監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法、国民年金・厚生年金保険障害認定基準、および日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
障害年金は病名を限定しておらず、日常生活や仕事にどれだけ支障があるかで判断されます。
認定基準は「眼」「肢体」「精神」「呼吸器」「心臓」など19の区分に分かれており、ほぼすべての病気・ケガが対象になり得ます。
「がん」や「難病」のように区分名として明記されていない病気でも、症状が最も近い区分の基準を準用して審査される仕組みがあります。
「自分の病気は障害年金の対象になるのだろうか」というご相談を、よくいただきます。がんや精神疾患、内部疾患のように、対象になるかどうかがイメージしにくい病気について不安に思う方も少なくありません。難病や聞き慣れない診断名の場合、なおさら判断がつきにくいものです。
結論から言うと、障害年金は特定の病気だけを対象にした制度ではありません。この記事では、対象になる病気の考え方と、具体的な区分の一覧を、社会保険労務士の視点からご紹介します。ご自身の病気が当てはまるかどうかの参考にしていただければと思います。「聞いたことのない病名だから対象外かもしれない」と、ご自身で判断して諦めてしまう前に、まずは全体像を確認してみてください。
障害年金は、病名で対象・対象外が決まるのですか?
いいえ。病名ではなく、日常生活や仕事にどれだけ支障が出ているかで判断されます。
国民年金・厚生年金保険障害認定基準では、障害の状態の基本を「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」などと定めています。病気の種類そのものよりも、その病気によって生活や仕事にどのような支障が生じているかが、審査の中心になります。同じ病名でも、症状の重さや生活への影響は人それぞれ異なるため、一律に「この病気なら何級」と決まっているわけではありません。
対象になる病気には、どんな種類がありますか?
障害認定基準は19の区分に分かれており、ほぼすべての病気・ケガをカバーしています。
目や耳の障害から、精神疾患、内部疾患、がんまで、区分は多岐にわたります。ご自身の病気がどの区分に近いか、まずは全体像を確認してみましょう。表にない病名でも当てはまる区分があることがほとんどです。
| 区分 | 代表的な病気・ケガの例 |
|---|---|
| 第1節 眼の障害 | 網膜色素変性症、緑内障など |
| 第2節 聴覚の障害 | 感音性難聴、突発性難聴など |
| 第3節 鼻腔機能の障害 | 嗅覚脱失など |
| 第4節 平衡機能の障害 | メニエール病など |
| 第5節 そしゃく・嚥下機能の障害 | 舌がん術後の後遺症など |
| 第6節 言語機能の障害 | 失語症、喉頭摘出後など |
| 第7節 肢体の障害 | 関節リウマチ、人工関節、切断、脳性麻痺など |
| 第8節 精神の障害 | うつ病、統合失調症、発達障害、知的障害、高次脳機能障害など |
| 第9節 神経系統の障害 | パーキンソン病、脊髄損傷、てんかん、ALSなど |
| 第10節 呼吸器疾患による障害 | 間質性肺炎、気管支喘息、肺気腫など |
| 第11節 心疾患による障害 | 心不全、心筋梗塞、ペースメーカー装着など |
| 第12節 腎疾患による障害 | 人工透析、慢性腎不全など |
| 第13節 肝疾患による障害 | 肝硬変、肝がんなど |
| 第14節 血液・造血器疾患による障害 | 白血病、再生不良性貧血など |
| 第15節 代謝疾患による障害 | 糖尿病の合併症など |
| 第16節 悪性新生物による障害 | がん全般 |
| 第17節 高血圧症による障害 | 高血圧に伴う合併症 |
| 第18節 その他の疾患による障害 | 難病、化学物質過敏症、ME/CFS、コロナ後遺症など |
| 第19節 重複障害 | 複数の障害が重なる場合の認定方法 |
診断書の様式は、おおむね8種類に分かれています
上記の19区分は、実際の請求では大きく8種類程度の診断書様式にまとめられています。たとえば、聴覚・鼻腔機能・平衡機能・そしゃく嚥下機能の障害は1つの様式で、血液・造血器・その他の障害も1つの様式にまとめられています。どの様式を使うかは、中心となる症状によって決まります。神経系統の障害のように、症状によって肢体の障害用と精神の障害用のどちらを使うか判断が分かれる区分もあります。
複数の病気がある場合は、どうなりますか?
複数の障害が重なっている場合は、第19節「重複障害」の考え方に基づき、それぞれの障害の程度を組み合わせて、総合的に等級が判断されます。1つの病気だけでは軽度でも、複数の障害が重なることで、より重い等級に認定される場合もあります。持病がいくつもある方は、それぞれを個別に考えるのではなく、全体としてどれだけ生活に影響しているかを整理することが大切です。
精神疾患やがんも、対象になりますか?

