監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法、および日本年金機構の公表情報(令和8年度)に基づき作成しています。
この記事の結論
障害基礎年金は「1級・2級の定額」、障害厚生年金は「これまでの平均収入と加入期間で決まる報酬比例部分」で計算されます。
障害基礎年金は所得に関係なく金額が決まりますが、障害厚生年金は人によって金額が異なります。
厚生年金の加入期間が25年(300月)に満たない場合は300月とみなして計算されるため、加入期間が短くても一定の水準が確保されます。
「自分の場合、障害年金はいくらもらえるのだろう」というご質問を、よくいただきます。年金額の記事はインターネット上にたくさんありますが、多くは「1級はいくら、2級はいくら」という早見表にとどまり、なぜその金額になるのかまでは説明されていません。仕組みが分からないままだと、自分の場合にどう当てはまるのか判断がつきにくいものです。
この記事では、令和8年度の最新の金額をもとに、障害年金がどのような計算式で決まるのかを、社会保険労務士の視点から解説します。計算の仕組みが分かれば、ご自身の場合におおよそどれくらいになりそうか、見通しを立てやすくなります。難しい数式をそのまま覚える必要はありません。全体の考え方をつかんでいただければ十分です。
障害年金の金額は、どうやって決まりますか?
障害基礎年金は定額で、障害厚生年金は収入と加入期間で決まる報酬比例部分で計算されます。
障害年金には、国民年金から支給される障害基礎年金と、厚生年金保険から支給される障害厚生年金の2種類があります。初診日に厚生年金に加入していた方は、障害基礎年金と障害厚生年金の両方(1級・2級の場合)、または障害厚生年金のみ(3級の場合)を受け取れます。この2つは、金額の決まり方がまったく異なります。「自分はいくらになるのか」を知るためには、まずどちらの制度が関係するのかを整理することが出発点になります。
| 障害基礎年金 | 障害厚生年金 | |
|---|---|---|
| 金額の決まり方 | 1級・2級で定額(全国一律) | これまでの平均収入 × 加入期間で人によって異なる |
| 3級・障害手当金 | なし(対象外) | 3級・障害手当金にも対応 |
| 主な加算 | 子の加算 | 配偶者加給年金(1級・2級のみ) |
障害基礎年金は、いくらになりますか?
令和8年度は、1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円です(子の加算を除く)。
障害基礎年金は、収入や加入期間に関係なく、等級だけで金額が決まる定額制です。1級は2級の1.25倍にあたります。昭和31年4月1日以前生まれの方は、1級1,056,125円、2級844,900円と、わずかに異なる金額が適用されます。自営業やパート、専業主婦(主夫)の方など、初診日に国民年金だけに加入していた場合は、この障害基礎年金のみが支給されます。
障害厚生年金の「報酬比例部分」は、どう計算されますか?

これまでの平均収入に、法律で決まった率と厚生年金の加入月数をかけて計算します。
日本年金機構が公表している計算式は、平均標準報酬額(賞与を含めた平均月収に近いもの)に、1000分の5.481という率と、厚生年金の加入月数をかけたものが基本です。平成15年3月以前の期間は率が異なりますが、多くの方にとっては「平均収入 × 加入月数に応じた率」という考え方で十分にイメージできます。会社員として働いていた期間が長く、収入が高かった方ほど、この部分の金額は大きくなる仕組みです。
簡単な計算例
たとえば、平均標準報酬額が35万円、厚生年金の加入期間が300月(25年相当)の方の場合、報酬比例部分はおおよそ「35万円×0.005481×300月=575,505円」となります。この方が2級であれば、これに障害基礎年金847,300円が加わり、合計で年額およそ142万円になります。あくまで簡略化した目安であり、実際には平成15年3月以前の期間がある場合は計算が分かれるため、正確な金額はねんきん定期便等での確認が必要です。
等級による違い
この報酬比例部分をもとに、2級はそのままの金額、1級は1.25倍、3級はそのままの金額(ただし最低保障あり)という形で、等級ごとの年金額が決まります。1級・2級の場合はここに障害基礎年金が加わりますが、3級には障害基礎年金が支給されないため、報酬比例部分だけが年金額になります。
厚生年金の加入期間が短くても大丈夫ですか?
厚生年金の加入期間が300月(25年)に満たない場合は、300月とみなして計算されます。
これは日本年金機構が明示している最低保障の仕組みです。若くして病気やケガをされた方など、厚生年金の加入期間が短い場合でも、この規定によって一定の水準が確保されます。なお、障害認定日の属する月より後の被保険者期間は、この計算には含まれません。たとえば、就職して1年ほどで初診日を迎えた方であっても、実際の加入月数ではなく300月として計算されるため、極端に低い金額になることは避けられる仕組みになっています。
正社員としてまだ3年しか働いていません。この場合、年金額はかなり少なくなってしまうのでしょうか。
社労士ご安心ください。厚生年金の加入期間が300月に満たない場合は、300月とみなして計算する仕組みがあります。加入期間が短いことだけを理由に、極端に金額が下がることはありません。
配偶者や子どもがいると、金額は変わりますか?

