監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法・日本年金機構の障害認定基準に基づき作成しています。
この記事の結論
原発性胆汁性胆管炎は、肝硬変まで進行した場合に障害認定基準第13節「肝疾患による障害」の対象になります。
認定のポイントは、血清ビリルビン値や血小板数などの検査数値と、日常生活の状態を組み合わせた総合判定です。
診断される方の多くを占める無症候性の段階では、通常は対象になりません。
「指定難病と言われたので、障害年金も対象になるはず」と考えて相談に来られる方がいます。原発性胆汁性胆管炎(PBC)は指定難病93に指定されている肝疾患ですが、指定難病であることと障害年金の対象になることは、必ずしもイコールではありません。
PBCは全国に約37,000人の患者さんがいるとされ、その多くは中年以降の女性です。治療がよく効く病気であるがゆえに、障害年金の対象になるかどうかの見極めが難しい疾患でもあります。
この記事では、社会保険労務士の視点から、PBCで実際に障害年金の対象になるケースと、対象になりにくいケースを、正直に整理します。
原発性胆汁性胆管炎は障害年金の対象になりますか?
肝硬変まで進行した場合に対象になります。障害認定基準第13節「肝疾患による障害」の対象は、慢性かつびまん性の肝疾患の結果生じた肝硬変症及びそれに付随する病態とされています。
肝硬変の原因は、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、そしてPBCのような胆汁うっ滞型など様々ですが、原因を問わず「肝硬変の状態」そのものが評価対象です。PBCは進行すると胆汁うっ滞型の肝硬変に至ることがあり、その段階に達すれば、ウイルス性肝硬変などと同じ基準で評価されます。
一方、慢性肝炎の段階(肝硬変に至る前の炎症のみの状態)は、原則として認定の対象になりません。PBCと診断されてから何年も経っていても、肝硬変まで進行していなければ、この原則が当てはまります。
何級に認定される可能性がありますか?

6つの検査項目・所見の異常の程度と、日常生活の状態を示す「一般状態区分」を組み合わせて、1級から3級までが判定されます。
検査項目・臨床所見は、血清総ビリルビン値、血清アルブミン値、血小板数、プロトロンビン時間、腹水、肝性脳症の6つです。それぞれに「中等度異常」「高度異常」の基準があり、数値が1つ悪いだけでは足りず、これら6項目のうち複数がそろって初めて等級の目安に近づく仕組みです。
| 検査項目・所見 | 中等度異常 | 高度異常 |
|---|---|---|
| 血清総ビリルビン(mg/dl) | 2.0〜3.0 | 3.0超 |
| 血清アルブミン(g/dl) | 3.0〜3.5 | 3.0未満 |
| 血小板数(万/μl) | 5〜10未満 | 5未満 |
| プロトロンビン時間(%) | 40〜70 | 40未満 |
| 腹水 | 腹水あり | 難治性腹水あり |
| 肝性脳症(昏睡度) | Ⅰ度 | Ⅱ度以上 |
この6項目のうち、中等度または高度の異常が2つ以上あり、日常生活にも一定の支障が出ている状態で3級、3つ以上の異常があり、日中の半分以上を起居する状態などで2級、高度異常が3つ以上、または高度異常2つ・中等度異常2つ以上で常に介助が必要な状態などが1級の目安になります。
検査数値と並んで見られるのが「一般状態区分」という、日常生活の状態を5段階で表す基準です。「軽労働はできないが日中の半分以上は起きて過ごせる」「身のまわりのこともできず常に介助が必要」といった段階のどこに当てはまるかが、数値とあわせて総合的に判断されます。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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無症候性の段階でも受給できますか?
できません。診断される方の多くを占める無症候性PBCの段階では、通常は障害等級に該当しません。
難病情報センターの資料によれば、現在PBCと診断される方の多くは病気が進行しておらず、肝硬変に至っていません。ウルソデオキシコール酸などの薬を飲み続けることで、病気のない方と同じように日常生活を送れる方が大半です。
指定難病だと言われたので、障害年金も申請できると思っていました。
社労士指定難病であることと、障害年金の対象になることは別の話です。PBCは治療がよく効く病気なので、多くの方は対象になりません。今の肝機能の数値を一度確認させてください。
皮膚のかゆみだけがある段階も、それだけでは通常対象になりません。難病情報センターの資料でも、軽い段階の患者さんの約3割は中等度から重度のかゆみを自覚しているとされていますが、かゆみの強さと肝機能の検査数値は必ずしも一致しません。対象になるのは、治療を続けても肝硬変への進行を抑えられず、検査数値が悪化してきた場合です。「指定難病だから諦めずに申請してみよう」ではなく、まずは現在の肝機能の数値を確認することをおすすめします。
初診日はいつとして扱われますか?

健康診断や人間ドックで肝機能の異常を指摘され、精密検査のために医療機関を受診した日が、初診日になるのが原則です。
PBCは自覚症状がないまま、健康診断のALPやγ-GTPの数値異常で発見されることが少なくありません。この場合、健診結果を受けて実際に医療機関を受診した日が初診日となります。健診を受けただけの日そのものは初診日にはなりません。
無症候性の期間が長く続く病気のため、初診日から障害年金の対象になる段階まで、数年から十年以上かかることも珍しくありません。その間の通院歴は、途切れずに記録しておくことが大切です。
よくある質問
Q. かゆみだけの症状でも申請できますか?
A. かゆみだけでは通常、障害等級に該当しません。肝硬変への進行を示す検査数値の異常があわせて必要です。
Q. シェーグレン症候群や関節リウマチを合併しています。あわせて評価されますか?
A. それぞれの疾患の重さに応じて、別々に評価されることがあります。両方に相応の障害があれば、併合認定が検討されます。
Q. 肝移植を受けた場合はどうなりますか?
A. 術後の症状や経過を踏まえて認定されます。移植後1年間は、臓器が安定するまでの期間として従前の等級が維持されます。
Q. 健康診断で肝機能の異常を指摘されただけの段階です。これも初診日になりますか?
A. 健診結果を受けて医療機関を受診すれば、その受診日が初診日になります。健診を受けた日そのものは初診日にあたりません。
まとめ:原発性胆汁性胆管炎の障害年金は「肝硬変への進行度」がカギ
原発性胆汁性胆管炎は、指定難病であっても、肝硬変まで進行していなければ、通常は障害年金の対象になりません。国民年金法第30条・厚生年金保険法第47条の支給要件を満たし、肝機能の検査数値が悪化してきた段階で、はじめて対象になる疾患です。
治療がよく効く病気だからこそ、「対象になるかどうか」をご自身で判断するより、現在の検査数値をもとに専門家に確認することをおすすめします。合併しやすい他の自己免疫疾患の症状もあわせて把握しておくと、より正確な判断につながります。
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参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・厚生年金保険法 第47条(e-Gov法令検索)
・原発性胆汁性胆管炎(指定難病93)(難病情報センター)
・障害認定基準 第13節「肝疾患による障害」(日本年金機構)
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