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監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は医師法、厚生労働省の通知(平成27年9月28日付け年管管発0928第6号)、日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
初診日の病院が廃院し、カルテも破棄されている場合でも、複数の第三者による証言(第三者証明)と客観的な参考資料を組み合わせることで、初診日を認定してもらうことができます。
証言者に医師・看護師・薬剤師などの医療従事者が含まれる場合、または診察券やお薬手帳など初診日を示す客観的資料が残っている場合は、第三者証明が1名分のみでも認定される可能性があります。
20歳前に初診日がある場合は保険料の納付要件が問われないため第三者証明のみでも認められやすく、20歳以降の場合は診察券・領収書等の客観的資料との併用が原則として求められるという違いがある点に注意が必要です。
障害年金の申請において、もっとも高いハードルの一つが「初診日の証明」です。特に数十年前に発症した傷病の場合、当時の病院が廃院していたり、カルテの保存期間が過ぎて破棄されていたりすることは珍しくありません。
そのような状況で救済策となるのが「第三者証明」ですが、単に「知人が見ていた」というだけでは認められないのが現実です。本コラムでは、初診日の証明が困難な場合に、第三者証明を有効な証拠として認めてもらうための具体的条件とポイントを詳しく解説します。
なぜ初診日の証明ができないと審査が進まないのですか?
初診日は、国民年金か厚生年金か、保険料の納付要件を満たしているか、障害認定日はいつかをすべて決定する審査の起点であり、客観的な書類で証明できなければ審査自体が始まりません。

初診日が特定できないと審査が始まらない理由
どんなに現在の障害の状態が重くても、この「初診日」を客観的な書類(受診状況等証明書)で証明できない限り、審査の土俵にすら乗ることができません。このため、初診日証明は障害年金における「最重要課題」と言われています。
「カルテの保存期間5年」と廃院という現実的な問題
医師法第24条第2項では、診療録(カルテ)の保存義務は診療の完結の日から「5年間」と定められています。精神疾患や先天性の疾患、あるいは徐々に悪化する糖尿病などの場合、初診から請求まで10年、20年と経過していることは珍しくありません。多くの病院では、5年を過ぎたカルテを順次破棄しますし、個人経営のクリニックなどは院長の高齢化により廃院してしまうこともあります。このように「自分の責任ではない理由」で証明が取れないケースが多発しているのです。
証明資料がない場合に検討すべき「第三者証明」の役割
医証(医師が作成する証明書)が得られない場合の代替手段として用意されているのが「第三者による申立書(第三者証明)」です。これは、当時の状況を知る親族以外の方に、本人の受診状況を証言してもらう書類です。かつては非常に厳しい基準がありましたが、現在は制度の運用が緩和され、一定の条件を満たせばこの第三者証明を「初診日を認める証拠」として扱うことが可能になっています。
第三者証明はどんな制度改正で認められるようになったのですか?
2015年(平成27年)10月1日から、厚生労働省の通知(年管管発0928第6号)により、初診日の医証が得られない場合に第三者証明を参考資料として認める運用が始まりました。
平成27年の運用緩和で何が変わったのか
以前の運用では、第三者証明は「他に有力な客観的資料がある場合」に、それを補足するものとしてのみ認められていました。しかし2015年10月の運用改正により、初診病院の医証がどうしても得られない場合に限り、複数の第三者による証明があり、かつその内容に信憑性があると認められれば、第三者証明のみ、あるいは少ない周辺資料との組み合わせで初診日を認定する道が開かれました。
2名以上の証明が必要とされる基本的な考え方
原則として、第三者証明は「2名以上の成人」によるものが必要です。これは、1人だけの証言では主観や記憶違い、あるいは本人の依頼による虚偽の可能性を否定しきれないためです。複数の異なる立場の人が、それぞれ独立して同じ時期の受診について具体的に証言することで、初めてその事実の「客観性」が担保されるという考え方がとられています。
第三者証明は1名だけでも認められますか?
