監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金・厚生年金保険障害認定基準・日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
シェーグレン症候群は障害年金の対象になり得る指定難病ですが、専用の認定基準の節が設けられていないため、実際に現れている症状(関節炎・間質性肺炎・神経障害・強い倦怠感等)に応じて、対応する認定基準の節を準用して審査されます。
ドライアイ・ドライマウスといった乾燥症状だけでは対象になりにくく、日常生活や就労にどれだけ支障が出ているかが審査の中心になります。
関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど他の膠原病と合併しているケースも多く、その場合はどの症状を中心に診断書をまとめるかが認定を左右する重要なポイントになります。
「シェーグレン症候群といえば、目や口が乾く病気」というイメージから、「この程度で障害年金の対象になるとは思えない」と考えている方は少なくありません。実際、乾燥症状だけを見れば、日常生活への影響は分かりにくいかもしれません。周囲からも「ドライアイなら目薬をさせばいいのでは」と軽く受け止められがちで、本当のつらさが伝わりにくいと感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、シェーグレン症候群は乾燥症状だけにとどまらず、関節や肺、神経、腎臓など全身に及ぶ症状を伴うことがある病気です。この記事では、シェーグレン症候群がどのような基準で審査されるのか、そして認定を左右するポイントを社労士の視点から解説します。
シェーグレン症候群は、障害年金の対象になりますか?
シェーグレン症候群は、障害年金の対象になり得る指定難病(指定難病53)です。ただし、疾患名そのものを対象とした専用の認定基準の節は設けられていません。
障害認定基準には、糖尿病や心疾患のように疾患名を直接対象とした節が多数ありますが、シェーグレン症候群のような全身性の自己免疫疾患は、こうした個別の節には含まれていません。そのため、実際に現れている症状の種類に応じて、対応する認定基準の節を準用して審査される仕組みになっています。この仕組みを知らないまま「シェーグレン症候群」という病名だけで申請しようとすると、どの基準で判断してもらえばよいのか分からず、手続きが進めにくくなることがあります。
「いわゆる難病」としての取り扱い
障害認定基準第1章第18節「その他の疾患による障害」には、いわゆる難病の取り扱いについての定めがあります。発病時期が不明確で、臨床症状が複雑多岐にわたる疾患について、客観的所見に基づいた日常生活能力の程度を十分考慮して総合的に認定するとされており、全身に症状が及ぶ場合、シェーグレン症候群もこの枠組みで審査されることがあります。
難病医療費助成と障害年金は別の制度です
指定難病として医療費助成を受けていることと、障害年金の対象になることは別の制度です。医療費助成の対象になっていない場合(症状が軽症とされる場合等)でも、障害の状態が基準を満たせば障害年金を申請できます。反対に医療費助成を受けている場合でも、障害年金の等級には別途の審査が必要になります。
「乾燥症状だけ」でも申請できますか?
ドライアイやドライマウスといった乾燥症状だけでは、障害年金の対象になりにくいのが実情です。日常生活や就労にどれだけ具体的な支障が出ているかが審査の中心になります。
障害年金で問われるのは「症状があるかどうか」ではなく「その症状によって生活がどれだけ制限されているか」です。目や口の乾燥だけであれば、日常生活動作への影響が小さいと判断されやすい傾向があります。難病情報センターの解説でも、シェーグレン症候群は乾燥症状のみで経過する群と、臓器病変を伴う群、悪性リンパ腫等を発症する群に分かれるとされており、症状の広がり方によって生活への影響も大きく異なります。
対象になりやすいのは全身性の症状
関節炎による可動域制限、間質性肺炎による呼吸困難、末梢神経障害によるしびれや麻痺、強い倦怠感で日常生活が著しく制限されている場合など、乾燥症状以外の全身症状が中心のケースの方が、認定の対象になりやすい傾向があります。
| 対象になりにくい傾向 | 対象になりやすい傾向 | |
|---|---|---|
| 症状の範囲 | 乾燥症状のみ | 関節・肺・神経等の全身症状を伴う |
| 審査で使う基準 | 該当する節がなく判断しにくい | 肢体・呼吸器・神経系統等の節を準用 |
| 生活への影響 | 比較的軽微とされやすい | 著しい制限として評価されやすい |
関節炎や間質性肺炎などの合併症がある場合、どう審査されますか?

関節の痛みや動かしにくさが中心であれば「肢体の障害」の節、間質性肺炎による呼吸困難が中心であれば「呼吸器疾患による障害」の節というように、最も生活に影響している症状に応じて、それぞれの専門の節が準用されます。
例えば、関節リウマチのような症状を伴う場合は、関節の腫れや変形、可動域の制限の程度をもとに肢体の障害の基準で判断されます。間質性肺炎を合併している場合は、呼吸機能検査の結果や呼吸困難の程度をもとに呼吸器疾患の基準で、遠位尿細管性アシドーシスなどの腎症状がある場合は腎疾患の基準で、それぞれ判断されます。末梢神経障害によるしびれや麻痺が強い場合は、神経系統の障害の基準が使われることもあります。
複数の症状がある場合は「総合認定」も
関節症状と肺の症状など、複数の障害が重なっている場合は、それぞれの障害の程度を個別に評価したうえで、全体としての障害の程度を総合的に認定する「総合認定」という考え方が用いられることもあります。単一の症状だけでは基準に届かなくても、複数の症状が組み合わさることで、より上位の等級に認定される可能性もあります。
関節の痛みと息切れの両方があるのですが、どちらの症状で申請すればいいのでしょうか?
