監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律・厚生労働省の公表資料・日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
特別障害者手当は、20歳以上で日常生活に常時特別の介護が必要なほど重度の障害がある方に支給される福祉手当で、保険料の納付実績や年金への加入歴を問いません(特別児童扶養手当等の支給に関する法律に基づく制度)。
障害基礎年金や障害厚生年金を受給している方でも、障害の程度が基準を満たせば追加で受け取れる可能性があるため、確認する価値があります。
逆に、この手当だけを受けていて障害年金を請求していない方や、障害年金を受けていてこの手当の存在を知らない方もいるため、両方の制度を一度に確認することをおすすめします。
「障害年金をもらっているから、他の制度は関係ない」「この手当だけ受け取っていれば十分」——そう思い込んでいる方の中に、実はもう一方の制度も対象になる方が少なくありません。特別障害者手当と障害年金は、どちらも重度の障害がある方を支えるための公的な制度ですが、根拠となる法律も、支給する目的も別々です。
そのため、片方の制度の窓口では、もう一方の制度について詳しく案内されないことがあります。年金事務所は年金の専門窓口、市区町村の福祉担当課は福祉手当の専門窓口というように、担当が分かれていることも情報が伝わりにくい一因です。この記事では、特別障害者手当の対象になる条件、支給額、そして障害年金との関係について、社労士の視点から整理して解説します。
特別障害者手当は、どんな人が対象になりますか?
対象になるのは、精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある、在宅の20歳以上の方です。
「著しく重度」の目安は、おおむね身体障害者手帳1級・2級程度の障害が重複している方、療育手帳A程度の障害が重複している方、またはこれらと同程度の極めて重度の精神障害・内部疾患・難病がある方です。障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書によって同程度の障害と認められれば対象になることがあります。
具体的な認定基準では、両目の視力の和が0.04以下、両耳の聴力が補聴器を用いても音声を識別できない程度、両上肢または両下肢の機能に著しい障害があるものなど、法令で定められた障害が複数該当することが求められます。単独の障害だけでは基準に届かなくても、複数の障害が重なることで対象になるケースが多いのが特徴です。
保険料の納付要件は一切問われません
障害年金は初診日の前日までの保険料納付要件が支給の条件になりますが、特別障害者手当は年金制度への加入歴や保険料の納付状況とはまったく関係がありません。過去に保険料の未納期間があり「障害年金は難しいかもしれない」と感じている方でも、この手当は対象になり得ます。
対象外になるケース
次のいずれかに該当する場合は、手当を受給できません(特別児童扶養手当等の支給に関する法律第26条の2)。障害者支援施設や特別養護老人ホーム等に入所している方、病院・診療所・介護老人保健施設等に3か月を超えて継続して入院している方、そして本人または配偶者・扶養義務者の所得が一定額を超える方です。同法第26条の2は、この3つの除外事由を明確に定めています。
入院についての3か月という期間は「継続して」が条件なので、短期入院を繰り返している場合や、いったん退院してから再入院した場合は、その都度カウントし直されます。長期入院の予定がある方は、この点も窓口で確認しておくと安心です。
特別障害者手当はいくらもらえますか?
令和8年度の支給月額は30,450円です。この金額は障害の等級による差はなく一律で、前年の消費者物価指数の変動に応じて毎年度改定されます。
支給される時期
原則として毎年2月・5月・8月・11月に、それぞれ前月までの3か月分がまとめて支給されます。例えば5月の支給日には、2月・3月・4月の3か月分がまとめて振り込まれる形です。障害年金の支払月(偶数月の年6回)とは回数もタイミングも異なるので、家計の管理をする際は分けて把握しておくと安心です。
所得による支給制限
受給資格者本人や、生計を維持する配偶者・扶養義務者の前年の所得が一定額を超えると、その年度(8月分から翌年7月分まで)は支給が停止されます(同法第26条の4)。所得制限額は扶養親族等の人数に応じて変わります。
| 扶養親族等の数 | 本人の所得制限限度額 | 配偶者・扶養義務者の所得制限限度額 |
|---|---|---|
| 0人 | 3,758,000円 | 6,287,000円 |
| 1人 | 4,138,000円 | 6,536,000円 |
| 2人 | 4,518,000円 | 6,749,000円 |
ここで注意したいのが、本人の所得を計算する際、障害年金などの非課税の公的年金給付も所得に含めて判定される点です。障害年金の受給額が高いと、この所得制限に引っかかって特別障害者手当が支給停止になることもあります。
特別障害者手当と障害年金は、両方もらえますか?