証言者が医師・看護師・薬剤師などの医療従事者であり、初診日頃の受診状況を直接把握していた場合は、その1名の証明のみで医証と同等に扱われます(年管管発0928第6号 第1-1-(2)-②)。
医療従事者(医師・看護師・薬剤師等)による証明は1名で有効
対象となるのは、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士など、国家資格を持つ専門家で、初診日頃の請求者による医療機関の受診状況を直接把握している人です。当時の担当医ではなくとも、同じ病院で勤務していた看護師や薬剤師が「確かにこの時期に、この病気で通院していたことを覚えている」と証言してくれれば、その専門性と職務上の倫理観から、一般の知人よりも格段に高い信憑性があると評価されます。
極めて有力な「客観的な資料」を併用する場合
もう一つの例外は、証言を裏付ける「極めて有力な客観的資料」が一つでも残っているケースです。病院名と日付が記された「診察券」や「お薬手帳」、当時の「領収書」、医療費控除を受けた際の「確定申告書の控え」などが該当します。これらは単体では初診日の証明書としては不十分ですが、1名の第三者が具体的に証言することで、事実として認定されるのです。
公的機関による「受診の痕跡」との組み合わせ
身体障害者手帳の申請時の診断書(写し)や、健康保険組合から取り寄せた「診療報酬明細書(レセプト)」、当時の勤務先の「健康診断結果」などが挙げられます。こうした公的な記録に記載された通院の事実に、当時の同僚や上司1名が具体的な状況を補足する形であれば、年金機構側も疑いようのない事実として判断しやすくなります。
20歳前と20歳以降で何が違うのか
初診日が20歳前か20歳以降かによって、第三者証明に求められる条件が異なります(年管管発0928第6号)。
| 20歳前に初診日がある場合 | 20歳以降に初診日がある場合 | |
|---|---|---|
| 証明の原則人数 | 2名以上(医療従事者なら1名) | 2名以上(医療従事者なら1名) |
| 他の参考資料の要否 | なくても第三者証明のみで認定可能 | 原則、診察券等の客観的資料との併用が必要 |
| 根拠となる通知 | 年管管発0928第6号 第1-2 | 年管管発0928第6号 第1-1 |
第三者証明にはどんな内容を書けば認められやすいですか?
「いつ・どこで・どのような様子だったか」を具体的なエピソードとともに記載し、本人の申立書と内容が一致していることが、証明の信憑性を左右します。

「いつ・どこで・どんな様子だったか」記憶の具体性
単に「〇〇年ごろ、病院に行っていたと思う」といった曖昧な記述では、証拠として採用されません。「私の結婚式の直前に、本人が足を引きずって歩いていた」など、特定のイベントや季節行事と結びついた具体的なエピソードが盛り込まれていることが、信憑性を高める鍵となります。
証言者の立場によって変わる証明の信憑性
もっとも評価が高いのは、利害関係のない「第三者」であり、かつ当時の状況を正確に把握しうる立場の人です。具体的には、当時の勤務先の上司、同僚、民生委員、学校の先生、近所の商店主などが挙げられます。これらの人々は本人と日常的に接しており、受診による遅刻・早退や日常生活の変化を客観的に観察できる立場にあるため、その言葉には重みがあると判断されます。
本人の申立書との整合性が審査の成否を分ける
第三者の証言内容と、本人が提出する「病歴・就労状況等申立書」の内容が食い違っていると、どちらの信憑性も疑われてしまいます。証明を依頼する際は、事前に当時の状況を一緒に振り返り、事実関係に誤認がないかを確認し合うプロセスが不可欠です。
第三者証明は誰に依頼すればいいですか?
民法上の三親等以内の親族は第三者として認められないため(年管管発0928第6号 第1-1-(2)-①)、当時の職場の同僚・上司や友人、医療従事者など利害関係のない第三者に依頼する必要があります。
親に頼めば一番早いと思っていたのですが、親族はダメなんですか?
社労士はい。三親等以内のご親族は本人と利益を共有する立場とみなされるため、第三者証明としては認められません。ただし補足資料として提出することで、審査官の理解を助ける効果は期待できますので、無駄にはなりませんよ。
親族による証明は認められるのか?
