監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は日本年金機構の障害認定基準・厚生年金保険法施行令に基づき作成しています。
この記事の結論
人工膀胱・尿路変向術(尿路変更術)を受けた場合、障害年金は原則として障害厚生年金3級に認定されます。
3級は障害厚生年金だけの等級のため、国民年金のみ加入の方は2級に該当するかどうかの確認が欠かせません。
人工肛門も併せて造設している場合や、完全排尿障害の状態にある場合は2級に認定されます。
手術後の生活が大きく変わる中で、障害年金がどの等級になるのか、そもそも自分は対象になるのかと不安を感じている方は少なくありません。人工膀胱・尿路変向術(尿路変更術)は、日本年金機構の障害認定基準で明確に等級が定められている数少ない障害の一つです。
この記事では、認定される等級の基本、2級となる条件、障害認定日の考え方、国民年金だけの方の扱いまで、社会保険労務士の視点から順に整理してお伝えします。
人工膀胱・尿路変向術を受けたら、障害年金は何級になりますか?
人工肛門もしくは新膀胱を造設した方、または尿路変更術を受けた方は、障害厚生年金3級に認定されます。
これは日本年金機構の障害認定基準に明記された取り扱いで、手術を受けたという事実そのものが認定の基準になります。日常生活にどの程度支障が出ているかを細かく問われる障害と違い、判断がしやすい障害だといえます。
尿路変向術にはどんな種類がありますか?
尿路変向術(尿路変更術)には、回腸の一部を使って尿の出口を作る回腸導管造設術、尿管を直接皮膚に出す尿管皮膚瘻造設術、腸で新しい膀胱を作る自排尿型新膀胱造設術(新膀胱)などの種類があります。
人工膀胱(新膀胱)と尿路変更術で、扱いは違いますか?
3級と認定される点は同じです。ただし障害認定日の数え方は異なり、尿路変更術(回腸導管・尿管皮膚瘻)は手術から6ヶ月を経過した日、新膀胱造設はその造設日そのものが認定日になります。
どのような場合に2級と認定されますか?

人工肛門もあわせて造設している場合、または完全排尿障害(カテーテル留置や自己導尿を常時必要とする状態)にある場合は、2級に認定されます。
尿路変向術だけを受けた方は3級が基本ですが、もう一つの人工肛門も抱えている方や、常にカテーテルの管理が欠かせない方は、生活への支障がより大きいと判断され、2級に引き上げられます。ご自身の状態がどちらに近いか、次の表で確認してみてください。
| 3級 | 2級 | |
|---|---|---|
| 該当する状態 | 人工肛門・新膀胱・尿路変更術のいずれか一つ | 人工肛門+新膀胱(尿路変更術)の両方/人工肛門+完全排尿障害 |
| 加入していた年金 | 厚生年金のみ対象 | 国民年金・厚生年金どちらも対象 |
| 根拠 | 厚生年金保険法施行令別表第1 | 国民年金法施行令別表・厚生年金保険法施行令別表第1 |
人工肛門と人工膀胱の両方があるのですが、この場合は2級になるということでしょうか。
社労士はい、人工肛門と新膀胱(尿路変更術)を両方造設されている場合は、2級として認定されます。診断書には両方の造設日を正確に記載してもらいましょう。
完全排尿障害とはどのような状態ですか?
完全排尿障害とは、自分の意思で排尿をコントロールできず、カテーテルを体内に留置しているか、自己導尿を1日に何度も行わなければならない状態を指します。人工肛門と合わせてこの状態にある場合に2級となります。
がんが原因の場合、さらに上位等級になることはありますか?
あります。全身状態や術後の経過、原疾患の進行状況などを総合的に判断し、2級よりさらに上位の等級に認定される場合があります。膀胱がんなどが原因で全身の消耗が強い場合は、診断書に具体的な症状を漏れなく記載することが重要です。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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障害認定日はいつになりますか?
尿路変更術や人工肛門の造設は手術から6ヶ月を経過した日、新膀胱の造設はその造設日そのものが、それぞれ障害認定日になります。
障害認定日とは、障害年金の対象になるかどうかを判断する基準日のことです。通常は初診日から1年6ヶ月後ですが、人工肛門・新膀胱・尿路変更術にはこの原則より早い特例が設けられています。
尿路変更術・人工肛門の場合、なぜ6ヶ月後になるのですか?
造設直後は身体が新しい排泄方法に慣れておらず、状態が安定していないためです。手術から6ヶ月経過した時点で、生活への影響がある程度定まったとみなし、その日を認定日として扱います。初診日から1年6ヶ月を超える場合はこの特例は適用されません。
人工肛門と尿路変更術を両方受けた場合、認定日はどう数えますか?
両方の手術日のうち遅い方から6ヶ月を経過した日を認定日とします。人工肛門と新膀胱を両方造設した場合は、人工肛門から6ヶ月経過した日と新膀胱の造設日のいずれか遅い日を基準にします。
障害基礎年金だけの人でも、この年金は受け取れますか?

3級のままでは受け取れません。3級と障害手当金は障害厚生年金だけに設けられた等級で、障害基礎年金には存在しないためです。
国民年金のみに加入していた自営業の方などは、人工肛門の併設や完全排尿障害といった2級の状態に該当しない限り、年金は支給されません。「障害年金が受けられない」のではなく、「3級に相当する給付が国民年金の制度にはない」というのが正確な理解です。
申請にはどの診断書を使いますか?
様式第120号の7「血液・造血器・その他の障害用」の診断書を使用します。人工肛門・新膀胱の造設日や、排尿・排便の管理方法を医師に正確に記載してもらう必要があります。
保険料納付要件も満たす必要がありますか?
必要です。初診日の前日時点で保険料納付済み期間などが一定の基準を満たしていなければ、等級に該当していても支給されません。手術を受けた時期だけでなく、初診日の保険料納付状況もあわせて確認しましょう。
よくある質問
Q. 人工肛門と人工膀胱を両方造設すると1級になりますか?
A. 1級にはなりません。人工肛門と新膀胱(尿路変更術)を両方造設した場合は2級です。1級は日常生活動作のほぼ全てに介助を要する状態など、より重い場合に限られます。
Q. 尿路変向術後に症状が悪化したら、等級は見直されますか?
A. 見直される場合があります。全身状態や術後経過、原疾患の進行状況によっては上位等級への認定があり得るほか、状態が悪化した際は額改定請求で見直しを申請できます。
Q. 障害手当金(一時金)が支給されることはありますか?
A. 人工肛門・新膀胱・尿路変更術は3級認定が原則のため、通常は障害手当金の対象にはなりません。障害手当金は3級よりさらに軽い状態に支給される一時金です。
Q. 手術から6ヶ月経つ前でも申請できますか?
A. 障害認定日前の申請はできません。ただし初診日から1年6ヶ月を経過していれば、6ヶ月の特例を待たずにその日を認定日として申請できる場合があります。
まとめ:人工膀胱・尿路変向術の障害年金は3級が基本
人工膀胱・尿路変向術を受けた場合、障害厚生年金3級が基本ですが、人工肛門の併設や完全排尿障害があれば2級に、原疾患の状態によってはさらに上位等級になることもあります。国民年金だけの方は、3級に相当する給付がないため、2級要件を満たすかどうかが特に重要な確認ポイントです。中四国にお住まいの方はもちろん、来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・厚生年金保険法施行令 別表第1・別表第2(e-Gov法令検索)
・国民年金法施行令 別表(e-Gov法令検索)
・障害認定基準(日本年金機構)
・障害等級表(日本年金機構)
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