監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)・日本年金機構・総務省の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
年金請求書にマイナンバーを記入すると、戸籍謄本や住民票、所得証明書などの添付が原則不要になり、書類は実際に減ります。
効果が特に大きいのは配偶者や子の加算がある方で、続柄・生計維持関係を確認する複数の書類をまとめて省略できます。
単身者の場合は、実務上そもそも住民票等の提出を求められないケースがほとんどのため、マイナンバーによる恩恵は家族構成がある方ほど大きくはありません。
「マイナンバーを書けば手続きが楽になると聞いたけれど、実際どのくらい書類が減るのか分からない」というご相談を、よくいただきます。障害年金の請求書には、たしかにマイナンバーの記入欄があります。
ただ、その効果は誰にとっても同じというわけではありません。ご家族の状況によって、書類が大きく減る方と、もともとそこまで変わらない方がいます。
この記事では、社会保険労務士の視点から、マイナンバーの記入で実際にどの書類が省略できるのか、そしてどんな方に特に効果があるのかを整理します。これから申請書類を準備する方に、参考にしていただける内容です。「マイナンバーを書けば全部楽になる」という単純な話ではないので、ご自身のケースに当てはめながら読んでみてください。
マイナンバーを記入すると、具体的にどの書類が省略できますか?
戸籍謄本・住民票・所得証明書といった、本人や家族の情報を確認するための書類が、原則不要になります。
日本年金機構は、マイナンバーによる情報連携の仕組みを利用して、他の行政機関が持つ戸籍・住民票・所得の情報を取得できます。これにより、請求者が自分で市区町村役場に出向いて書類を取り寄せる手間が省けます。窓口が開いている平日の日中に休みを取って役場に行く、といった負担がなくなるのは、体調に不安を抱えながら申請を進める方にとって、地味に大きなメリットです。
根拠になっているのは「番号法」という法律
この情報連携は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号、いわゆる番号法)に基づく仕組みです。日本年金機構も、この法律で定められた情報連携ができる機関の一つとして位置づけられています。
省略できるのは「添付書類」で、請求そのものが不要になるわけではない
マイナンバーによって省略できるのは、あくまで添付書類の準備です。年金請求書や診断書、病歴・就労状況等申立書といった、障害の状態を確認するための書類は、マイナンバーを記入しても別途作成・提出が必要です。
単身者の場合、マイナンバーの効果はどのくらいありますか?
単身者の場合、実務上そもそも住民票等の提出を求められないケースがほとんどで、マイナンバーによる負担軽減の効果は限定的です。
配偶者や子の加算がない方に必要とされているのは、「ご本人の生年月日を明らかにできる書類」だけです。単身者の方はすでに基礎年金番号で本人情報が日本年金機構に登録されているため、実務上は住民票や戸籍謄本の提出をあらためて求められることはほとんどありません。
独身なので、マイナンバーを書いてもあまり意味がないということでしょうか。
社労士そうですね。単身の方は、実務上もともと書類の提出を求められないことがほとんどなので、劇的に楽になるわけではありません。マイナンバーの効果が大きいのは、これからお話しする配偶者や子の加算があるケースです。
それでも記入しておいて損はない
単身者であっても、まれに追加の確認を求められる場合があります。マイナンバーを記入しておけば、そうした場合でも書類の追加提出を避けられる可能性が高くなります。手間としてはわずかですが、記入欄が空欄になっている請求書もよく見かけるため、忘れずに記入しておくとよいでしょう。
配偶者や子の加算がない方に必要なのは、「ご本人の生年月日を明らかにできる書類」だけです。これは戸籍謄本でなくても、住民票や住民票の記載事項証明書のいずれかで足ります。住民票であれば、本籍地に関わらずお住まいの市区町村役場ですぐに取得できるため、もともと大きな負担ではありませんでした。
配偶者や子の加算がある場合はどう変わりますか?

配偶者や子の加算がある方は、続柄や生計維持関係を確認するための複数の書類を、まとめて省略できます。
18歳到達年度末までの子(20歳未満で障害の状態にある子を含む)がいる方は、子との続柄を確認する戸籍謄本、生計維持関係を確認する世帯全員の住民票の写し、そして子の収入が確認できる書類が必要です。これらはいずれも、マイナンバーを記入することで添付を省略できます。
戸籍謄本は本籍地の市区町村役場でしか取得できないため、現住所と本籍地が離れている方にとっては、郵送でのやり取りが必要になり、思った以上に時間がかかることがあります。マイナンバーを記入しておけば、この手間そのものがなくなる点は、単身者の場合と比べてはっきりとした違いです。
| ケース | マイナンバー記入前の書類提出の実務上の扱い | マイナンバー記入による効果 |
|---|---|---|
| 単身者 | 実務上、住民票等の提出を求められないケースがほとんど | 効果は限定的(念のための備え) |
| 配偶者や子の加算がある方 | 戸籍謄本+世帯全員の住民票+配偶者・子の収入証明書が必要 | 上記すべてを省略できる |
| 20歳前傷病で所得制限の確認が必要な方 | 本人の所得証明書が必要 | 所得証明書を省略できる |
20歳前傷病で所得制限がある方にも効果がある
20歳前の傷病による障害基礎年金は、本人の所得によって支給が制限される仕組みがあります。この所得確認に使う所得証明書も、マイナンバーを記入することで添付を省略できます。
子が3人以上いる場合は別紙の記入が必要
子の加算の対象となる子が3人以上いる場合は、3人目以降について「加給年金額または子の加算額に係る別紙様式」への記入も必要です。マイナンバーで書類が省略できても、この様式の提出は別途必要になります。
マイナンバーを記入しても書類が必要になるのはどんなときですか?
