監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は医師法、日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
転院を繰り返して最初の病院のカルテがなくても、2番目以降の病院の記録や第三者証明を組み合わせることで、初診日を証明できる場合があります。
まずは受診した病院を古い順に並べ、紹介状や問診票に前の病院の記載がないか確認しましょう。
それでも証拠が集まらないときの第三者証明は、請求者の三親等内の親族には頼めません。
「10軒以上も病院を変わっていて、最初にかかった病院はもう覚えていない」というご相談を、当センターでもよくお受けします。転院が多いこと自体は珍しくありませんが、初診日を証明する段になると、記録の途切れが大きな壁になります。
この記事では、カルテが残っていない病院がある場合に、何を手がかりに初診日を証明していくのか、実務での探し方の順序を解説します。
転院を繰り返すと、なぜ初診日の証明が難しくなりますか?
転院の回数が多いほど、最初に受診した病院のカルテが残っていない可能性が高くなります。カルテの保存期間は医師法第24条第2項で最終診療日から5年間と定められているためです。

個人クリニックは廃院のリスクもある
5年という保存期間は法律上の最低限であり、実際にはそれより長く保管している医療機関も少なくありません。一方で、個人クリニックの場合は院長の引退などで廃院し、カルテそのものが引き継がれずに失われてしまうこともあります。10軒以上の転院歴があると、この両方のリスクが重なりやすくなります。
証拠の「連鎖」が途切れる仕組み
初診の病院にカルテがなくても、2番目に受診した病院のカルテに「最初の病院からの紹介状」や「〇年〇月に前医を受診」という記載があれば、それが初診日の客観的な証拠になります。転院数が多いほど、この記載がどこかで途切れてしまうリスクも大きくなるため、古い順に一つずつ確認していくことが欠かせません。
カルテがない場合、初診日を示す証拠には何がありますか?
診察券やお薬手帳、健康保険の給付記録なども、初診日を示す参考資料として使えます。日本年金機構は、医療機関の証明が得られない場合の参考資料を案内しています。
代替資料の種類と入手先
| 資料 | 主な入手先 |
|---|---|
| 診察券・お薬手帳・領収書 | 自宅で保管しているもの |
| 健康保険の給付記録(レセプト) | 加入している健康保険組合 |
| 障害者手帳の申請時の診断書 | 手帳を交付した自治体 |
| 生命保険・損害保険の給付申請時の診断書 | 契約している保険会社 |
1枚だけでは弱い証拠でも、複数の資料を時系列で並べると、初診日の推定を裏付ける材料になります。まずは自宅にあるものを探し、次に健康保険組合や自治体など外部への照会を検討する順番で進めるとよいでしょう。健康保険組合へのレセプト開示請求には数週間かかることもあるため、早めに申し込んでおくと安心です。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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紹介状や問診票の記載は、証拠としてどう使えますか?
転院先の病院に保管されている紹介状の写しや、問診票の既往歴欄の記載が、決定的な証拠になることがあります。本人の記憶よりも、医療機関が当時作成した記録の方が証明力を持ちます。
紹介状の控えを確認する
紹介状は発行元の病院にも控えが残っていることが多く、受診状況等証明書と一緒に発行を依頼できる場合があります。宛先の病院名や発行日が入っているため、初診日を特定する手がかりとして重要です。他の医療機関を経由して検査を受けた場合の「診療情報提供書」も、同じように前医の名前と受診時期を示す証拠になります。
問診票の既往歴欄も見落とさない
転院時に記入した問診票の「これまでの治療歴」欄に、前の病院名や発症時期が本人の手で書かれていることがあります。カルテの一部として保管されているため、カルテの開示請求をする際は、問診票も含めて開示してもらえるよう、あわせて依頼しておくと見落としを防げます。
一番古い病院はもうカルテが残っていないと言われました。ここで終わりでしょうか
社労士それだけであきらめる必要はありません。2番目に受診した病院に、最初の病院の名前が書かれた紹介状の控えや、問診票の既往歴欄が残っていないか、次に確認してみましょう
どうしても証拠が集まらない場合、第三者証明は使えますか?
客観的な資料がどうしても集まらない場合の最終手段として、第三者証明という制度があります。ただし、証明できる人には条件があります。
請求者の三親等内の親族は証明者になれない
日本年金機構の案内では、請求者の三親等内の親族は第三者証明を行えないとされています。当時の状況を知る友人や職場の同僚、当時の上司など、親族以外の第三者に依頼する必要があります。転院を繰り返している場合は、当時の勤務先が変わっていないかどうかも、証明者を探す手がかりになります。
20歳前の傷病は第三者2名の証明で足りる場合がある
20歳前に初診日がある場合、第三者2名の証明があれば、それだけで初診日が認められることがあります。20歳以降に初診日がある場合は、第三者証明に加えて、前の章で挙げた診察券や領収書などの参考資料もあわせてそろえておくことが望まれます。詳しい書き方や記載条件は、第三者証明の解説記事もご参照ください。
「初診日」が昔すぎて病院がない!第三者証明が認められるための具体的条件
よくある質問
Q. 転院した病院すべてから証明を取る必要がありますか?
A. 必要ありません。まず初診の医療機関に受診状況等証明書を依頼し、それが取れない場合に限って2番目以降の病院の記録を積み重ねます。証明できる記録が見つかった時点で、それ以上さかのぼる必要はありません。
Q. お薬手帳や診察券も残っていない場合はどうすればいいですか?
A. 薬局に調剤記録の照会ができないか確認しましょう。加入していた健康保険組合に、医療費通知やレセプト(診療報酬明細書)の開示を請求する方法もあります。
Q. 初診日の証明にかかる費用は、通常の診断書と同じですか?
A. 証明書の発行費用は医療機関が独自に定める自費文書のため、金額は病院ごとに異なります。古いカルテを調べてもらう場合、通常より時間や費用がかかることがあります。
Q. 何年も前の受診でも、初診日として認められますか?
A. 認められます。初診日の証明に時効はなく、古い受診歴であっても、記録や第三者証明などの根拠がそろえば認定の対象になります。
まとめ:カルテがなくても、記録を積み重ねれば証明できる場合がある
転院を繰り返して最初の病院のカルテが残っていなくても、それだけで申請をあきらめる必要はありません。2番目以降の病院の紹介状や問診票、診察券やお薬手帳といった手元の資料を古い順に確認し、それでも足りない場合は第三者証明を検討する。この順序で一つずつ積み重ねていくことが、初診日の証明につながります。
何から手をつければよいか分からない場合は、当センターの無料相談もご利用いただけます。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・医師法 第24条(e-Gov法令検索)
・障害年金の初診日証明書類のご案内(日本年金機構)
・初診日に関する第三者からの申立書を提出するとき(日本年金機構)
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