監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は日本年金機構の障害認定基準・診断書記載要領と厚生労働省の疾病分類に基づき作成しています。
この記事の結論
解離性障害は神経症圏(ICD-10のF44)に分類され、障害年金では原則として認定の対象外です。
ただし臨床症状が統合失調症や気分(感情)障害の病態を示している場合や、うつ病などが併存している場合は、審査の対象になります。
診断書の記載要領は、F4の傷病名でもそうした病態を示すときは「備考」欄に病態とICD-10コードを書くよう定めており、ここが審査の分かれ目です。
「記憶が抜け落ちて仕事が続けられない」「精神障害者保健福祉手帳は持っているのに、障害年金は無理だと言われた」。解離性障害で生活に大きな困難を抱えながら、申請をあきらめている方は少なくありません。
この記事では、解離性障害が障害年金でどう扱われるか、審査の対象になる場合、診断書で大切な欄、不支給になったときの進め方を、国の資料をもとに整理します。
解離性障害でも、障害年金はもらえますか?
解離性障害だけでは、原則として障害年金の対象になりません。ただし、例外として審査の対象になる場合があります。
障害認定基準は「神経症」を原則対象外としている
障害認定基準は、神経症について「その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない」と定めています。症状が重いかどうかではなく、病気の分類によって原則が決まっている点が特徴です。障害年金は、障害の状態が国の定める等級に当てはまるかで判断されますが(国民年金法第30条)、精神の障害では、まずこの分類上の扱いが関わってきます。
解離性障害はICD-10で「神経症圏」に入る
厚生労働省の疾病分類(ICD-10準拠)では、解離性障害は「F44 解離性[転換性]障害」として、「神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害(F40-F48)」に含まれています。日本年金機構の診断書記載要領も、ICD-10コードがF4の傷病名を「神経症圏」としています。
どのような場合に、審査の対象になりますか?
臨床症状が統合失調症や気分(感情)障害の病態を示している場合は、それらに準じて審査されます。障害認定基準は「精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取り扱う」としています。
| 状態 | 障害年金での扱い |
|---|---|
| 解離性障害のみで、精神病の病態を示していない | 原則として認定の対象外 |
| 臨床症状が統合失調症や気分(感情)障害の病態を示している | 統合失調症又は気分(感情)障害に準じて審査される |
| うつ病・双極性障害などが併存している | 対象となる傷病として審査され、生活全体の制限が評価される |

判断に使われるのは「ICD-10の病態区分」
障害認定基準は、認定にあたって「精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属す病態であるかを考慮し判断すること」としています。病名だけでなく、実際に現れている症状がどの区分の病態にあたるかが見られます。
解離性障害と診断されていますが、気分の落ち込みもひどくて働けません。それでも対象外でしょうか?
社労士あきらめるのは早いです。今の症状や併存している病気が診断書にどう書かれるかで、扱いが変わります。主治医の見立てを一緒に確認しましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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解離性障害の診断書では、どこが大切ですか?
傷病名とICD-10コード、そして精神病の病態を示している場合の「備考」欄の記載が大切です。
記載要領は「備考」欄への記入を求めている
日本年金機構の診断書(精神の障害用)記載要領は、傷病名欄に神経症圏(F4)の傷病名を書いた場合でも、統合失調症や気分(感情)障害の病態を示しているときは「その病態と ICD-10 コードを記入してください」と、⑬備考欄の説明で定めています。うつ病などが併存している場合は、その傷病名も記載されているかを確認しましょう。

解離症状による生活の困りごとを具体的に伝える
記憶が抜けて約束や支払いを忘れる、外出先で意識が遠のく、家事を最後までやり終えられないといった困りごとは、本人が覚えていないことも多い症状です。家族の気づきも含めてメモにまとめ、主治医に渡すと、診断書や申立書に実態が伝わりやすくなります。
不支給になったら、もう請求できませんか?
請求できます。決定に不服を申し立てる「審査請求」と、改めて請求し直す「再請求」の2つの方法があります。
審査請求は、決定を知った翌日から3か月以内
決定に納得できない場合は、社会保険審査官に審査請求ができます。期限は、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内です(社会保険審査官及び社会保険審査会法第4条)。期限を過ぎると、原則として申し立てられなくなります。
症状や診断の変化があれば、再請求を検討する
その後うつ病などの診断が加わった、症状が重くなったといった変化があれば、新しい診断書で請求し直すことができます。今の状態で請求する事後重症請求は、65歳の誕生日の前々日までに行う必要があります(国民年金法第30条の2)。前回の診断書や申立書の写しを取り寄せ、どこが伝わっていなかったかを確認してから準備を進めることが大切です。
よくある質問
Q. 精神障害者保健福祉手帳2級があれば、障害年金も受けられますか?
A. 手帳の等級だけでは受けられません。精神障害者保健福祉手帳と障害年金は別の制度で、それぞれ別の基準で審査されます。障害年金では神経症圏を原則対象外とする基準があるため、手帳2級でも障害年金が不支給になることがあります。
Q. 解離性同一性障害(多重人格)も同じ扱いですか?
A. 同じ考え方で審査されます。解離性同一性障害も解離性障害の一つで、ICD-10ではF44の解離性[転換性]障害に含まれます。精神病の病態を示しているか、対象となる傷病が併存しているかが判断のポイントです。
Q. 主治医に「精神病の病態」と書いてもらうよう頼んでもいいですか?
A. 書く内容を頼むことはできません。病態の判断は、主治医が診察にもとづいて行う医学的な判断です。依頼できるのは、日常生活の困りごとや症状の経過を正確に伝えることです。メモにまとめて渡すと、実態が伝わりやすくなります。
Q. 解離性障害で働いていても、申請できますか?
A. 申請できます。働いていることだけで不支給になるわけではありません。等級判定ガイドラインは、仕事の内容や職場で受けている援助、出勤状況への影響などを考慮するとしています。業務の配慮を受けている実態があれば伝えましょう。
まとめ:解離性障害は「病態」と「併存」が鍵になる
解離性障害は原則として障害年金の対象外ですが、精神病の病態を示している場合や、うつ病などが併存している場合は審査の対象になります。まずは主治医に現在の傷病名と見立てを確認し、日常生活の困りごとをメモにまとめるところから始めてみてください。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
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双極性障害と強迫性障害が併発した複雑な経過のケース|生活実態の反映で障害基礎年金2級|徳島県
参考資料
・社会保険審査官及び社会保険審査会法 第4条(e-Gov法令検索)
・疾病、傷害及び死因の統計分類 第Ⅴ章 精神及び行動の障害(厚生労働省)
・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害(日本年金機構)
・精神の障害用の診断書を提出するとき(記載要領)(日本年金機構)
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