変わります。障害基礎年金の子の加算、障害厚生年金の配偶者加給年金が上乗せされます。
障害基礎年金を受ける方に生計を維持されている子がいる場合、1人・2人目は1人につき243,800円、3人目以降は1人につき81,300円が加算されます。障害厚生年金の1級・2級を受ける方に65歳未満の配偶者がいる場合は、243,800円の配偶者加給年金が加算されます。3級には配偶者加給年金はつきません。
子どもの人数によって、具体的にどのくらい変わりますか?
障害基礎年金2級の場合、子どもが増えるごとに年額20万円台〜8万円台が上乗せされます。
令和8年度の障害基礎年金2級(昭和31年4月2日以後生まれの方)を例に、子の人数ごとの年額をまとめると、以下のとおりです。
| 子の人数 | 障害基礎年金2級の年額(子の加算込み) |
|---|---|
| 子なし | 847,300円 |
| 子1人 | 1,091,100円 |
| 子2人 | 1,334,900円 |
| 子3人 | 1,416,200円 |
このように、子の加算だけでも受給額は大きく変わります。障害厚生年金がある場合は、これに報酬比例部分と配偶者加給年金が加わるため、世帯構成によって最終的な受給額の差はさらに大きくなります。
3級や障害手当金は、どう計算されますか?
3級は報酬比例部分そのもの、障害手当金は報酬比例部分の2倍が基準になり、それぞれに最低保障額があります。
3級・障害手当金は障害厚生年金だけの制度で、障害基礎年金にあたる部分はありません。そのため、計算結果が低く出過ぎないよう、それぞれに最低保障額が設けられています。
3級の最低保障額
令和8年度の3級の最低保障額は年額635,500円です。報酬比例部分を計算した結果がこの金額を下回る場合は、635,500円が支給されます。加入期間が短い方でも、この最低保障によって一定の水準が確保される仕組みです。
障害手当金は一時金です
障害手当金は、3級よりもさらに軽い障害の状態のときに、年金ではなく一時金として支給されるものです。令和8年度の最低保障額は1,271,000円で、報酬比例部分の2倍相当額とこの最低保障額を比較し、高い方が支給されます。一度受け取ると、その後の年金には切り替わりません。
よくある質問
Q. 自分の平均標準報酬額は、どこで確認できますか?
A. 毎年送られてくる「ねんきん定期便」や、日本年金機構の「ねんきんネット」で、これまでの標準報酬月額や標準賞与額の記録を確認できます。正確な試算をご希望の場合は、これらの資料をお持ちいただくとスムーズです。手元にない場合でも、ねんきんネットに登録すればオンラインで確認できます。
Q. 転職して厚生年金と国民年金を行き来している場合、計算はどうなりますか?
A. 厚生年金に加入していた期間だけが報酬比例部分の計算対象になります。国民年金のみの期間(自営業・無職等)は、この部分の計算には含まれませんが、保険料納付要件の判定には反映されます。
Q. 年金額は税金がかかりますか?
A. 障害年金は非課税所得のため、所得税はかかりません。確定申告の際の所得にも含める必要がなく、受け取った金額をそのまま生活費等に充てることができます。
Q. 年金額はいつ改定されますか?
A. 物価や賃金の変動にあわせて、原則として毎年4月に改定されます。令和8年度は、前年度から障害基礎年金が1.9%、障害厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられました。この記事の金額も、今後の改定により変わる可能性があります。
Q. 障害年金以外に、上乗せの給付はありますか?
A. 障害基礎年金1級・2級を受けている方のうち、一定の要件を満たす方には、障害年金生活者支援給付金が上乗せされる場合があります。該当するかどうかは、個別の状況によって異なります。障害年金の請求と同時に手続きできることが多く、あわせて確認しておくと安心です。
Q. 自分でも正確な金額を計算できますか?
A. 平成15年3月以前と4月以降で計算式が分かれることもあり、正確な金額をご自身で計算するのは簡単ではありません。おおよその目安であれば、この記事の考え方で見当をつけられますが、正確な試算をご希望の場合はご相談ください。ねんきん定期便の記録があれば、比較的スムーズに試算できます。
まとめ:計算式を知れば、自分の場合の見通しが立てやすくなります
障害基礎年金は等級だけで決まる定額制で、令和8年度は1級1,059,125円、2級847,300円です。障害厚生年金は、これまでの平均収入と加入期間をもとに計算される報酬比例部分が基本になるため、人によって金額が異なります。厚生年金の加入期間が300月に満たない場合は300月とみなして計算されるため、加入期間が短いことだけで大きく不利になるわけではありません。3級や障害手当金にも、それぞれ最低保障額が設けられています。
配偶者や子どもの有無によっても金額は変わります。正確な金額は、ねんきん定期便等の記録をもとにした試算が必要になりますので、気になる方は一度ご相談ください。ご自身での計算に自信がなくても、記録さえあればこちらで確認できます。
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