制度の目的が異なるため、要件を満たせば特別障害者手当と障害年金を同時に受け取ることができます。
障害年金は保険料の納付実績に基づく年金給付、特別障害者手当は重度の障害による特別な介護負担を軽減するための福祉手当という位置づけで、根拠となる法律もまったく別です。そのため、障害年金の等級が特別障害者手当の基準にも当てはまる方は、両方を受け取れる可能性があります。
ただし、まったく影響がないわけではありません。前述の所得制限の計算では、障害年金のような非課税の公的年金給付も本人の所得に算入されます(同法第26条の4)。つまり「併給できる」ことと「所得制限に必ず引っかからない」ことは別の話で、年金額が高い方ほど所得制限の対象になりやすい点は理解しておく必要があります。
障害年金を受給中の方が見落としやすい点
障害年金1級・2級を受給している方の中には、日常生活で常に介護を必要とするほど重い状態にある方も少なくありません。「障害年金をもらっているから他の制度は関係ない」と思い込み、特別障害者手当の存在自体を知らずに過ごしている方は一定数いると考えられます。
手当だけを受けている方が見落としやすい点
逆に、特別障害者手当だけを受給していて、障害年金を請求していない方もいます。過去の保険料未納を理由に障害年金をあきらめている場合でも、初診日の特定次第では納付要件を満たせるケースや、20歳前傷病(保険料納付要件そのものが問われない)に該当するケースもあります。手当の窓口と年金の窓口は別なので、案内が縦割りになりやすい点にも注意が必要です。
障害年金をもらっているのですが、この手当も申請できるんでしょうか?
社労士はい、可能性はあります。障害年金の等級と、特別障害者手当の「常時特別の介護が必要な状態」という基準は、判断のものさしが異なります。年金を受け取っているからといって対象外になるわけではないので、一度状態を確認してみましょう。
特別障害者手当は、どこでどう申請すればいいですか?
申請窓口は、障害年金のように年金事務所ではなく、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口です。

主な必要書類
認定請求書、障害の種類に応じた所定様式の診断書、所得を確認できる書類などが必要です。診断書は視覚障害用・聴覚障害用・肢体不自由用・精神障害用など障害の種類ごとに様式が分かれているため、様式を間違えると窓口で差し戻されることがあります。障害者手帳を持っていない場合でも、診断書の内容次第で申請できることがあるので、まずは窓口で相談してみるとよいでしょう。
支給が始まるタイミング
認定されると、請求した月の翌月分から支給が始まります。申請が遅れるとその分もらえる期間が短くなるため、対象になるかもしれないと感じた時点で早めに相談することが大切です。
よくある質問
Q. 障害年金3級でも特別障害者手当は対象になりますか?
A. 等級だけで自動的に決まるわけではありません。特別障害者手当は「日常生活で常時特別な介護を必要とする状態」という独自の基準で判断されるため、3級であっても実際の障害の状態次第では対象になり得ますし、1級でも対象にならない場合もあります。診断書に日常生活の困難さが具体的に書かれているかどうかが判断の分かれ目になります。
Q. 精神障害でも特別障害者手当の対象になりますか?
A. 対象になり得ます。身体障害だけでなく、極めて重度の精神障害により、食事や身の回りのことのほとんどを一人で行えない状態も、認定基準の対象に含まれています。診断書の内容が重要になるため、日頃の生活の様子を主治医にどう伝えるかがポイントになります。
Q. 施設に入所していますが対象になりますか?
A. 障害者支援施設や特別養護老人ホーム等に入所している方は対象外です。特別障害者手当は在宅で生活している方を対象にした制度のため、施設入所や3か月を超える継続入院の間は支給されません。
Q. 一度申請すればずっと受給できますか?
A. 障害の状態や所得の状況を確認するため、毎年所得状況届(現況届)の提出が必要です。提出を忘れると支給が止まってしまうことがあるため、案内が届いたら早めに手続きしましょう。
Q. 申請できるか自分では判断が難しいのですが相談できますか?
A. 社会保険労務士は障害年金だけでなく、特別障害者手当のような福祉手当についての相談にも対応できます。両方の制度をまとめて確認したい場合は、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
まとめ:年金と手当、両方の確認を
特別障害者手当は、20歳以上で日常生活に常時特別の介護が必要なほど重度の障害がある在宅の方に支給される福祉手当で、保険料の納付実績は問われません。令和8年度の支給月額は30,450円で、年4回(2・5・8・11月)に分けて支給されます。障害年金とは目的が異なる別の制度のため、要件を満たせば両方を同時に受け取ることができます。
障害年金を受給していてこの手当を知らない方、逆にこの手当だけを受けていて障害年金を請求していない方、どちらのケースも起こり得ます。窓口が別々になっている制度だからこそ、片方の情報だけで判断せず、両方の可能性を一度に確認してみることが大切です。ご自身やご家族の状態がどちらか一方、あるいは両方に当てはまらないか、一度確認してみることをおすすめします。香川・岡山・愛媛を中心に全国各地からのお問い合わせに対応しておりますので、来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
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