監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法(e-Gov法令検索)および日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
障害年金を受給しても、生活や他の年金の受給権が失われるようなデメリットは基本的にありません。
所得や仕事の有無にかかわらず、認定基準を満たしているなら安心して申請してください。
ただし、国民年金第1号被保険者の方は国民年金法第89条の法定免除により老齢基礎年金が将来減額される場合があるほか、20歳前傷病による障害基礎年金には国民年金法第36条の3に基づく所得制限がある点は、事前に知っておく必要があります。
障害年金の申請を考え始めると、「本当に申請して大丈夫なのだろうか」「知らないところで損をするのでは」と不安になる方は少なくありません。ネットで検索すると不安をあおるような情報も見つかり、余計に申請をためらってしまうこともあるでしょう。
結論からお伝えすると、障害年金の受給によって生活が不利になるような制度上のデメリットはほとんどありません。とはいえ、いくつかの具体的な注意点は実際に存在します。この記事では、社労士の視点から、申請前に知っておくべき影響を一つずつ整理していきます。
特に検索でよく見かける「老齢年金が減る」「借金の返済に充てられる」「保険に入れなくなる」といった不安については、それぞれ法律上の根拠に基づいて正確にお答えします。噂や思い込みで申請を諦めてしまうことがないよう、事実だけを整理してお伝えします。
障害年金をもらうと、将来の老齢年金は減ってしまいますか?

国民年金の第1号被保険者の方は、法定免除を受けると将来の老齢基礎年金が減額される場合があります。これが、障害年金にまつわる数少ない実質的なデメリットです。
法定免除とはどのような制度か
障害基礎年金の1級・2級を受給すると、自営業者・学生・無職の方など国民年金第1号被保険者にあたる方は、国民年金法第89条に基づき国民年金保険料の納付が法定免除されます。手続きには「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」の提出が必要です。なお、障害の状態が軽くなり2級から3級に該当しなくなった場合でも、その日から3年間は法定免除が継続する扱いになっています。
老齢基礎年金への影響

保険料の納付が免除される代わりに、その期間についての老齢基礎年金の額は、全額を納付した場合よりも少なく計算されます。免除された期間がどのくらいの割合で年金額に算入されるかは、次の表のとおりです。
| 期間の種類 | 老齢基礎年金への算入割合 |
|---|---|
| 保険料を全額納付した期間 | 1か月を1として算入(満額) |
| 法定免除期間(平成21年4月以降) | 1か月を2分の1として算入 |
| 法定免除期間(平成21年3月以前) | 1か月を3分の1として算入 |
ただし、この減額が実際に影響するのは「将来、障害基礎年金ではなく老齢基礎年金を選んで受け取ることになった場合」です。障害基礎年金を生涯にわたって受給し続ける場合は、老齢基礎年金を選択する場面自体がないため、実質的な影響はありません。
法定免除を受けると、老齢年金が減ってしまうんですね…どうしたらいいでしょうか
社労士ご自身の年齢や、将来的に症状が回復する見込みがあるかによって、選び方は変わってきます。迷われたら、状況を伺いながら一緒に考えていきましょう
減額を避けたい場合の対応方法
老齢基礎年金を満額に近づけたい場合は、法定免除に該当していても「国民年金保険料免除期間納付申出書」を提出すれば、通常どおり保険料を納付し続けることができます。手続きの詳細は、こちらの記事で解説しています。
障害年金を受給すると国民年金保険料は免除になる?「法定免除」の手続きとメリット
障害年金は借金の返済に充てさせられたり、差し押さえられたりしますか?
障害年金を受ける権利は、国民年金法第24条により譲渡・担保提供・差し押さえが原則として禁止されています。借金の督促があっても、年金そのものを直接取り立てられることは基本的にありません。

