監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法・日本年金機構の障害認定基準に基づき作成しています。
この記事の結論
加齢黄斑変性でも、視力や視野の程度が障害認定基準第1節「眼の障害」の基準を満たせば、障害年金の対象になります。
令和4年の改正により、視力は左右それぞれではなく「良い方の眼の視力」を基準に判定されるようになりました。
65歳の誕生日の前々日を過ぎると新規の事後重症請求ができなくなるため、対象になりそうな方は早めの行動が重要です。
「歳のせいだから」と、加齢黄斑変性による見えづらさを障害年金と結びつけずに過ごしている方は少なくありません。加齢黄斑変性は指定難病ではなく、加齢に伴って発症する一般的な目の病気ですが、視力や視野の状態によっては障害年金の対象になります。
この病気は50歳代後半から高齢の方に多く、発症する年齢が高いからこそ、他の疾患とは違う独特の注意点があります。それが、この記事で詳しくお伝えする65歳という年齢の壁です。
この記事では、社会保険労務士の視点から、加齢黄斑変性で障害年金の対象になる基準と、年齢が関わる特有の注意点を整理します。
加齢黄斑変性は障害年金の対象になりますか?
対象になります。加齢黄斑変性による視力低下や視野障害は、障害認定基準第1節「眼の障害」に基づいて評価されます。
加齢黄斑変性は、網膜の中心部にある黄斑がダメージを受け、物がゆがんで見えたり、視野の中心が見えにくくなったりする病気です。読書や運転、人の顔を見分けることなど、生活に直結する場面で支障が出やすいのが特徴です。原因となる病名は問わず、視力・視野の検査数値そのもので障害年金の対象になるかどうかが判断されます。
滲出型(新生血管が生じるタイプ)は進行が早く、抗VEGF薬の注射治療を続けても視力の維持が難しいケースがあります。萎縮型は進行がゆるやかなことが多いですが、こちらも長期的には視力低下につながります。どちらの型であっても、治療を続けているからといって申請をためらう必要はありません。
何級に認定される可能性がありますか?

視力は「良い方の眼の視力」を基準に、視野は視野計による測定数値をもとに、1級から3級まで、また障害手当金が判定されます。
令和4年1月の改正前は「両眼の視力の和」で判定していましたが、改正後は左右の視力を別々に測定し、良い方の眼の視力を基準に等級を判定する方式に変わりました。
| 等級 | 視力の基準(良い方の眼) |
|---|---|
| 1級 | 0.03以下 |
| 2級 | 0.07以下 |
| 3級 | 0.1以下 |
| 障害手当金 | 0.6以下 |
視野障害についても、自動視野計による「両眼開放視認点数」等の数値で判定する基準が新設されています。視力がそれほど下がっていなくても、視野の欠損が広ければ対象になることがあります。加齢黄斑変性は視野の中心部分から見えにくくなる病気のため、視力だけでなく視野の検査もあわせて受けておくことをおすすめします。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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65歳を過ぎると申請できなくなるって本当ですか?

本当です。障害認定日時点で等級に該当しなかった方が現在の状態で申請する「事後重症請求」は、65歳の誕生日の前々日までに行う必要があります。
加齢黄斑変性は50歳代後半以降に発症することが多く、この65歳の期限に関わりやすい病気です。期限を過ぎると、その後どれだけ症状が悪化しても、事後重症請求はできなくなります。「まだ大丈夫」と様子を見ているうちに期限が来てしまうケースもあるため、注意が必要です。
今67歳なのですが、視力がかなり落ちてきました。もう申請はできないのでしょうか。
社労士事後重症請求はできませんが、初診日が65歳より前にあれば、障害認定日(初診日から1年6か月後)にさかのぼって請求できる可能性があります。初診日がいつか、一緒に確認しましょう。
老齢年金を繰上げ受給している方も、繰り上げた時点で65歳に達したとみなされ、事後重症請求ができなくなります。将来的な申請の可能性を考えるなら、繰上げ受給は慎重に判断することをおすすめします。持病がある方が「少しでも早く年金がほしい」という理由だけで繰上げを選ぶと、後から障害年金の選択肢を失ってしまうこともあります。
初診日はいつとして扱われますか?
「見えにくい」「物がゆがんで見える」といった症状で最初に眼科を受診した日が、初診日になるのが原則です。
片方の目だけ症状が出て受診し、その後もう片方にも症状が広がったという方も多くいます。この場合、最初に受診した方の目の初診日が基準になります。左右で受診時期が離れていても、どちらか早い方の受診日を見落とさないようにしましょう。
健康診断や人間ドックの眼底検査で異常を指摘され、その後眼科を受診した場合は、実際に眼科を受診した日が初診日です。健診を受けた日そのものは初診日にはなりません。
よくある質問
Q. 片方の目だけが加齢黄斑変性の場合でも対象になりますか?
A. 良い方の眼の視力が保たれている場合、1級から3級の障害年金は原則として対象になりません。3級までのいずれの等級も、両眼の視力がそれぞれ基準以下であることが前提だからです。片方の眼の視力が0.1以下まで下がっていれば、年金とは別の一時金である障害手当金の対象になることがあります。
Q. 抗VEGF療法(注射治療)を続けていても申請できますか?
A. 申請できます。治療を続けていても視力や視野が基準に該当していれば対象になります。治療内容や頻度、通院の負担についても申立書に記載しておくとよいでしょう。
Q. 老齢年金をすでに受け取っています。障害年金も申請できますか?
A. 初診日が65歳より前であれば、障害認定日にさかのぼる請求は可能です。ただし老齢年金との間で、原則どちらか一方を選ぶ併給調整があるため、事前に年金額を比較しておくと安心です。
Q. 65歳を過ぎてしまいました。もう申請はできませんか?
A. 初診日が65歳より前にあり、障害認定日当時に等級に該当していたことを示せれば、65歳を過ぎていても請求できる場合があります。当時の診断書が用意できるかがポイントになるため、早めに主治医へ相談してみてください。
まとめ:加齢黄斑変性の障害年金は「早めの確認」がカギ
加齢黄斑変性は、指定難病ではなくても、視力・視野の数値が基準を満たせば、国民年金法第30条・厚生年金保険法第47条に基づく障害年金の対象になります。令和4年の改正で判定方法も変わっているため、以前調べたときの情報のままにしないことも大切です。
発症の年齢が高いからこそ、65歳という年齢の壁が申請の可否を左右します。「歳のせい」と決めつけず、早めに視力・視野の検査数値を確認しておくことが大切です。
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参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・厚生年金保険法 第47条(e-Gov法令検索)
・障害認定基準 第1節「眼の障害」(日本年金機構)
・障害年金ガイド 令和8年度版(日本年金機構)
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