監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は厚生労働省の公表資料に基づき作成しています。
この記事の結論
健康診断を受けた日(健診日)は、原則として初診日にはなりません。初めて治療目的で医療機関を受診した日が初診日となります。
平成27年10月1日より前は、健診で異常を指摘され療養の指導を受けた場合に健診日を初診日とする取扱いでしたが、現在この原則は変更されています。
ただし、その後の受診日を証明する資料が得られず、かつ健診の結果が医学的に見て直ちに治療を要する内容であった場合は、例外的に健診日を初診日として認められることがあります。
「健康診断で異常を指摘されたのが、実質的な病気の始まりだったのでは」「その日を初診日にできないだろうか」というご相談は、初診日を確定させる場面でよくいただきます。
この記事では、健康診断を受けた日が初診日として扱われるのかどうかを、厚生労働省の通知にもとづいて整理します。例外的に健診日が初診日と認められるケースについても解説します。
初診日の考え方は平成27年に大きく変わった経緯があり、古い情報のまま理解している方も少なくありません。最新の取扱いを正しく押さえておきましょう。
健康診断で異常を指摘された日は、初診日になりますか?
原則として、健康診断を受けた日は初診日になりません。その後、実際に治療目的で医療機関を受診した日が初診日として扱われます。
なぜ健診日は初診日にならないのか
初診日は「傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」と定義されています。健康診断や人間ドックは、病気の診断や治療を目的とした「診療」ではなく、あくまで健康状態を確認するための検査です。そのため、健診を受けただけでは初診日には該当せず、その後に治療を目的として医療機関を受診した日が初診日になります。健診はあくまで「体の状態を調べる」行為であり、「治療する」行為ではないという点が、この区別の基本的な考え方です。
以前は健診日が初診日とされていたと聞きましたが?
平成27年9月まではその取扱いでしたが、同年10月1日の制度改正により、現在は変更されています。以前の情報のまま覚えている方は、注意が必要です。

制度改正の経緯
平成27年9月以前は、健康診断で異常が発見され、療養に関する指導を受けた場合、その健診日を初診日とする取扱いがされていました。しかし、何十年も前の健診結果を証明する資料が残っておらず、健診日を証明できないという理由で請求が却下される事例が問題視されるようになりました。健診結果表を何十年も保管している方は多くなく、証明できないだけで請求そのものが認められないというのは、あまりに厳しい運用でした。この状況を受け、厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令(平成27年厚生労働省令第144号)が公布され、初診日の取扱いが見直されました。
改正後の考え方
厚生労働省年金局の通知(平成27年9月28日付け年管管発0928第6号)では、「初診日は、原則として初めて治療目的で医療機関を受診した日とし、健康診断を受けた日(健診日)は初診日として取り扱わないこととする」と明記されています。健診日を証明できずに請求そのものが認められなくなる事態を避けるため、実際に治療を受けた日を基準とする考え方に整理されたものです。同じ通知では、第三者証明の活用や、診察券・カルテなど周辺資料による初診日の推定など、初診日を柔軟に認定するための仕組みもあわせて拡充されており、健診日の取扱いの見直しは、この一連の改正の一部にあたります。
| 平成27年9月まで | 平成27年10月以降 | |
|---|---|---|
| 健診日の扱い | 異常指摘+療養指導があれば初診日になり得た | 原則として初診日にならない |
| 基準となる日 | 健診日(療養指導を受けた場合) | 実際に治療目的で受診した日 |
| 健診日が認められる場合 | 療養の指示があったことが確認できる場合 | 受診日の証明が得られず、かつ健診結果が緊急性の高い内容の場合のみ |
数年前に受けた健康診断で「要精密検査」と言われたのが最初だったんですが、それは初診日にならないんですね
社労士はい、原則としてはその後に実際に医療機関で診療を受けた日が初診日になります。健診を受けた後、いつ、どこの病院で診療を受けられたかを一緒に確認していきましょう
例外的に健診日が初診日と認められるのは、どんな場合ですか?
実際に治療目的で受診した日を証明する資料が得られず、かつ健診の結果が医学的に見て直ちに治療を要する内容であった場合に限り、例外的に健診日を初診日として認められることがあります。両方の条件を満たす必要があります。

例外が認められる2つの条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ①医証が得られないこと | 実際に治療目的で受診した医療機関の証明(受診状況等証明書)が得られない場合 |
| ②健診結果の内容 | 医学的見地から、ただちに治療が必要と認められる健診結果であること |
この2つの条件をどちらも満たす場合に、請求者本人からの申立てにより、健診日を初診日として認めてもらえる可能性があります。単に「異常を指摘された」というだけでなく、その内容が緊急性の高いものであったかどうかが判断のポイントになります。例えば、極端に高い血糖値や血圧など、放置すれば生命に関わりかねない数値が示されていた場合は、②の条件を満たしやすいと考えられます。一方、軽度の所見にとどまる場合は、この例外が認められにくい傾向があります。
必要になる資料
健診日を初診日として申し立てる場合は、健診日を証明する資料(人間ドックの結果通知書など)をあわせて提出する必要があります。健診結果表は、たとえ当時は病院を受診しなかったとしても、念のため保管しておくことをおすすめします。特に会社の健康診断の結果は、退職や転職のタイミングで手元に残らなくなることもあるため、コピーを取っておくと安心です。
健診の後、実は病院に行かずそのままにしてしまったので、証明できる書類がありません
社労士その場合は、健診結果の内容次第で、健診日を初診日として認めてもらえる可能性があります。当時の健診結果表が手元に残っていないか、まず確認してみてください
健診と実際の受診に期間が空いていても、問題ないですか?
