監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・等級判定ガイドライン・診断書記載要領に基づき作成しています。
この記事の結論
服薬していなくても、精神の障害年金は申請できます。服薬は国民年金法第30条の支給要件になく、等級は日常生活の制限の程度で判断されます。
ガイドラインは、薬物治療が困難な場合「その理由や他の治療の有無及びその内容を考慮する」としているため、服薬していない理由を書類で伝えましょう。
ただし、正当な理由なく療養の指示に従わず障害を重くした場合の給付制限の規定(国民年金法第70条)があります。
「薬を飲んでいないと、障害年金は無理なのでは」「副作用がつらくて薬をやめたことが、審査で不利にならないか」。精神の病気で障害年金を考えている方から、よくいただくご相談です。
この記事では、服薬していない場合の申請の可否、審査での見られ方、自己判断で薬をやめた場合の注意点、統合失調症などで薬を拒んでしまう場合の伝え方を、法律と国の資料をもとに整理します。
服薬していなくても、精神の障害年金は申請できますか?
申請できます。服薬していることは、障害年金の支給要件ではありません。
支給要件は「初診日・保険料・障害の状態」の3つ
障害基礎年金の支給要件は、初診日に年金制度に加入していること、保険料の納付要件を満たすこと、障害の状態が1級または2級にあたることです(国民年金法第30条)。障害厚生年金も同じ考え方で、3級まであります。どこにも「服薬していること」は含まれていません。
ただし医師の診察は必要
服薬は要件ではありませんが、障害の状態は医師が作成する診断書で審査されます。薬を飲んでいなくても、医師の診察を受け、日常生活の様子を把握してもらっておくことが申請の前提になります。知的障害や発達障害のように、もともと薬物治療を前提としない障害もあります。
服薬していないと、審査ではどう見られますか?
服薬の有無そのものではなく、服薬していない理由と、それに代わる治療の内容が考慮されます。
ガイドラインと診断書記載要領の書き方
精神の障害に係る等級判定ガイドラインは、療養状況について「通院や薬物治療が困難又は不可能である場合は、その理由や他の治療の有無及びその内容を考慮する」としています。診断書の記載要領も、医師に対して、その理由や代わりの治療内容を「できるだけ詳しく記載してください」と求めています。

服薬していない理由ごとに伝えたいこと
| 服薬していない理由の例 | 診断書・申立書で伝えたいこと |
|---|---|
| 副作用が強く飲めない | どんな薬で、どの程度の副作用が出たか。主治医と相談して中止した経緯 |
| 妊娠・授乳中 | 主治医の判断で中止・減量していること |
| 精神療法・カウンセリングが中心 | 薬物以外の治療の内容と、その治療を選んだ理由 |
| 病気の症状として薬を拒む | 拒薬の様子と、家族などが服薬を促している状況 |
副作用がつらくて、主治医と相談して薬をやめました。それでも申請してよいのでしょうか?
社労士申請できます。やめた経緯と、今の生活で困っていることを、主治医に診断書へ書いてもらえるよう一緒に整理しましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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自分の判断で薬をやめていると、支給されないことがありますか?
法律には、正当な理由なく療養の指示に従わず障害を重くした場合に、給付を制限できる規定があります。
国民年金法第70条の内容
国民年金法第70条は「正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより」障害の程度を増進させた者の当該障害について、給付の「全部又は一部を行わないことができる」と定めています。厚生年金保険法第73条の2にも同じ趣旨の規定があります。服薬していないだけで直ちに適用されるものではなく、「正当な理由」があるかが問われる規定です。
自己中断している場合に大切なこと
自己判断で薬をやめている場合は、まず主治医にそのことを正直に伝え、今後の治療について相談しましょう。やめた理由(副作用、経済的な事情、病状による判断力の低下など)を具体的に書類に残しておくことで、審査でも事情が伝わりやすくなります。
統合失調症などで薬を拒んでしまう場合は、どう伝えればよいですか?
病気の症状として薬を拒んでいる場合は、拒薬の様子と、家族などの援助の状況を具体的に伝えます。
記載要領の記載例にも「拒薬」がある
日本年金機構の精神の診断書記載要領では、統合失調症の記載例として、薬を毒だと述べて「拒薬が見られたり」する状態が挙げられています。病識の乏しさから薬を拒むことは、症状の一部として診断書に記載される事柄です。

「通院と服薬」の判定に家族の援助を反映する
診断書裏面の日常生活能力の判定には「通院と服薬」の項目があります。家族が毎回声をかけて服薬させている、通院に付き添っているといった援助は、この項目の評価に関わります。ガイドラインは、家族と同居している場合も「単身で生活するとしたときに必要となる支援の状況を考慮する」としています。
よくある質問
Q. 通院もしていない場合でも申請できますか?
A. 診断書は医師が作成するため、医療機関を受診することが必要です。障害認定日請求では障害認定日から3か月以内の現症、事後重症請求では請求日前3か月以内の現症の診断書が求められます。まずは受診して状態を診てもらいましょう。
Q. 睡眠薬しか処方されていなくても、申請できますか?
A. 申請できます。処方の内容は考慮される要素の一つですが、等級は日常生活能力の判定や程度などとあわせて総合的に判断されます。薬の量が少なくても、日常生活で援助が必要な実態があれば、その内容を具体的に伝えましょう。
Q. 受給中に薬をやめたら、更新で支給停止になりますか?
A. 薬をやめたことだけで支給停止になるわけではありません。更新では、障害状態確認届(診断書)で障害の状態が審査されます。中止した理由や、その後の生活の様子を主治医に伝え、診断書に反映してもらうことが大切です。
Q. カウンセリングだけの治療でも、診断書に書いてもらえますか?
A. 書いてもらえます。診断書の記載要領は、薬物以外の治療を行っている場合に、具体的な治療内容とその治療を選んだ理由を記載するよう求めています。精神療法の内容や頻度を、あらかじめ主治医に確認しておきましょう。
まとめ:服薬の有無より「理由」と「生活の実態」を伝える
服薬していなくても、精神の障害年金は申請できます。大切なのは、服薬していない理由と代わりの治療、そして日常生活でどんな援助が必要かを、診断書と病歴・就労状況等申立書でしっかり伝えることです。自己判断で薬をやめている方は、まず主治医に相談するところから始めてみてください。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
この記事に関連する受給事例
統合失調症の服薬拒否や治療中断が続き家族支援で生活を維持してきた方の障害年金受給事例|愛媛県
参考資料
・国民年金法 第30条・第70条(e-Gov法令検索)
・厚生年金保険法 第73条の2(e-Gov法令検索)
・国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン(日本年金機構)
・診断書(精神の障害用)記載要領(日本年金機構)
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