監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法(e-Gov法令検索)および日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
専業主婦(主夫)であっても、第3号被保険者として国民年金に加入しているため、障害基礎年金の対象になります。
第3号被保険者の期間は保険料納付済期間として扱われるため、通常は保険料納付要件で問題になることはありません。
ただし、第3号被保険者への切り替え届出が遅れていた期間がある場合、その期間は障害年金の審査では未納として扱われることがあり、老齢年金とは異なる注意が必要です。
「保険料を自分で納めたことがないので、障害年金はもらえないのでは」というご相談を、専業主婦の方からよくいただきます。実はこれは誤解であることがほとんどですが、一方で見落とされがちな注意点も存在します。
この記事では、専業主婦(主夫)の方が障害年金の対象になる仕組みと、「第3号被保険者」特有の注意点について、社労士の視点から整理します。
専業主婦(主夫)は、障害年金の対象になりますか?
はい、対象になります。専業主婦(主夫)は「第3号被保険者」として国民年金に加入しているため、要件を満たせば障害基礎年金を受給できます。保険料を自分で納めていないことは問題になりません。
第3号被保険者とは
第3号被保険者とは、厚生年金に加入している配偶者(第2号被保険者)に扶養されている、20歳以上60歳未満の配偶者のことです。会社員や公務員と結婚し、その扶養に入っている専業主婦・主夫の方の多くが、この第3号被保険者に該当します。第3号被保険者も国民年金の被保険者の一種であるため、障害基礎年金の対象になります。男性が専業主夫として第3号被保険者になるケースも、考え方はまったく同じです。
保険料の扱い
第3号被保険者は、保険料を個人で納付する必要がありません。配偶者が加入する厚生年金制度全体で保険料を負担する仕組みになっているため、第3号被保険者としての届出さえきちんとされていれば、その期間は保険料納付済期間として扱われます。つまり、専業主婦(主夫)期間中に初診日がある場合でも、その期間分は保険料未納として扱われることはありません。年金事務所に個別に保険料を支払いに行く必要もなく、届出さえ済んでいれば自動的に納付済期間としてカウントされる仕組みです。
「夫が厚生年金だから自分も厚生年金」というのは誤解ですか?
はい、よくある誤解です。配偶者が厚生年金(第2号被保険者)であっても、扶養されている本人は国民年金の第3号被保険者であり、厚生年金には加入していません。この違いは、請求できる年金の種類に直結します。

ご相談の中でも、「夫が厚生年金に加入しているから、自分も厚生年金だと思っていた」という声は少なくありません。しかし第3号被保険者本人が加入しているのはあくまで国民年金です。そのため、専業主婦(主夫)期間中に初診日がある傷病については、障害厚生年金ではなく障害基礎年金が対象になります。障害基礎年金は1級・2級のみが支給対象で、障害厚生年金にある3級や障害手当金の対象にはならない点も、あわせて押さえておきましょう。障害厚生年金であれば軽い症状でも3級として認定される可能性がありますが、障害基礎年金の場合はこの選択肢がないため、より重い症状でなければ対象になりにくいという違いもあります。
| 被保険者の種別 | 該当する人 | 加入する制度 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 自営業者・学生・無職の方など | 国民年金のみ |
| 第2号被保険者 | 会社員・公務員 | 厚生年金(国民年金にも加入) |
| 第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養される配偶者 | 国民年金のみ |
第3号被保険者の届出が遅れていた場合、注意が必要と聞きましたが?
はい。第3号被保険者への切り替え届出が遅れていた期間は、老齢年金では救済されても、障害年金の審査では未納として扱われることがあります。この違いは、あまり知られていません。
3号不整合期間とは
結婚や配偶者の転職・退職などのタイミングで、第1号被保険者から第3号被保険者へ、あるいはその逆への切り替え届出が必要になる場面があります。この届出が行われないまま記録上は第3号のままになっている期間を「3号不整合期間」と呼びます。本来は第1号被保険者として保険料を納めるべき期間であるため、記録が訂正されると、その期間は保険料の未納期間として扱われることになります。第3号被保険者の制度が始まった昭和61年当初は、本人が市区町村へ届出を行う必要があり、この届出漏れが多数発生したことが、3号不整合問題の背景にあります。
老齢年金と障害年金での扱いの違い
平成25年7月からは、「特定期間該当届」を提出することで、この未納期間を老齢年金の受給資格期間(年金をもらうために必要な最低限の加入期間)に算入できる救済措置が設けられました。しかし、この特例はあくまで老齢年金の受給資格期間に関するものです。障害年金の保険料納付要件の判定においては、特定期間該当届を提出しても、その期間は納付済みとはみなされません。つまり、老齢年金では救済されても、障害年金では未納期間のままになるという、非対称な扱いになっている点に注意が必要です。「ねんきん定期便で年金がもらえることは確認できたから大丈夫」と思っていても、障害年金の場面では別の基準で判断される可能性がある、ということです。
ねんきん定期便には第3号被保険者期間としてずっと記録されているので、安心していました
社労士記録上そう見えていても、実際には届出が遅れていた「3号不整合期間」が含まれている可能性もあります。特に結婚や配偶者の転職のタイミングの前後は、一度確認しておくと安心です
届出が遅れていた場合、保険料納付要件はどう判定されますか?