精神疾患やがんも、生活や仕事への支障が大きければ対象になります。
精神疾患は、うつ病・統合失調症・双極性障害・発達障害など幅広い病名が対象です。ただし精神疾患は2級・3級が中心で、1級に認定されるのは重度の知的障害や重篤なてんかんなど、限られたケースです。がんについては、腫瘍そのものだけでなく、治療の副作用や倦怠感によって生活や仕事に支障が出ている状態も、審査の対象として考慮されます。
糖尿病や心臓病などの内部疾患も対象です
外見からは分かりにくい内部疾患も、障害年金の対象です。人工透析を行っている腎疾患は原則2級として扱われるなど、疾患ごとに具体的な目安が定められている場合もあります。心疾患・糖尿病・呼吸器疾患・肝疾患は、それぞれ検査数値や臨床所見をもとに、疾患ごとに定められた基準で審査されます。周囲から症状が見えにくい分、生活への影響を診断書にどう反映してもらうかが重要になります。
がんの治療中で、手術の傷は治りましたが、抗がん剤の副作用でだるさが続いています。こういう場合も対象になるのでしょうか。
社労士可能性はあります。がんは、腫瘍の状態だけでなく、治療に伴う副作用や倦怠感による生活への影響も含めて審査されます。具体的な症状を整理して、一度ご相談ください。
自分の病気がどの区分か分からないときは、どうすればいいですか?

ご自身で区分を特定する必要はありません。症状と診断名を伝えていただければ、こちらで整理します。
1つの病気が複数の区分にまたがることもあれば、診断名だけでは判断がつかないケースもあります。「どの診断書様式を使えばいいのか」「どの区分に該当するのか」といった判断は、専門的な知識が必要になる部分です。無理にご自身で調べようとせず、症状や生活での困りごとをそのまま伝えていただくところから始めていただければ十分です。複数の病院にかかっている場合も、まとめて整理いたします。
病名が認定基準に載っていない場合は、どうなりますか?
認定基準に明記されていない病気でも、症状が最も近い区分の基準を準用して審査されます。
障害認定基準では、明示された基準に当てはまらない障害について、その障害の程度を医学的検査結果等に基づいて判断し、最も近似する認定基準の障害の程度に相当するものを準用して認定を行うと定められています。診断名が一覧に見当たらないからといって、対象外だと決めつける必要はありません。
加齢による衰えや、生活習慣病でも対象になりますか?
病気やケガが原因であることが前提のため、単なる加齢による衰えだけでは対象になりにくいのが実情です。
障害年金は、特定の傷病を原因とする障害を対象にした制度です。加齢に伴う一般的な体力の低下そのものは、対象となる「傷病」として扱いにくい面があります。一方で、変形性関節症や骨粗しょう症による骨折など、加齢に関連しつつも医学的な傷病名がつく状態であれば、対象として検討できる場合があります。この判断は個別性が高いため、思い込みで諦める前に、一度具体的な状況を確認されることをおすすめします。生活習慣病についても同様で、糖尿病や高血圧そのものというより、それに伴う合併症の程度が審査の対象になります。
よくある質問
Q. 精神疾患は何級まで認定されますか?
A. 2級・3級が中心です。1級に認定されるのは、重度の知的障害や重篤なてんかんなど、日常生活のほとんどに介助が必要な限られたケースです。
Q. 対象疾患一覧に載っていない病気は、対象外ですか?
A. 対象外とは限りません。診断名が区分に明記されていなくても、症状が最も近い区分の基準を準用して審査される仕組みがあります。まずは症状を整理して相談してみることをおすすめします。診断がつきにくい病気であっても、同じ理由であきらめる必要はありません。
Q. 持病が複数ある場合、どう判断されますか?
A. 第19節「重複障害」の考え方に基づき、それぞれの障害の程度を組み合わせて総合的に判断されます。1つずつは軽度でも、組み合わせにより等級が上がることがあります。
Q. 診断書の様式を間違えると、どうなりますか?
A. 症状に合わない様式で作成されると、必要な項目が記載されず、審査に不利になることがあります。どの様式が適切か迷う場合は、依頼する前に事前に確認することをおすすめします。一度提出した診断書をやり直すのは、時間も費用もかかります。
Q. 症状の重さに自信がなくても、相談していいですか?
A. もちろんです。「これくらいで相談していいのか」と迷う段階でも、まずは状況を伺うところから始められます。ご自身で判断して諦めてしまう前に、一度お問い合わせください。
Q. 労災や交通事故が原因の障害でも対象になりますか?
A. 対象になります。ケガの原因が労災や交通事故であっても、要件を満たせば障害年金を申請できます。ただし、労災保険の給付を受けている場合は、給付の一部が調整されることがあります。交通事故の場合は、加害者側からの賠償と障害年金の関係についても、あわせて整理しておくと安心です。
まとめ:病気の種類で諦める前に、支障の程度を確認しましょう
障害年金は病名を限定しておらず、認定基準は眼・肢体・精神・呼吸器・心臓など19の区分に分かれ、ほぼすべての病気・ケガをカバーしています。がんや精神疾患のように、対象になるイメージが湧きにくい病気も、生活や仕事への支障が大きければ検討の対象になります。糖尿病や心臓病といった内部疾患も、検査数値や生活への影響をもとに、それぞれ定められた基準で審査されます。
診断名が一覧に見当たらない場合でも、最も近い区分の基準を準用して審査される仕組みがあるため、対象外だと自己判断せず、まずは症状を整理して相談してみることをおすすめします。ご自身でどの区分に当てはまるか調べる必要はなく、症状をそのままお伝えいただければ十分です。
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