監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・日本年金機構の障害年金と国民年金保険料に関する公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
受診歴がないままでは申請できません。障害年金には医師の診断書が必要で、まず受診することが出発点です。
受診歴がなければ、これから初めて受診する日が初診日になり、20歳前の初診でも障害認定日は原則その1年6か月後です(国民年金法第30条の4)。
20歳以降が初診日になると保険料の納付要件が初診日の前日で判定されるため、未納がある方は受診前に納付状況を確認しましょう。
「長年ひきこもっていて、病院に一度も行ったことがない」「本人が外に出られないけれど、障害年金は使えないのだろうか」。ご家族からこうしたご相談をいただくことが少なくありません。
この記事では、受診歴がない場合に申請までに何が必要か、初めての受診が初診日になると何が変わるか、保険料の未納がある場合の注意点、本人が病院に行けないときに家族ができることを、法律と日本年金機構の情報をもとに整理します。
ひきこもりで受診歴がなくても、障害年金は申請できますか?
受診歴がないままでは申請できません。医師の診察を受け、診断書を作成してもらうことが必要です。
対象になるのは「ひきこもり」の背景にある病気
「ひきこもり」は状態を表す言葉で、病名ではありません。障害年金の対象になるのは、その背景にあるうつ病や統合失調症、発達障害などの病気による障害です。どの病気によるものかは医師が診察して判断するため、受診がすべての出発点になります。
まずは過去の受診歴がないか確かめる
「受診歴がない」と思っていても、学生時代に心療内科や小児科を一度だけ受診していたというケースがあります。初診日は、障害の原因となった病気で初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。母子健康手帳や古い診察券、お薬手帳などを家族で確認してみましょう。
初めて受診した日が初診日になると、何が変わりますか?
初めて受診した日の年齢と加入していた制度によって、受け取れる年金の種類と、保険料の納付要件の有無が決まります。
初診日の時期による違い
| 初診日の時期 | 対象の年金 | 保険料の納付要件 |
|---|---|---|
| 20歳前(年金未加入) | 20歳前傷病による障害基礎年金 | 不要(本人の所得制限あり) |
| 20歳以降・国民年金加入中 | 障害基礎年金(1級・2級) | 必要(初診日の前日で判定) |
| 会社員として厚生年金加入中 | 障害厚生年金(1〜3級) | 必要(初診日の前日で判定) |
20歳前の初診でも「1年6か月」は待つ
障害の程度を判断する障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を過ぎた日です(国民年金法第30条)。20歳前に初診日がある場合も、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日、障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日で判断されます(同法第30条の4)。これから初めて受診する場合、請求できるのは原則1年6か月後からです。

息子は20代後半で、病院には一度も行っていません。今から受診しても間に合うのでしょうか?
社労士間に合います。ただ、受診の前に年金の納付状況を確認しておくことが大切です。一緒に順番を整理しましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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保険料を払っていない期間があると、どうなりますか?
20歳以降が初診日になる場合、初診日の前日時点で保険料の納付要件を満たしていないと、障害年金は受け取れません。
納付要件は「初診日の前日」で判定される
納付要件は、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、納付済期間と免除期間をあわせて3分の2以上あることです(国民年金法第30条)。初診日が令和18年3月末日までで65歳未満なら、直近1年間に未納がなければよいという特例もあります。受診した後に未納分を納めても、要件の判定には間に合いません。
免除・納付猶予は受給資格期間に算入される
日本年金機構は、免除や納付猶予の期間を障害基礎年金の受給資格期間に算入するとしています。免除等は「申請時点から2年1カ月前までの期間」についてさかのぼって申請でき、機構も申請が遅れると障害年金を「受けられない恐れがあります」と注意を促しています。親と同居している場合、免除の審査には世帯主の所得も含まれますが、50歳未満の納付猶予は本人と配偶者の所得で審査されます。未納がある方は、受診の前に年金事務所で納付状況を確認しましょう。
本人が病院に行けない場合、家族は何ができますか?
受診先探しや医師への状況説明、申請書類の準備は、家族が担うことができます。ただし診断書は、本人が医師の診察を受けて作成されます。
受診につなげるための選択肢
外出が難しい場合は、往診や訪問診療を行う医療機関を探す方法があります。地域の精神保健福祉センターなどに家族が先に相談し、受診のきっかけをつくる方法もあります。ただし、医師の診療を受けていない相談だけでは、初診日にはなりません。

家族の記録が申請の材料になる
ひきこもりの期間が長いと、本人が自分の状態を医師に伝えにくいことがあります。食事や入浴、外出、家族との会話など、日常生活でどんな援助をしているかを家族がメモにまとめ、受診時に医師へ渡しましょう。そのメモは、病歴・就労状況等申立書を作るときの材料にもなります。
よくある質問
Q. 何年もひきこもっていた分を、さかのぼって受け取れますか?
A. 受診歴がない期間の分を、さかのぼって受け取ることは難しいです。さかのぼる請求には障害認定日時点の診断書が必要だからです。初めての受診から1年6か月後以降に請求すれば、請求した時点の状態で審査されます。
Q. 働いた経験が一度もなくても、障害年金は受け取れますか?
A. 受け取れる可能性があります。障害基礎年金は国民年金の制度なので、就労経験の有無は要件ではありません。初診日の要件、保険料の納付要件、障害の状態の3つを満たしているかで判断されます。まずは初診日がいつになるかを確認しましょう。
Q. 20歳前傷病の障害基礎年金には、所得制限がありますか?
A. あります。前年の本人の所得が4,918,000円を超えると全額、3,858,000円を超えると2分の1が支給停止になります。扶養親族がいる場合は限度額が加算されます。親の所得ではなく本人の所得で判断されます。
Q. 家族だけで年金事務所に相談に行ってもよいですか?
A. 本人の委任状があれば、家族が代わりに相談できます。日本年金機構は「本人の委任状があればどなたでもご相談ができます」としています。持ち物を事前に年金事務所へ確認し、基礎年金番号がわかる書類も用意しましょう。
まとめ:受診の前に「初診日」と「納付状況」を確認する
受診歴がない場合は、これからの受診が障害年金の出発点になります。まずは過去に受診したことがないかを家族で確かめ、20歳以降の初診になりそうなら、受診の前に保険料の納付状況を確認してください。本人が外に出られない状態でも、家族が先に動き出すことはできます。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
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医療機関の受診歴が少なくても認定|ADHD・知的障害の生活困難が評価され障害年金2級|愛媛県
参考資料
・国民年金法 第30条・第30条の4(e-Gov法令検索)
・障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)
・国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(日本年金機構)
・国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間(日本年金機構)
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