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筋ジストロフィーでも障害年金は申請できる?

筋ジストロフィー1

監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法・日本年金機構の障害認定基準・難病情報センターの公表情報に基づき作成しています。

この記事の結論

筋ジストロフィーは障害年金の対象になる疾患で、四肢に及ぶ運動機能障害は障害認定基準第7節「肢体の機能の障害」として一括で評価されます。

認定のポイントは、関節可動域や筋力の数値だけでなく、着替え・歩行・食事といった日常生活動作をどれだけ自分でできるかです。

呼吸機能や心機能に合併症がある場合は、肢体の評価とあわせて呼吸器・心疾患の認定基準も参照され、より重い等級になることがあります。

「筋ジストロフィーは進行性の病気だから、障害年金を申請しても意味がないのでは」と感じている方もいらっしゃいます。筋ジストロフィーは国の指定難病(指定難病113)で、全国に約25,400人の患者さんがいるとされる、骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性の筋疾患です。

デュシェンヌ型・ベッカー型・肢帯型・顔面肩甲上腕型・筋強直性ジストロフィーなど、いくつもの病型がありますが、いずれも障害年金の対象になり得ます。

この記事では、社会保険労務士の視点から、筋ジストロフィーで障害年金の対象になるケースと、申請にあたって押さえておきたいポイントを整理します。診断されたばかりの方はもちろん、症状の進行を感じ始めた方にも、参考にしていただける内容です。「進行性の病気だから」と申請をあきらめる前に、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次

筋ジストロフィーは障害年金の対象になりますか?

対象になります。筋ジストロフィーによる四肢の運動機能障害は、障害認定基準第7節「肢体の機能の障害」として評価されます。

障害認定基準では、肢体の障害が上肢・下肢などの広範囲にわたる場合(脳血管障害、脊髄損傷、進行性筋ジストロフィー等)には、上肢・下肢・体幹脊柱をそれぞれ個別に評価する通常の基準ではなく、「第4 肢体の機能の障害」として一括で認定すると定められています。筋ジストロフィーは、この規定の中に病名がそのまま挙げられている数少ない疾患の一つです。

病型の違いより「今の生活の様子」が重視される

デュシェンヌ型のように幼少期から進行するタイプもあれば、顔面肩甲上腕型や筋強直性ジストロフィーのように成人になってから発症し、進行がゆるやかなタイプもあります。認定基準の作りとして、どの病型かということよりも、関節可動域・筋力・巧緻性・速さ・耐久性を踏まえた「今の日常生活動作の状態」が総合的に見られる点は共通しています。

障害基礎年金・障害厚生年金どちらも対象

初診日にどの年金制度に加入していたかによって、支給される年金が変わります。国民年金加入中であれば国民年金法第30条に基づく障害基礎年金、厚生年金加入中であれば厚生年金保険法第47条に基づく障害厚生年金が支給の対象です。

筋ジストロフィーは根本的な治療法が確立されていない病気ですが、これは障害年金の申請にとって不利になる材料ではありません。むしろ、治療によって完治が見込めない状態であることは、長期にわたって生活や労働に支障が生じることの裏づけにもなります。

手足以外の症状(呼吸・心臓)も評価されますか?

筋ジストロフィー2

評価されます。呼吸機能や心機能の合併症がある場合は、肢体の評価とあわせて呼吸器疾患・心疾患の認定基準も参照されます。

筋ジストロフィーは骨格筋だけでなく、呼吸筋障害による呼吸不全や、心筋障害による不整脈・心不全を合併することが多い全身性の疾患です。難病情報センターの重症度分類でも、運動機能(modified Rankin Scale)に加えて、食事・栄養、呼吸、循環のそれぞれのスコアが用いられており、手足の動きだけでなく複数の側面から重症度が判断されています。

手足はまだ自分で動かせるので、対象にならないかもしれないと思っていました。

社労士

手足の状態だけで判断する必要はありません。呼吸機能検査や心臓の検査結果も、等級判定の材料になります。定期検査の数値を確認させてください。

複数の障害は「併合認定」で評価されることがある

肢体の障害と呼吸器・心臓の障害の両方が一定以上ある場合は、それぞれを組み合わせて評価する「併合認定」が検討されることがあります。この場合、診断書も複数の様式が必要になることがあります。

嚥下障害や不整脈も見逃されやすい

筋強直性ジストロフィーなどでは、嚥下機能障害や心伝導障害(不整脈)を合併することがあります。手足の症状ばかりに気を取られず、飲み込みにくさや動悸といった変化があれば、主治医にきちんと伝えておくことが大切です。

何級に認定される可能性がありますか?

日常生活動作の制限の程度によって1級から3級まで認定される可能性があり、四肢に障害が及ぶほど上位等級になりやすい傾向があります。

障害認定基準第7節「第4 肢体の機能の障害」では、次のように等級の目安が示されています。

等級障害の状態
1級一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの/四肢の機能に相当程度の障害を残すもの
2級一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの/四肢に機能障害を残すもの
3級一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの

「機能障害」の程度は日常生活動作から判断される

認定基準では、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」に近い状態を「用を全く廃したもの」、動作の多くが「一人で全くできない場合」またはほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」を「機能に相当程度の障害を残すもの」としています。数値だけでなく、実際の生活の様子が重視されます。

障害基礎年金と障害厚生年金の等級の違い

障害基礎年金は1級・2級のみで、3級はありません。初診日に国民年金第1号被保険者(自営業・専業主婦など)だった方は、3級相当の状態でも年金が支給されない場合がある点に注意が必要です。

初診日はいつとして扱われますか?