マイナンバーによる情報連携ができない場合や、請求書の提出先が共済組合の場合は、従来どおり住民票等の添付が必要になります。
具体的には、マイナンバーの記入がない、または登録されている情報と一致しないなどで情報連携ができない場合や、過去5年分より前の住民票・所得証明書等が必要な場合は、原則どおり書類の添付が必要になります。
公務員の共済組合は扱いが異なることがある
年金請求書を年金事務所ではなく共済組合等に提出する場合は、別途、住民票等の添付書類が必要になることがあります。公務員の方で初診日が共済組合員期間中にある場合は、この点にも注意してください。
通帳のコピーは別の仕組みで省略される
受取先金融機関の通帳やキャッシュカードのコピーは、マイナンバーとは別の仕組みで省略できます。年金請求書に金融機関の証明を受けた場合や、公金受取口座を利用する場合は、添付が不要になります。マイナンバーの記入欄とは別の欄になるので、混同しないよう注意してください。
ごく稀に、本人の申し出により対象外になっているケースもある
配偶者からの暴力(DV)やストーカー行為等の被害を防ぐため、市区町村に申し出て、住民票や戸籍の附票について第三者への交付・閲覧を制限する「支援措置」を受けている方がいます。このような措置が講じられている場合、プライバシー保護の観点から、マイナンバーによる情報連携の対象外として扱われ、マイナンバーを記入していても従来どおり戸籍謄本等の提出をあらためて求められることがあります。心当たりのある方は、書類を準備する前に年金事務所へ確認しておくと安心です。
請求書にマイナンバーをどうやって記入すればいいですか?

年金請求書のマイナンバー記入欄に、12桁の個人番号をそのまま記入するだけです。
マイナンバーカードや通知カード、マイナンバーが記載された住民票の写しなどで番号を確認し、請求書の指定欄に記入します。窓口で提出する際は、本人確認書類の提示を求められることがあります。番号を間違えて記入すると情報連携がうまくいかず、結局書類の追加提出をお願いすることになるため、転記ミスがないか一度見直すことをおすすめします。
すでに登録済みかどうかは「ねんきんネット」で確認できる
過去に会社員として厚生年金に加入していた方などは、すでにマイナンバーが日本年金機構に登録されていることがあります。登録状況は、インターネットで自分の年金情報を確認できる「ねんきんネット」で確認できます。
記入欄を空欄のまま提出してしまうケースが多い
実務上、マイナンバー欄が空欄のまま提出されるケースを少なからず見かけます。書類を集める手間を減らせる欄なので、請求書を作成する際は忘れずに記入することをおすすめします。
よくある質問
Q. マイナンバーカードそのものを窓口に持っていく必要はありますか?
A. 窓口で本人確認のために提示を求められることがあります。添付書類としてコピーを貼り付ける必要はなく、番号を記入したうえで、確認のために持参するイメージです。
Q. 年金請求書を共済組合に提出する場合も同じ扱いですか?
A. 共済組合等に提出する場合は、別途、住民票等の添付書類が必要になることがあります。提出先によって扱いが異なる点に注意してください。
Q. 過去5年より前の住民票が必要と言われました。マイナンバーでは省略できないのですか?
A. 情報連携で取得できる住民票・所得証明書等は、直近5年分が目安です。それより古い期間の証明が必要な場合は、マイナンバーを記入していても、別途書類の準備をお願いすることがあります。
Q. マイナンバーを記入し忘れて提出してしまいました。後から追加できますか?
A. 提出後に追記することはできませんが、年金事務所から書類の追加提出を案内された段階で、あらためてマイナンバーを伝えられる場合があります。まずは窓口に相談してみてください。
Q. 診断書や病歴・就労状況等申立書も、マイナンバーで省略できますか?
A. できません。診断書や病歴・就労状況等申立書は、障害の状態を確認するための書類で、マイナンバーによる情報連携の対象外です。これらは従来どおり作成・提出が必要です。
Q. 障害厚生年金の場合も同じルールですか?
A. 同じルールです。障害基礎年金・障害厚生年金のいずれも、マイナンバーの記入による添付書類の省略の考え方は共通しています。提出先が年金事務所か共済組合かによって扱いが変わる点だけ、あわせて確認しておきましょう。
まとめ:マイナンバーの効果は「家族構成」によって変わる
マイナンバーを年金請求書に記入すると、戸籍謄本や住民票、所得証明書などの添付が原則不要になり、書類は実際に減ります。ただしその効果の大きさは、単身者かどうか、配偶者や子の加算があるかどうかによって変わってきます。
特に配偶者や子の加算がある方は、続柄や生計維持関係を確認する複数の書類がまとめて省略できるため、記入する価値は大きいといえます。単身者の方も、記入しておいて損はありません。書類を集める時間を、診断書の内容確認や病歴・就労状況等申立書の作成に充てられるようになります。
当事務所は香川県観音寺市に事務所を構え、全国どこからのご相談にも対応していますので、ご自身のケースでどの書類が必要になるか分からない場合は、お気軽にご相談ください。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(番号法)(e-Gov法令検索)
・障害基礎年金を受けられるとき(日本年金機構)
・障害厚生年金を受けられるとき(日本年金機構)
・DV等被害者の住民基本台帳事務における支援措置(総務省)
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