障されている
「配慮があること」を証明する書類を準備する
口頭で「配慮してもらっています」と申立書に書くだけでは、審査での説得力が弱くなります。
可能であれば、以下のような書類を準備・添付することが有効です。
- 職場の上司・人事担当者が作成した「職場状況に関する書面」(配慮内容・業務制限を記載したもの)
- 雇用契約書や業務分掌の記録(担当業務の範囲が限定されていることを示すもの)
- 障害者雇用枠での採用を示す書類(障害者雇用であること自体が、配慮の前提を示す)
- 支援機関(就労移行支援・ジョブコーチ等)のサポートを示す記録
これらの書類は、必ずしもすべて揃える必要はありません。取得できるものを最大限活用することが重要です。
「なぜそこまで配慮が必要なのか」を診断書と結びつける
職場での配慮内容は、それ単体で審査に影響するわけではありません。
「なぜその配慮が必要なのか」という根拠が、診断書の記載と一致していることが重要です。
たとえば、
- 診断書に「注意集中の困難」が記載されている → 申立書に「業務の優先順位をつけられず、上司が毎日確認している」と記載する
- 診断書に「感覚過敏」の記載がある → 申立書に「音や光への過敏さから、個室に配置換えされている」と記載する
- 診断書に「対人関係の困難」がある → 申立書に「担当者を一人に絞り、他の社員との関わりを最小限にしている」と記載する
診断書の内容と申立書の記述が「連動」していることで、審査官に「この方の困難は、職場でもこれだけの配慮が必要なレベルだ」と理解してもらいやすくなります。
申立書に「就労の実態」を正確に書くコツ
申立書は、ご自身の言葉で日常を伝える大切な書類です。しかし書き方を誤ると、実態よりも「軽い」印象を与えてしまうことがあります。ここでは、審査官に正確に伝わる書き方のポイントをお伝えします。

「頑張っている部分」より「困っている部分」を中心に書く
申立書を書くとき、多くの方が「できていること」を書きすぎてしまう傾向があります。
「仕事はなんとか続けています」「周囲の助けを借りながら頑張っています」——こうした書き方は、正直な気持ちの表れではありますが、審査においては「ある程度機能している」と受け取られてしまうリスクがあります。
申立書で重要なのは、「どれだけ困難を抱えながら、どれだけの支援があってようやく成立しているか」を具体的に伝えることです。
書き方の参考として、以下のような視点で整理してみてください。
- 仕事の前後に、どれほど消耗しているか(帰宅後は何もできない、翌日の出勤が精一杯など)
- ミスの頻度や、ミスが起きたときの状況
- 仕事中に気持ちが限界になる瞬間(パニック・フリーズ・過呼吸など)
- 仕事以外の生活(家事・人間関係・外出など)がどれほど成り立っていないか
「仕事以外の生活」の困難さも必ず記載する
発達障害の審査では、仕事の状況だけでなく、日常生活全般の困難さも重要な判断材料になります。
フルタイムで働いていても、仕事以外の生活が成り立っていないケースは珍しくありません。
- 帰宅後は疲弊しきって、食事・入浴・家事が一切できない
- 週末は丸1〜2日、布団から出られない
- 支払い管理や役所の手続きを、家族に全面的に依頼している
- 友人・知人との交流がほぼゼロで、孤立状態にある
こうした「仕事以外での困難」が申立書に記載されることで、「就労はできているが、それだけで精一杯で、日常生活全体は著しく支障をきたしている」という実態が伝わります。
申立書は「事実の記録」として書く
申立書を書くにあたって、意識してほしいのは「訴える」のではなく「記録する」という姿勢です。
「こんなに辛いのにわかってもらえない」という感情を前面に出すのではなく、「いつ・どんな状況で・どういうことが起きたか」という事実を淡々と記録するスタイルが、審査官には伝わりやすいとされています。
たとえば、
❌「毎日とても辛くて限界です」
✅「〇年〇月頃から、業務中にパニック状態になることが増え、週に2〜3回はトイレに避難して30分以上戻れないことがあった」
具体的な状況・頻度・場所・対応などを盛り込むことで、読んだ人がその場面を想像できる記述になります。
まとめ:フルタイム就労中でも、実態を伝えれば道は開ける
フルタイムで働いていても、障害年金を受給できる可能性は十分にあります。
大切なのは、「働けている」という表面だけではなく、「どれだけの配慮・支援があってようやく成り立っているか」「仕事以外の生活はどうなっているか」という実態を、診断書・申立書・添付書類を通じて丁寧に伝えることです。
ポイントをまとめます。
- 就労の「有無」より「実態・質」が審査の焦点になる
- 職場での配慮内容は、できる限り具体的に洗い出す
- 配慮内容と診断書の記載を「連動」させることが重要
- 申立書には「困っている部分」と「仕事以外の生活の困難」を中心に記載する
- 事実を具体的・客観的に「記録」するスタイルで書く
「自分は働いているからダメだろう」と、ひとりで諦めないでください。実態をきちんと伝えることができれば、道は開けます。申立書の書き方や、職場への配慮記録の整理方法がわからない場合は、社労士への相談を検討してみてください。
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