監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は厚生年金保険法・日本年金機構の公表資料(障害年金ガイド令和8年度版等)に基づき作成しています。
この記事の結論
うつ病で障害厚生年金3級に認定されると、令和8年度は年額635,500円(月額52,958円)が最低保障されます(厚生年金保険法第47条第2項)。
実際の受給額は、初診日までの厚生年金加入期間と給与水準で決まる「報酬比例部分」で計算され、この最低保障額を上回ることもあります。
ただし3級は障害厚生年金だけの等級のため、初診日に国民年金(自営業・専業主婦・学生等)に加入していた方は、そもそも3級の対象にはなりません。
うつ病の治療を続けながら、「もし障害年金がもらえるとしても、3級ならそれほど大きな金額にはならないのでは」と感じて、申請をためらっている方は少なくありません。
実際のところ、3級の障害厚生年金には最低保障額が設けられており、加入期間や給与によっては目安以上の金額になることもあります。一方で、3級は誰でも対象になるわけではなく、初診日にどの年金制度に加入していたかによって、そもそも対象になるかどうかが変わってきます。
この記事では、うつ病で3級と認定された場合の具体的な金額の目安と、3級ならではの制度上の注意点を、社労士の視点からわかりやすく解説します。
うつ病で障害年金3級に認定されると、毎月いくらもらえますか?
令和8年度の最低保障額は月額52,958円(年額635,500円)です。ただし、これはあくまで「最低ライン」であり、実際の受給額は加入期間や給与によって、これを上回ることがあります。

「報酬比例部分」はどのように計算されますか?
3級の障害厚生年金は、初診日までの厚生年金加入期間中の平均給与(標準報酬月額・標準報酬額)と加入月数をもとに計算される「報酬比例部分」がベースになります。給与が高く、加入期間が長いほど、最低保障額を上回る金額になりやすい仕組みです。
加入期間が短くても金額は変わりませんか?
厚生年金の加入期間が300か月(25年)に満たない場合でも、300か月加入していたものとみなして計算される仕組みがあります。そのため、就職から数年でうつ病を発症した方でも、極端に低い金額にはならないよう配慮されています。それでも計算額が635,500円を下回る場合は、最低保障額が適用されます。
| 1級 | 2級 | 3級 | 障害手当金 | |
|---|---|---|---|---|
| 受け取れる年金 | 障害基礎年金+障害厚生年金 | 障害基礎年金+障害厚生年金 | 障害厚生年金のみ | 障害厚生年金のみ(一時金) |
| 令和8年度の金額目安 | 年額1,059,125円+報酬比例×1.25+加給年金 | 年額847,300円+報酬比例+加給年金 | 報酬比例(最低保障 年額635,500円) | 報酬比例×2年分相当(最低保障 1,271,000円) |
| 配偶者の加給年金 | あり(要件あり) | あり(要件あり) | なし | なし |
3級では、障害基礎年金は上乗せされないのですか?
上乗せされません。3級は障害厚生年金だけに存在する等級で、障害基礎年金にはそもそも3級という区分がないためです。
1級・2級との仕組みの違い
障害厚生年金の1級・2級に認定された場合は、障害基礎年金もあわせて受け取れます。一方、3級は厚生年金保険法第47条第2項に定める障害等級のうち、障害基礎年金の対象にならない軽い区分にあたるため、報酬比例部分のみの支給となります。障害の程度によって受け取れる制度の「階数」そのものが変わる、という理解が正確です。
配偶者や子の加算はつきますか?
配偶者加給年金・子の加算は、1級・2級の受給者にのみ加算される仕組みです。3級には設定されていません。世帯構成によって手取りの印象が変わりやすい部分なので、事前に知っておくと安心です。
自営業や専業主婦がうつ病になっても、3級はもらえますか?
もらえません。3級の対象は、初診日に厚生年金保険の被保険者だった方に限られます。自営業・専業主婦(第3号被保険者)・学生など、初診日に国民年金だけに加入していた方は、障害基礎年金の1級・2級のいずれかに該当しない限り、障害年金そのものの対象になりません。

初診日にどの年金制度に入っていたかがすべての起点
「3級くらいの軽さなら自分ももらえるかもしれない」と考える方は少なくありませんが、3級という選択肢自体が、初診日に厚生年金へ加入していた会社員・公務員の方だけに用意された仕組みです。国民年金加入者の場合、うつ病の症状が障害基礎年金2級の基準に届くかどうかが、受給できるかどうかの分かれ目になります。
私は専業主婦で、これまで年金は夫の扶養に入っていました。うつ病で3級くらいなら、私ももらえますか?
