監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法・日本年金機構の障害認定基準に基づき作成しています。
この記事の結論
パニック障害・強迫性障害・PTSDは障害認定基準上の「神経症」に当たり、この診断名だけでは原則として障害年金は支給されません(障害認定基準 第8節)。
ただし、症状が精神病の病態を示していれば、うつ病・双極性障害などに準じて審査されます。
落とし穴は、症状が重くても、診断書にうつ病などの病名とICD-10コードがなければ神経症として扱われやすい点です。
パニック発作が怖くて電車に乗れない、確認がやめられず仕事が進まない。周りからは見えにくいつらさを抱えながら、「障害年金は対象になるのだろうか」と考え始める方は少なくありません。インターネットで「対象外」と書かれているのを見て、申請をあきらめかけている方もいらっしゃいます。
この記事では、3つの病気が制度上どう扱われるのか、どんな場合に例外として認定されるのか、診断書と申立書で何を確認すればよいのかを、社労士の視点でお伝えします。
パニック障害・強迫性障害・PTSDで障害年金はもらえますか?
診断名がパニック障害・強迫性障害・PTSDだけの場合、原則として障害年金は支給されません。
障害認定基準の定め
国民年金・厚生年金保険 障害認定基準の第8節「精神の障害」は、神経症について「その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない」と定めています。障害基礎年金(国民年金法第30条)も障害厚生年金(厚生年金保険法第47条)も、この基準に沿って等級が判定されます。どれだけ長く通院していても、診断名だけで判断すると対象外になる、というのが出発点です。
3つの病気の位置づけ
| 病名 | ICD-10の分類 | 障害認定基準での扱い |
|---|---|---|
| パニック障害 | F41.0(神経症性障害) | 原則として対象外 |
| 強迫性障害 | F42(神経症性障害) | 原則として対象外 |
| PTSD | F43.1(ストレス関連障害) | 原則として対象外 |
| うつ病(参考) | F32(気分障害) | 認定の対象 |
社交不安障害や全般性不安障害も、同じ神経症性障害のグループです。まずは主治医に、ご自身の診断名とICD-10コードを確認しておきましょう。コードはFから始まる英数字で、診断書の傷病名欄に書かれます。
どんな場合に「例外」として認定されますか?
症状が精神病の病態を示している場合は、統合失調症やうつ病・双極性障害に準じて審査されます。
認定基準の「ただし書き」
障害認定基準の第8節は、神経症であっても、臨床症状から精神病の病態を示しているものは、統合失調症またはそううつ病に準じて取り扱うと定めています。診断名だけでなく、実際の症状の現れ方で判断されるということです。たとえば、強い抑うつ状態が続いて外出も身の回りのこともできない、といった状態がこれに当たります。

うつ病などを併発しているとき
強い不安が長く続くと、気分の落ち込みや意欲の低下、不眠が重なり、うつ病や双極性障害と診断されることがあります。この場合は精神病の病態として、主に2級・3級(3級は障害厚生年金のみ)の審査対象になります。精神の障害で1級に当たるのは、ごく重いケースに限られます。
パニック障害と診断されていますが、最近は気分の落ち込みもひどくて…。それでも対象外なんでしょうか?
社労士落ち込みが続いているなら、その様子を主治医に具体的に伝えてみてください。精神病の病態として診断書に反映されれば、審査の対象になります。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
※LINEと問い合わせフォームは24時間受け付けています。しつこい勧誘は一切ございません。
診断書では、何を主治医に確認すればいいですか?
診断書の傷病名欄に、うつ病など精神病の病名とICD-10コードが書かれているかを確認してください。
審査で見られるのは「精神病の病態」が読み取れるか
審査を行う認定医は、提出された診断書だけを見て判断します。傷病名がパニック障害(F41.0)だけで、症状欄も不安発作や確認行為の記載ばかりだと、神経症として扱われやすくなります。大切なのは、審査官と認定医が診断書を読んだとき、精神病の病態を示していることがはっきりわかることです。
病名を書けないときはコメント欄に
当センターでは、併発しているうつ病などの病名とコードを傷病名欄に書いていただくよう、主治医にお願いしています。それが難しい場合は、精神病の病態を示している旨をコメント欄に記載していただきます。診断書ができた後の修正は難しいため、依頼する前に伝えておきましょう。最近の気分の落ち込みや、できなくなったことをメモにして渡すと、主治医にも伝わりやすくなります。
病歴・就労状況等申立書には、何を書けばいいですか?
不安の症状だけでなく、気分の落ち込み・意欲の低下・生活リズムの乱れを、時期ごとに具体的に書きます。
診断書と内容をそろえる
病歴・就労状況等申立書は、発病から現在までの経過をご本人や家族が書く書類です。診断書に精神病の病態が書かれていても、申立書が不安発作の話だけだと内容が食い違います。落ち込みが強かった時期と不安が強かった時期を、思い出せる範囲で整理しておきましょう。受診した医療機関と時期も、あわせて書き出しておくと安心です。

日常生活への影響を具体的に
「不安が強い」とだけ書くより、「一日中横になって過ごす日が週の半分ある」「家族の声かけがないと食事をとれない」のように書くほうが伝わります。できないこと、人の助けが必要なことを、具体的な場面で書くのがポイントです。書き方に迷うときは、ご家族に普段の様子を聞いてみるのも一つの方法です。
よくある質問
Q. 社交不安障害や全般性不安障害も同じ扱いですか?
A. 同じ扱いです。どちらもICD-10で神経症性障害(F40・F41)に分類され、単独では原則として認定の対象外です。精神病の病態を示している場合は、うつ病などに準じて審査されます。まずは主治医に病名とコードを確認しましょう。
Q. 精神障害者保健福祉手帳があれば、障害年金も受けられますか?
A. 受けられるとは限りません。手帳と障害年金は別の制度で、審査の基準も窓口も異なります。障害年金は、障害認定基準と初診日などの要件によって、手帳とは別に判断されます。手帳の等級が、そのまま年金の等級になるわけではありません。
Q. 働いていても、障害年金は受けられますか?
A. 働いていることだけで不支給にはなりません。精神の障害では、仕事の内容や職場で受けている配慮、欠勤の状況なども含めて、日常生活への支障が総合的に判断されます。職場での配慮は、申立書に具体的に書いておきましょう。
Q. 一度不支給になっても、もう一度請求できますか?
A. 請求できます。決定に不服があれば、決定を知った日の翌日から3か月以内に審査請求ができます。その後に症状が変わった場合は、あらためて請求する方法もあります。前回の診断書の内容を見直すことが出発点になります。
まとめ:診断名ではなく「精神病の病態」が伝わるかが分かれ目です
パニック障害・強迫性障害・PTSDは、診断名だけなら原則として障害年金の対象外です。ただ、実際の症状が精神病の病態を示していれば、審査の対象になります。「対象外」という情報だけであきらめず、まずは今の診断名と症状を整理し、診断書を依頼する前に主治医へ伝えることから始めてみてください。
当センターは香川・岡山・愛媛を中心に、全国からのご相談に対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・厚生年金保険法 第47条(e-Gov法令検索)
・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(日本年金機構)
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