初診日が、切り替えの届出をした日より前か後かによって、判定の結果が大きく変わります。この前後関係が非常に重要なポイントになります。

| 初診日と届出日の関係 | 保険料納付要件上の扱い |
|---|---|
| 初診日が届出日より前 | 届出日から遡って2年間のみ納付済期間。それ以前の3号不整合期間は未納扱い |
| 初診日が届出日以降 | 3号不整合期間も含め、すべて納付済期間として扱われる |
つまり、届出をしてから初診日を迎えた場合は心配ありませんが、届出をする前に初診日があった場合は、届出日から2年より前の期間が未納扱いとなり、保険料納付要件を満たせなくなる可能性があります。ご自身の届出のタイミングと初診日の前後関係を、年金事務所で確認しておくことをおすすめします。
結婚してからしばらく届出をしていなかったのですが、今から確認できますか
社労士年金事務所でご自身の加入記録を確認することができます。届出が遅れていた期間があるかどうか、まずは記録を一緒に確認してみましょう
届出漏れがないか、どうやって確認すればいいですか?
「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」、年金事務所の窓口で、ご自身の年金加入記録を確認することができます。特に結婚や配偶者の転職・退職の前後は、念のため確認しておくと安心です。
記録上は第3号被保険者期間として表示されていても、それが実際の届出にもとづくものか、後から訂正が入る可能性がある3号不整合期間なのかは、記録だけでは判断がつきにくいことがあります。将来的に障害年金の請求を考える可能性がある方は、一度年金事務所で詳しい記録を確認してもらうことをおすすめします。特に結婚や配偶者の転職から時間が経っている方ほど、記憶があいまいになりがちですので、早めの確認が安心につながります。
よくある質問
Q. 結婚してすぐに届出をしていない場合、どうすればいいですか?
A. できるだけ早く、配偶者の勤務先または年金事務所で第3号被保険者の届出をしてください。届出が遅れるほど、未納として扱われる期間が発生するリスクが高まります。結婚を機に会社を退職した場合は、退職と同時に届出が必要になる点も覚えておきましょう。
Q. 配偶者が転職した場合も、手続きは必要ですか?
A. 通常は配偶者の新しい勤務先を通じて手続きが行われますが、転職に伴う切り替えのタイミングでは記録の不整合が起きやすいため、手続きが正しく完了しているか確認しておくと安心です。特に転職先が決まるまでに空白期間がある場合は、注意が必要です。
Q. パートで年収が増えた場合、第3号被保険者のままでいいですか?
A. 一定の年収を超えて扶養から外れる場合は、第1号被保険者(または第2号被保険者)への切り替え手続きが必要です。手続きを忘れると、その期間が3号不整合期間になってしまいます。
Q. 20歳前傷病の場合も、この問題に関係しますか?
A. 20歳前傷病による障害基礎年金は、そもそも保険料納付要件が問われないため、第3号被保険者の届出漏れの問題とは直接関係しません。この記事の内容は、20歳以降に初診日がある場合に関わるものです。
Q. 自分の記録が3号不整合期間になっていないか、自分で確認する方法はありますか?
A. 「ねんきんネット」で加入記録を確認できますが、3号不整合期間かどうかの詳細な判断は難しい場合があります。心配な方は、年金事務所の窓口で直接確認してもらうのが確実です。結婚や配偶者の転職の時期を伝えると、記録と照らし合わせて確認してもらいやすくなります。
Q. すでに未納扱いになっている場合、対処法はありますか?
A. 未納期間そのものをさかのぼって納付できるわけではありませんが、社会的治癒の考え方が使えないか、初診日を別の時点にできないかなど、状況によって検討できる選択肢があります。一人で判断せず、専門家にご相談ください。
まとめ:多くの場合は対象ですが、届出のタイミングに注意しましょう
専業主婦(主夫)であっても、第3号被保険者として国民年金に加入しているため、障害基礎年金の対象になります。保険料を自分で納めていないことは、通常は問題になりません。ただし、第3号被保険者への切り替え届出が遅れていた期間がある場合は話が別で、老齢年金では救済される特例が、障害年金の保険料納付要件には適用されないという重要な違いがあります。初診日が届出日より前か後かによって結果が変わるため、この前後関係を正確に把握しておくことが欠かせません。ご自身やご家族の届出状況に心当たりがある方は、早めに年金事務所で記録を確認しておくことをおすすめします。
記録の確認や保険料納付要件の判定は複雑になることもあります。不安な方は、一人で抱え込まず専門家に相談することをおすすめします。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
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