監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法、日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
障害年金の種類と対象になる等級は、現在の加入状況ではなく、初診日に加入していた年金制度で決まります。
国民年金は1級・2級のみ、厚生年金は3級と障害手当金まで対象になるため、3級相当の状態では初診日が国民年金だと受給できません。
令和8年度の障害厚生年金3級には635,500円の最低保障額があり、報酬比例部分が少なくてもこの額を下回ることはありません。
障害年金を考えるとき、多くの方は「今の自分の状態」に目を向けられます。しかし制度上、それと同じくらい重要なのが過去の一点、初診日です。
初診日にどの年金制度に加入していたか。この一点で、受給できる等級の範囲も年金額も変わります。この記事では、国民年金と厚生年金で何がどう違うのかを、令和8年度の金額を使って整理します。
国民年金と厚生年金で、障害年金は何が違うのですか?
対象になる等級、年金額の計算方法、家族への加算の3点が違います。最も大きいのは3級があるかないかです。
令和8年度の金額で比べる
| 比較項目 | 障害基礎年金(国民年金) | 障害厚生年金(厚生年金) |
|---|---|---|
| 対象になる等級 | 1級・2級のみ | 1級・2級・3級+障害手当金(一時金) |
| 1級の額 | 1,059,125円+子の加算 | 報酬比例の年金額×1.25+配偶者加給年金+障害基礎年金 |
| 2級の額 | 847,300円+子の加算 | 報酬比例の年金額+配偶者加給年金+障害基礎年金 |
| 3級の額 | なし | 報酬比例の年金額(最低保障額635,500円) |
| 子の加算 | 1人目・2人目 各243,800円/3人目以降 各81,300円 | 障害基礎年金側に付く |
| 配偶者加給年金 | なし | 243,800円(1級・2級のみ) |
金額はいずれも令和8年度、昭和31年4月2日以後生まれの方の額です。
金額の決まり方が違います
障害基礎年金は等級ごとの定額です。一方、障害厚生年金の報酬比例部分は、現役時代の給与と加入期間に応じて計算されます。このとき、被保険者期間が300月(25年)に満たない場合は300月とみなして計算するしくみがあるため、加入期間が短くても一定の額が確保されます。
家族への加算の対象が違います
子の加算は障害基礎年金に付くので、1級・2級であればどちらの制度でも対象です。これに対して配偶者加給年金は障害厚生年金の1級・2級にだけ付きます。3級には配偶者加給年金は付きません。
3級があるかないかで、どれくらい変わりますか?

3級相当の状態では、初診日が国民年金だと受給できず、厚生年金なら年額635,500円以上を受給できます。金額の差ではなく、受給できるかどうかの差です。
3級は「労働に著しい制限」がある状態です
2級はおおまかにいえば日常生活に著しい制限がある状態を指しますが、3級は労働に著しい制限を受ける状態を指します。体調に波はあるが短時間なら働ける、職場の配慮を受けて限られた業務をこなしている。こうした方は2級の認定が難しくても、3級なら該当することがあります。厚生年金なら、この層が受給の対象に入ります。
障害手当金という一時金もあります
3級の基準に届かなかった場合でも、厚生年金には障害手当金があります。初診日から5年以内に傷病が治り、障害厚生年金より軽い一定の障害が残っている場合に、報酬比例の年金額の2年分が一時金として支給されます。令和8年度の最低保障額は1,271,000円です。国民年金にはこの一時金のしくみがありません。
初診日が厚生年金なら3級も対象と聞きました。今は会社員なので大丈夫でしょうか。
社労士そこが分かれ目です。見られるのは今の加入状況ではなく、初診日に何に加入していたかです。受診した時期を先に確認させてください。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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なぜ「初診日」の加入制度で決まるのですか?

国民年金法第30条と厚生年金保険法第47条が、初診日を起点に支給要件を定めているためです。現在の加入状況は関係ありません。
1日のズレで結論が変わることがあります
転職の空白期間が典型例です。3月31日にA社を退職し、4月10日にB社へ入社したとします。この間に初めて受診すると、加入制度は国民年金です。長年厚生年金に加入していた実績があっても、初診日がこの空白期間にあれば、3級相当の状態では受給できません。
逆に、退職後に受診したつもりでも、在職中に同じ症状で受診した記録が見つかれば、そちらが初診日になることがあります。記憶ではなく記録で確認することが大切です。
20歳前の傷病や第3号被保険者の扱い
20歳になる前に初診日がある場合は、保険料を納めていなくても20歳前傷病による障害基礎年金の対象になります。会社員の配偶者に扶養されている第3号被保険者の方は、国民年金の枠組みです。いずれも1級・2級のみが対象で、3級はありません。
初診日が国民年金だった場合、どうすればよいですか?
2級に該当する可能性を検討します。3級がないだけで、2級以上であれば障害基礎年金を受給できます。
まず被保険者記録で事実を確認する
ご本人の記憶では会社員だったはずでも、試用期間中で社会保険に未加入だった、というケースは少なくありません。年金事務所で被保険者記録を照会すれば、どの制度にいつからいつまで加入していたかを日単位で確認できます。ここを確定させないまま書類を進めると、あとで前提が崩れます。
日常生活の制限を診断書に反映させる
3級相当と言われていても、日常生活の困りごとが診断書に反映されていないだけということがあります。食事、清潔の保持、金銭管理、通院、対人関係。どの場面でどれだけの援助が必要かを具体的に医師へ伝えてください。2級に該当するかは、労働の制限ではなく日常生活の制限で判断されます。
よくある質問
Q. 今は厚生年金ですが、初診日は自営業のころでした。3級は無理ですか?
A. その傷病については3級では受給できません。障害基礎年金は1級・2級のみが対象だからです。ただし2級に該当する状態であれば受給できます。
Q. 障害厚生年金には、障害基礎年金も上乗せされますか?
A. 1級・2級の場合は、障害厚生年金に障害基礎年金が併せて支給されます。3級は障害厚生年金のみで、障害基礎年金は支給されません。
Q. 厚生年金の加入期間が1年しかなくても受給できますか?
A. できます。報酬比例部分の計算で被保険者期間が300月に満たない場合は300月とみなされるため、加入期間の短さだけで極端に低い額になることはありません。
Q. 初診日に加入していた制度は、どこで確認できますか?
A. 年金事務所で被保険者記録を照会できます。ねんきん定期便やねんきんネットでも加入履歴を確認できますが、月単位の表示のため、日単位の確認には年金事務所での照会が確実です。
まとめ:確認する順番は「初診日」「加入制度」「等級」
障害年金で最初に確かめるのは、今の状態ではなく初診日です。その日にどの制度へ加入していたかで、3級が対象になるかどうかが決まります。国民年金なら1級・2級のみ、厚生年金なら3級と障害手当金まで対象です。
初診日が国民年金だったとしても、2級に該当する可能性は残ります。まず被保険者記録で事実を確認し、そのうえで日常生活の制限が診断書に正しく反映されているかを見てください。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・厚生年金保険法 第47条・第55条・別表第1(e-Gov法令検索)
・障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)
・障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)
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