監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法・日本年金機構の障害認定基準に基づき作成しています。
この記事の結論
多系統萎縮症でも、ふらつきや手足の動きにくさなどで日常生活や仕事に制限があれば、障害年金を申請できます。
手足や体幹に広く症状が出る場合は、障害認定基準の「肢体の機能の障害」として日常生活動作から判断されます。
進行性の病気のため、受給後に重くなったときは額改定請求ができ、症状が明らかに増進した一定の場合は1年を待たずに請求できます(国民年金法第34条)。
「ふらつきがひどくなり、仕事を続けられなくなった」「立ちくらみや排尿の問題もあって、外出が難しい」。多系統萎縮症は症状が少しずつ重なっていくため、どの時点で、どう申請すればよいか迷う方が少なくありません。
この記事では、多系統萎縮症で障害年金を申請できるか、審査に使われる基準と診断書、症状が重なる場合の評価、進行したときの手続きを、国の資料をもとに整理します。
多系統萎縮症でも、障害年金は申請できますか?
申請できます。多系統萎縮症によって日常生活や仕事に制限があれば、障害年金の対象になります。
難病は「日常生活能力」を見て総合的に認定される
障害年金は病名ではなく、障害の状態が等級に当てはまるかで判断されます(国民年金法第30条・厚生年金保険法第47条)。障害認定基準は、いわゆる難病について「客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定する」としています。3級は、初診日に厚生年金に加入していた方の障害厚生年金にだけあります。
初診日は、最初の症状で受診した日
初診日は、多系統萎縮症と診断された日ではなく、その症状で初めて医師の診療を受けた日です。ふらつきで内科を、排尿の問題で泌尿器科を受診したのが最初なら、その日が初診日になる場合があります。診断までの受診歴を時系列で書き出しておきましょう。
多系統萎縮症は、どの基準で審査されますか?
手足や体幹に広く症状が出ている場合は、「肢体の機能の障害」として審査されます。障害認定基準は、肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる場合を「肢体の機能の障害」として認定するとしています。
| 主な症状 | 審査の基準 | 使う診断書 |
|---|---|---|
| ふらつき・手足の動きにくさ・動作の遅さ | 肢体の機能の障害(日常生活動作で判断) | 肢体の障害用 |
| 手足に異常がなく、歩行時のふらつきが中心 | 平衡機能の障害(脳性のものも対象) | 聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用 |
| ろれつが回らない・飲み込みにくい | 言語機能・そしゃく嚥下機能の障害 | 同上 |
| 立ちくらみ・排尿の問題など | 日常生活への影響として総合的に考慮 | 診断書の備考欄や申立書で補う |

「日常生活における動作の状態」が判断の中心
肢体の機能の障害は、「関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する」とされています。歩く、立ち上がる、着替える、食事をするといった動作が、補助具や介助なしでどこまでできるかが、診断書に具体的に書かれていることが大切です。
まだ杖をついて歩けますが、ふらついて何度も転んでいます。それでも申請できますか?
社労士申請できます。歩けるかどうかだけでなく、転倒の頻度や介助が必要な場面まで、日常の様子を具体的に伝えることが大切です。一緒に整理しましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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症状が重なると、等級はどう判断されますか?
複数の障害がある場合は、それぞれを合わせて等級を判断する仕組みがあります。多系統萎縮症のように症状が重なる病気では、全体像を伝えることが大切です。
脳の病気は「全体像から総合的に判断」される
障害認定基準の神経系統の障害は、脳の器質障害について「原則としてそれらの諸症状を総合し、全体像から総合的に判断して認定する」としています。また併合等認定基準は、2つ以上の障害がある場合の認定方法を定めており、言語の障害と手足の障害のように部位が異なる場合は、合わせて評価されます。
自律神経の症状は、申立書で具体的に伝える
立ちくらみで外出先で座り込んでしまう、排尿の問題で長時間の外出ができないといった症状は、肢体の診断書だけでは伝わりにくい部分です。診断書の備考欄への記載を主治医に相談し、病歴・就労状況等申立書でも生活への影響を具体的に書きましょう。
受給後に症状が進んだら、どうすればいいですか?
等級を上げてもらうための「額改定請求」ができます(国民年金法第34条、厚生年金保険法第52条)。
原則は1年後、明らかな増進なら待たずに請求できる
額改定請求は、原則として受給権を得た日や障害の程度の診査を受けた日から1年を経過した日後でなければできません。ただし、障害の程度が増進したことが明らかな場合として厚生労働省令で定める場合は、1年を待たずに請求できます。進行が早いときは、早めに確認しましょう。

まだ受給していない方は、早めの請求を
今の状態で請求する事後重症請求は、請求した月の翌月分からの支給になり、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります(国民年金法第30条の2)。進行性の病気だからこそ、症状が軽いうちから準備を始めておくと安心です。
よくある質問
Q. 車椅子を使っていなくても、2級になりますか?
A. 車椅子を使っているかどうかだけで等級は決まりません。肢体の機能の障害は、日常生活における動作の状態から総合的に認定されます。杖や手すりが欠かせない、転倒が多く介助が必要といった実態を、診断書に正確に反映してもらいましょう。
Q. 介護保険のサービスを使っていても、障害年金は請求できますか?
A. 請求できます。介護保険と障害年金は別の制度です。多系統萎縮症は介護保険の特定疾病に含まれるため、40歳以上65歳未満でも要介護認定を受けられます。介護サービスを使っている様子は、日常生活の制限を伝える材料にもなります。
Q. 多系統萎縮症で働いていても、申請できますか?
A. 申請できます。障害厚生年金の3級は、労働が著しい制限を受ける程度が目安です。歩行や手作業の支障で業務を減らしてもらっている、通勤に付き添いが必要といった実態があれば、診断書と申立書で具体的に伝えることが大切です。
Q. 日によって症状に波がある場合は、どう伝えればいいですか?
A. 悪い日の様子も含めて、具体的に伝えてください。診断書は現症日の状態が中心ですが、立ちくらみで動けない日や転倒が増える時期があれば、その頻度を主治医に伝え、病歴・就労状況等申立書でも書き分けると実態が伝わりやすくなります。
まとめ:多系統萎縮症は「動作の実態」と「早めの準備」が大切
多系統萎縮症でも障害年金は申請でき、手足や体幹の症状は日常生活動作から判断されます。まずは最初に症状で受診した時期を確かめ、歩行や身の回りの動作、立ちくらみなどの困りごとを書き出すところから始めてみてください。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
この記事に関連する受給事例
脊髄小脳変性症で障害年金が2級から1級へ|症状進行に伴う額改定請求が認められた事例|愛媛県
参考資料
・国民年金法 第30条・第30条の2・第34条(e-Gov法令検索)
・厚生年金保険法 第47条・第52条(e-Gov法令検索)
・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(肢体の障害・平衡機能の障害・神経系統の障害・その他の疾患による障害)(日本年金機構)
・特定疾病の選定基準の考え方(厚生労働省)
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