受給権そのものが法律で守られている
国民年金法第24条は「給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない」と定めています。これは老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金のいずれにも共通する、生活を守るための規定です。
老齢基礎年金より強く保護されている
同条には国税滞納処分による例外規定がありますが、その対象は老齢基礎年金及び付加年金に限られており、障害基礎年金は対象に含まれません。つまり、障害年金は老齢年金よりもさらに強く保護されているといえます。ここは「デメリットではなく、むしろ安心材料」として知っておいていただきたいポイントです。なお、これは年金保険料そのものを滞納した場合の督促・徴収手続きとは別の話であり、混同しないよう注意してください。
障害年金を受給すると、民間の生命保険や医療保険に入りにくくなりますか?
すでに加入している生命保険や医療保険の契約内容が、障害年金の受給によって変更されることはありません。解約されたり、保障内容が見直されたりすることもありません。
既契約への影響
障害年金は公的年金制度に基づく給付であり、民間保険会社との契約とは別の制度です。すでに加入している保険の保障内容や保険料が、障害年金の受給を理由に変わることはありません。
実は最近、生命保険の見直しを考えていて…障害年金をもらうと保険に入れなくなったりしますか
社労士すでに入っている契約には影響ありませんよ。新しく加入する場合は、傷病の状況を正直に告知していただく必要がありますが、それは障害年金の有無とは別の話です
新規加入時の告知義務
一方、新たに生命保険や医療保険に加入する場合は、現在の傷病や通院状況を保険会社へ正しく申告する告知義務があります。この告知義務は保険契約上のルールであり、障害年金を受給しているかどうかとは関係なく、傷病そのものによって生じるものです。加入の可否や条件は保険会社ごとの審査によるため、迷われる場合は保険の担当者に個別に相談されることをおすすめします。
20歳前に初診日がある場合、所得によるデメリットはありますか?
20歳前傷病による障害基礎年金には、国民年金法第36条の3に基づく所得制限があります。これは、保険料を納めていない期間の障害年金に対する特有の仕組みです。
所得制限の基準
日本年金機構の公表基準では、前年の所得額が4,794,000円を超える場合は年金の全額が支給停止となり、3,761,000円を超える場合は2分の1の年金額が支給停止となります。扶養親族がいる場合は、1人につき所得制限額が加算されます。支給停止の対象となる期間は10月から翌年9月までで、判定は毎年の所得に応じて見直されます。
| 前年の所得額(扶養親族なしの場合) | 支給の扱い |
|---|---|
| 3,761,000円以下 | 全額支給(制限なし) |
| 3,761,000円超 4,794,000円以下 | 年金額の2分の1が支給停止 |
| 4,794,000円超 | 年金の全額が支給停止 |
通常の障害基礎年金・障害厚生年金との違い
20歳前傷病による障害基礎年金は、そもそも保険料を納めていない期間が対象となるため、保険料納付要件が問われません。所得制限は、その代わりに設けられた仕組みだと理解しておくとよいでしょう。初診日に厚生年金へ加入していた場合や、20歳を過ぎてから初診日がある場合は、保険料納付要件を満たす通常の障害年金となり、この所得制限は適用されません。所得制限があるのは、あくまで20歳前傷病による障害基礎年金に限られます。詳しい仕組みは、こちらのページもあわせてご確認ください。
20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等(日本年金機構)
よくある質問
Q. 障害年金を受給すると、会社に知られてしまいますか?
A. 障害年金の受給を会社に伝える法律上の義務はありません。非課税所得のため、給与の源泉徴収や年末調整を通じて会社に知られることも基本的にありません。詳しくは告知義務の有無とプライバシーの真実の記事をご覧ください。
Q. 障害年金をもらうと、配偶者や親の扶養から外れますか?
A. 年金額次第では扶養の判定基準に影響することがありますが、必ず外れるわけではありません。税法上と社会保険上で判定基準が異なるため、それぞれ分けて確認することが大切です。詳しくは家族の扶養への影響の記事をご覧ください。
Q. 障害年金には税金がかかりますか?
A. 障害基礎年金・障害厚生年金はいずれも非課税所得のため、原則として所得税・住民税はかかりません。確定申告も基本的に不要ですが、他に所得がある場合は住民税の申告要否など個別の状況にあわせて確認しておくと安心です。
Q. 働きながら受給すると、年金が減らされますか?
A. 障害基礎年金・障害厚生年金は、就労のみを理由に自動的に減額されることはありません。ただし、審査や更新の場面では就労状況が評価に影響する場合がありますので、働き方に変化があったときは記録を残しておくと安心です。
Q. 更新のたびに支給が止まるリスクはありますか?
A. 有期認定の場合は数年ごとに更新があり、症状の程度によっては等級変更や支給停止となる可能性があります。詳しくは永久認定と有期認定の違いの記事をご覧ください。
Q. 障害年金の申請歴は、住宅ローンなどの審査に影響しますか?
A. 障害年金の受給や申請の履歴が信用情報機関に登録されることはなく、ローンやクレジットカードの審査に直接影響することはありません。審査で見られるのは主に収入や返済能力であり、年金は収入の一部として扱われます。詳しくはローン・クレジットカード審査への影響の記事をご覧ください。
まとめ:障害年金にデメリットはほとんどありません

ここまで見てきたとおり、障害年金の受給によって生活が不利になるようなデメリットは基本的にありません。国民年金第1号被保険者の方は法定免除による老齢基礎年金の減額、20歳前傷病の方は所得制限という2つの例外がありますが、いずれも制度の仕組みを知っていれば事前に対応できるものです。むしろ、受給権そのものが法律で手厚く保護されている点は、安心材料としてお伝えしたいポイントです。噂や思い込みだけで申請をためらってしまうのは、とてももったいないことです。
「自分の場合はどうなるのか」を具体的に知りたい方は、一人で悩まず専門家に相談することをおすすめします。香川・岡山・愛媛にお住まいの方はもちろん、来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
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