「よく転ぶ」「歩き方がおかしい」といった症状で最初に医療機関を受診した日が、初診日になるのが原則です。

筋ジストロフィーと診断される前に、整形外科や小児科、内科を受診しているケースが多くあります。診断名がまだ確定していなくても、その症状で最初に受診した日が初診日として扱われます。「筋ジストロフィーだと分かったのは最近だから、初診日も最近のはず」と思い込まないよう注意してください。

子どもの頃に発症した場合は「20歳前傷病」になることも

デュシェンヌ型・福山型先天性筋ジストロフィーなど、幼少期に発症する病型では、初診日が20歳より前になることが少なくありません。この場合、保険料の納付要件を問わない「20歳前傷病」による障害基礎年金の対象になります。

古い受診歴のカルテが残っていない場合

幼少期の受診から年数が経っていると、当時の医療機関でカルテが残っていないことがあります。母子健康手帳の記録や、その後受診した病院への紹介状などが、初診日を特定する手がかりになることがあります。

診断書はどの様式を使えばいいですか?

筋ジストロフィー3

基本となるのは「肢体の障害用」の診断書で、⑱欄「日常生活における動作の障害の程度」が重要な判断材料になります。

診断書を依頼する際は、関節可動域や筋力の検査数値だけでなく、着替え・歩行・階段の上り下りといった具体的な動作がどの程度自分でできるかを、あらかじめ整理して主治医に伝えることが大切です。「以前はできていたが今はできない」という変化も、進行性の病気であることを示す重要な情報になります。

呼吸・心臓の合併症がある場合は追加の診断書も

呼吸機能や心機能に一定以上の障害がある場合は、肢体の障害用の診断書に加えて、呼吸器疾患用または循環器(心疾患)用の診断書もあわせて必要になることがあります。

進行性の病気であることを申立書で伝える

筋ジストロフィーは進行性の病気のため、初診時からどのように生活機能が低下してきたかを、病歴・就労状況等申立書で時系列に沿って伝えることが重要です。診断書の内容と矛盾がないよう、あわせて確認しておきましょう。

よくある質問

Q. 「よく転ぶ」「歩き方がおかしい」といった症状での受診も、初診日として認められますか?

A. 認められます。初診日は病名が確定した日ではなく、その症状で最初に医療機関を受診した日です。

Q. 子どもの頃に発症した場合、20歳前傷病の障害基礎年金の対象になりますか?

A. 対象になります。20歳になった時点で障害等級に該当していれば、保険料の納付要件を問わない20歳前傷病による障害基礎年金が支給されます。

Q. 呼吸器を使うようになったら、等級は上がりますか?

A. 上がる可能性があります。呼吸機能の低下は生活への支障が大きい要素として、肢体の障害の評価とあわせて考慮されます。

Q. 進行がゆるやかなタイプ(顔面肩甲上腕型等)でも申請できますか?

A. 申請できます。進行の速さではなく、現時点での日常生活動作の制限の程度で判断されます。

Q. 筋力トレーニングを避けるよう指導されています。これは診断書に影響しますか?

A. 直接の判定材料ではありませんが、過度な運動を避ける必要があるほどの筋力低下があることは、病状の重さを示す一つの背景として申立書に記載しておくとよいでしょう。

Q. 更新のときに注意することはありますか?

A. 筋ジストロフィーは進行性の病気なので、多くの場合、更新のたびに症状は変化していきます。前回の診断書時点より生活動作がどう変わったかを、正確に伝えることが重要です。

まとめ:筋ジストロフィーの障害年金は「日常生活動作」がカギ

筋ジストロフィーは、障害認定基準の中に病名が明記されている数少ない疾患で、四肢に及ぶ運動機能障害は「肢体の機能の障害」として一括で評価されます。国民年金法第30条・厚生年金保険法第47条の支給要件を満たしていれば、指定難病であることは何のマイナスにもなりません。

手足の動きだけでなく、呼吸や心臓の合併症も含めて総合的に評価される病気だからこそ、日常生活の様子を丁寧に整理して伝えることが大切です。病型によって発症年齢も進行の速さも大きく異なるため、ご自身のケースに当てはめて考えることをおすすめします。

当事務所は香川県観音寺市に事務所を構え、全国どこからのご相談にも対応していますので、診断書の様式選びや初診日の整理でお困りの際は、お気軽にご相談ください。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。

参考資料

国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
厚生年金保険法 第47条(e-Gov法令検索)
筋ジストロフィー(指定難病113)診断・治療指針(難病情報センター)
障害認定基準 第7節 第4「肢体の機能の障害」(日本年金機構)

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この記事を書いた人

請川 智章のアバター 請川 智章 社会保険労務士・障害年金専門

香川県観音寺市を拠点とする障害年金専門の社会保険労務士
登録番号第37250012号 香川県社会保険労務士会会員
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