親族は本人と利益を共有する立場にあるため、第三者としての客観性に欠けるとみなされるからです。ただし、第三者証明を補完する追加資料として提出することで、全体のストーリーに厚みを持たせ、審査官の理解を助ける効果は期待できます。
当時の同僚や友人に依頼する際のポイント
依頼する際は、単に「書類を書いてほしい」と頼むのではなく、相手の記憶を呼び起こす手助けをすることが重要です。ただし、下書きをそのまま写してもらうようなやり方は避けなければなりません。似たような文章が並ぶと、「本人が作った文章をただ写しただけではないか」という疑念を抱かせる原因になります。あくまで「相手の言葉」で書いてもらうことが重要です。
第三者証明と一緒にどんな資料を準備すればいいですか?
日記や診察券、お薬手帳、健康診断の記録など、初診日を推定できる客観的な資料を第三者証明と組み合わせることで、認定される可能性が大きく高まります。

日記、家計簿、診察券などの「間接的な証拠」の探し方
当時の日記や手帳の書き込み、医療費の記載がある古い家計簿、病院の名前が入った診察券や予約票、お薬手帳や薬の袋。これらは単独では完璧な初診日証明にはなりませんが、第三者の証言内容を裏付ける「物証」として非常に強力に作用します。
当時の勤務状況や学校の記録を活用する方法
勤務先の健康診断の結果(再検査の指示など)や、給与明細の「欠勤」の記録、傷病手当金の受給履歴などです。学生時代からの発症であれば、指導要録の欠席理由や、通知表の「身体の状況」の欄などの写しも有効です。これらと第三者証明を組み合わせることで、確かにこの時期に受診の必要性があったことを多角的に証明していきます。
病院がなくても諦めない!保健所や医師会での調査
初診の病院がなくなっていても、別の病院にデータが引き継がれていることがあります。当時の院長が別の場所で開業しているケースや、医師会の名簿に記載が残っているケースもあります。保健所に問い合わせて「廃院届」の時期を確認したり、医師会を通じて当時の先生の行方を探したりする地道な努力が、第三者証明の「前段階」として重要です。
よくある質問
Q. 第三者証明は誰が書いても法的に有効ですか?
A. いいえ。民法上の三親等以内の親族が作成したものは第三者証明として認められません。友人・知人・職場関係者・医療従事者などが対象です。
Q. 第三者証明だけで初診日が確定しますか?
A. 20歳以降に初診日がある場合は、原則として診察券やお薬手帳など他の客観的資料との併用が必要です。20歳前に初診日がある場合は、第三者証明のみで認定される可能性があります。
Q. 第三者証明の書式は決まっていますか?
A. 日本年金機構が定める「初診日に関する第三者からの申立書」の様式を使用します。年金事務所や年金相談センターの窓口で入手できます。
Q. 第三者証明を依頼しても断られたらどうすればいいですか?
A. 依頼する相手を変えるか、診察券や健康診断結果など他の客観的資料を集めることで、第三者証明への依存度を下げることができます。
Q. 第三者証明はオンラインや郵送で完結できますか?
A. 申立書自体は郵送でのやり取りが可能ですが、内容に疑義がある場合は年金機構から第三者へ電話等で確認が入ることがあります。
まとめ:諦める前に専門家への相談を
初診日の証明ができないからと、受給を諦めてしまう方は少なくありません。しかし、それは非常にもったいないことです。たとえ当時の病院がなくなっていても、カルテが破棄されていても、「第三者証明」という制度を正しく理解し、戦略的かつ丁寧な準備を行えば、数十年という時間の壁を越えて受給に繋げることが可能です。
ただし、第三者証明は単に「誰かに書いてもらう」だけで通るほど簡単なものではありません。年金機構が求める「客観性」や「合理性」を満たすためには、証言の細部まで精査し、それを裏付ける周辺資料を一つひとつ積み上げる、緻密で地道な作業が欠かせません。「自分のケースでも認められるだろうか」と少しでも不安に感じられた際は、ぜひ一度、障害年金に精通した社会保険労務士にご相談ください。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
- 医師法 第24条(e-Gov法令検索)
- 障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて(平成27年9月28日 年管管発0928第6号/厚生労働省)
- 初診日(日本年金機構 用語集)
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