問題ありません。健診と実際の受診の間にどれだけ期間が空いていても、実際に治療目的で受診した日が初診日になります。期間の長さ自体が不利にはたらくことはありません。
健診で異常を指摘されてから数か月、あるいは数年経ってから受診したという方も少なくありません。その場合でも、実際に治療目的で受診した日を客観的な資料で証明できれば、その日が初診日として扱われます。20歳前傷病に該当するかどうかも、この初診日を基準に判断されます。ただし、期間が空きすぎると、健診での指摘と実際の受診がそもそも同じ傷病によるものかどうかが問われることもあるため、経過を病歴・就労状況等申立書で具体的に説明できるようにしておくとよいでしょう。
初診日を証明する資料は、他にどんなものがありますか?
基本となるのは、初診の医療機関に作成してもらう受診状況等証明書です。これが得られない場合は、診察券やお薬手帳、第三者証明など複数の代替手段があります。
健診日を初診日とする例外が認められるのは、あくまで「実際の受診日を証明する資料がどうしても得られない場合」に限られます。まずは受診状況等証明書を取得できないか確認し、それが難しい場合に、健診日を初診日とする申立てや、その他の代替資料の活用を検討する、という順序で考えるとよいでしょう。
受診状況等証明書の役割や取り方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
受診状況等証明書とは?診断書との違いと取り方を解説
また、カルテが残っていない場合の代替手段については、こちらもあわせてご覧ください。
カルテがなくても諦めない!診察券やお薬手帳を初診日の証拠にする方法
よくある質問
Q. 人間ドックで指摘された場合も同じ扱いですか?
A. はい、同じ扱いです。人間ドックも健康診断と同様に「診療」には当たらないため、原則として受診日は初診日になりません。例外の考え方も健康診断の場合と同じです。
Q. 健診結果表はいつまで保管しておくべきですか?
A. 明確な期限はありませんが、将来的に障害年金の請求を考える可能性があるなら、できるだけ長く保管しておくことをおすすめします。健診結果は、初診日を推定するための貴重な参考資料になり得ます。会社の健康診断であれば、結果通知書のコピーを自宅にも保管しておくと安心です。
Q. 健診で「要精密検査」と言われただけでは、初診日にならないのですか?
A. 「要精密検査」の指摘だけでは、直ちに初診日になるわけではありません。その後、実際に医療機関で精密検査や治療を受けた日が初診日になるのが原則です。ただし、その受診日を証明できない場合は、例外の対象になり得ます。精密検査の結果自体が、医学的に見て直ちに治療が必要な内容だったかどうかがポイントです。
Q. 会社の健康診断でも同じ扱いですか?
A. はい。実施主体が会社であっても個人であっても、健康診断であることに変わりはないため、同じ考え方が適用されます。
Q. 平成27年9月以前に請求した場合の扱いはどうなりますか?
A. 平成27年10月1日の制度改正は、それ以降に行われる審査に適用される取扱いです。過去に異なる基準で判断された請求について疑問がある場合は、年金事務所や専門家にご相談ください。
Q. 診察券に受診日らしき記載があれば、それだけで初診日と認められますか?
A. 診療科によっては、診察券の記載のみで初診日の参考資料として扱われる場合があります。ただし、他の傷病での受診である可能性が高い場合は、追加の資料をあわせて求められることがあります。
まとめ:健診日ではなく、実際に治療を受けた日が原則です
健康診断や人間ドックで異常を指摘された日は、原則として初診日にはなりません。実際に治療目的で医療機関を受診した日が初診日です。平成27年10月の制度改正により、この考え方が明確になりました。ただし、実際の受診日を証明する資料が得られず、健診結果が医学的に直ちに治療を要する内容だった場合には、例外的に健診日を初診日として認めてもらえる可能性があります。この原則と例外の両方を理解しておくことが、初診日を正しく特定する第一歩になります。
ご自身の初診日がいつになるのか、健診と受診の関係で迷われている方は、一人で判断せず専門家に相談することをおすすめします。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
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