社労士両方の症状を医師に伝えたうえで、より生活への影響が大きい症状を中心に整理していくのが一般的です。場合によっては、両方の障害を総合的に評価してもらうことも考えられます。今の症状を詳しくうかがいながら、一緒に整理していきましょう。
他の膠原病と合併している場合、認定はどう変わりますか?
全身性エリテマトーデスや関節リウマチなど、他の膠原病と合併している「二次性シェーグレン症候群」の場合も、現れている症状に応じて対応する認定基準の節で審査される点は変わりません。
シェーグレン症候群は、単独で発症する「一次性」と、他の自己免疫疾患に伴って起こる「二次性」に分けられます。二次性の場合、複数の疾患による症状が重なり合っているため、どの症状がどの疾患に由来するのかを整理して伝えることが、審査をスムーズに進めるうえで重要になります。実際に、全身性エリテマトーデスとシェーグレン症候群を合併し、関節症状や息切れを中心に審査を受けて認定に至った事例も報告されています。
診断書は主要な症状を中心にまとめる
複数の症状がある場合でも、診断書はすべての症状を網羅的に書けばよいというものではありません。日常生活に最も大きな影響を与えている症状を中心に、具体的なエピソードとともにまとめてもらうことが、審査する側にも伝わりやすい診断書につながります。
診断書には、どんなことを書いてもらえばいいですか?

乾燥症状だけでなく、関節痛や倦怠感、呼吸困難、しびれなど、日常生活や仕事にどのような支障が出ているかを具体的に診断書へ反映してもらうことが重要です。
「疲れやすい」「関節が痛い」というだけでなく、家事や仕事のどんな場面でどの程度困っているのかを、具体的なエピソードとして伝えることが大切です。症状には日によって波があることも多いため、調子の悪い時期の状態も含めて伝えておくとよいでしょう。乾燥症状についても、目薬や保湿剤が手放せない、食事の際に水がないと飲み込みにくいといった具体的な支障があれば、あわせて伝えておくと診断書の説得力が増します。
よくある質問
Q. 一次性と二次性で、認定のされやすさに違いはありますか?
A. 一次性か二次性かという分類そのものが審査結果を直接左右するわけではありません。いずれの場合も、実際に現れている症状の程度が重視されます。二次性の場合は、合併している疾患による症状もあわせて総合的に評価されることがあります。
Q. 悪性リンパ腫を合併した場合はどうなりますか?
A. 悪性リンパ腫を発症した場合は、障害認定基準の「悪性新生物による障害」の節で審査される可能性があります。合併症の種類によって適用される節が変わる点に注意が必要です。シェーグレン症候群は他の膠原病と比べてリンパ腫のリスクがやや高いとされているため、定期的な経過観察も重要になります。
Q. 症状に波があり、調子が良い日もあります。それでも申請できますか?
A. 症状に波があること自体は珍しくありません。調子の良いときだけでなく、悪いときの状態も含めて医師に伝えておくことで、実態に近い診断書を作成してもらいやすくなります。
Q. 何科の医師に診断書を書いてもらえばいいですか?
A. 主に治療を受けている診療科(膠原病内科・リウマチ科等)の医師に依頼するのが一般的です。ただし、呼吸器や腎臓など特定の臓器の症状が中心の場合は、その専門医に依頼することもあります。
Q. 自分の症状で対象になるか、事前に相談できますか?
A. ご相談いただけます。どの症状を中心に、どの認定基準を使って進めるべきかは個々の状況によって異なるため、状況をうかがいながら一緒に整理していきます。
まとめ:どの症状を中心に伝えるかがポイント
シェーグレン症候群は障害年金の対象になり得る指定難病ですが、専用の認定基準の節がないため、現れている症状(関節炎・間質性肺炎・神経障害・強い倦怠感等)に応じて、対応する認定基準の節を準用して審査されます(障害認定基準第1章第18節)。乾燥症状だけでは対象になりにくく、全身性の症状によって日常生活や就労にどれだけ支障が出ているかが審査の中心になります。他の膠原病と合併しているケースも多く、その場合はどの症状を中心に診断書をまとめるかが認定を左右する重要なポイントになります。
「乾燥症状くらいで申請なんて」とためらわず、関節や呼吸、しびれなど他の症状も含めて、生活全体への影響を一度整理してみることをおすすめします。どの症状を中心に、どの認定基準を使って進めるのが最も実態に近い評価につながるかは、専門家と一緒に考えることでより明確になります。香川県観音寺市に事務所を構え、全国どこからのご相談にも対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
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