社労士残念ながら3級は障害厚生年金だけの等級なので、国民年金に加入されていた期間に初診日がある場合は対象になりません。ただし、症状の程度によっては障害基礎年金の2級に該当する可能性もありますので、まずは初診日の年金制度を確認するところから始めましょう。
うつ病で「3級」と判断される症状の目安はどの程度ですか?
「労働が著しい制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度」の状態が3級の目安です。日常生活を送ること自体には大きな支障がなくても、通常どおりの働き方が難しい状態であれば、3級に該当する可能性があります。
「労働に制限がある」とは、具体的にどういう状態ですか?
フルタイムで勤務を続けていても、業務内容を単純な作業に減らしてもらっている、欠勤や早退が続いている、職場の配慮があって初めて働けている、といった状況であれば、労働能力が制限されていると評価されることがあります。診断書には、こうした具体的な就労状況を医師に正確に伝えてもらうことが重要です。
2級との境界線はどこにありますか?
2級は「日常生活が著しい制限を受ける」程度、3級は「労働が制限を受ける」程度と、認定基準の言葉自体が異なります。日常生活はある程度自分でこなせても、働く場面になると著しい支障が出る、というケースが3級の典型像です。
3級より軽い場合や、症状が悪化した場合はどうなりますか?
3級よりやや軽い状態であれば「障害手当金」という一時金の対象になり、逆に悪化すれば「額改定請求」で上位等級を目指せます。3級は固定された結果ではなく、その後の症状の変化に応じて見直される仕組みになっています。
障害手当金という一時金の選択肢
初診日から5年以内に症状が固定し、3級より軽い状態と判断された場合は、報酬比例部分の2年分に相当する一時金(令和8年度の最低保障額1,271,000円)を受け取れる「障害手当金」の対象になることがあります。継続的な年金ではなく一度きりの支給ですが、見落とされやすい選択肢です。
悪化したときの「額改定請求」
3級として認定された後、うつ病の症状が悪化した場合は、65歳の誕生日の前々日までの間に「額改定請求」を行うことで、1級・2級への変更を求めることができます。3級だからといって、その後の生活水準がずっと固定されるわけではありません。
よくある質問
Q. うつ病の障害年金は、申請からどれくらいで結果が出ますか?
A. 目安は、年金請求書の提出から3か月程度です。ただし、症状の詳細な確認が必要な場合は、これより時間がかかることがあります。
Q. 3級を受給しながら、働き続けることはできますか?
A. できます。ただし3級はもともと「労働に制限がある」ことを前提にした等級のため、更新時の診断書で支障なく働けている状況が続いていると判断されると、等級の見直しにつながることがあります。
Q. 障害厚生年金3級に税金はかかりますか?
A. かかりません。障害年金は非課税所得のため、所得税・住民税の課税対象にはなりません。
Q. 3級の年金は、さかのぼって請求できますか?
A. 請求が可能です。ただし、障害認定日から5年を超える部分は時効により受け取れないため、早めの請求が有利です。
Q. うつ病の診断書は、心療内科でも書いてもらえますか?
A. 作成可能です。精神科に限らず、実際に治療にあたっている心療内科等の医師であれば、精神の障害用の診断書を作成できます。
まとめ:うつ病の3級は「厚生年金加入者だけの選択肢」と心得る
うつ病で障害厚生年金3級に認定されると、令和8年度は最低でも年額635,500円(月額52,958円)が保障され、給与や加入期間によってはこれを上回ります。ただし3級は厚生年金加入者だけの制度であり、自営業や専業主婦の方は対象になりません。まずはご自身の初診日にどの年金制度に加入していたかを確認することが、申請を検討する第一歩になります。
香川・岡山・愛媛にお住まいの方はもちろん、初診日の年金制度や金額の見通しがご自身では判断しにくいという方は、お一人で悩まず一度ご相談ください。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
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