監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は厚生年金保険法・日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
障害手当金は、3級より軽い「4級の年金」ではなく、初診日から5年以内に症状が固定した障害に1回だけ支給される一時金です(厚生年金保険法第55条)。
まずは、ご自身の症状が固定しているかを主治医に確認しましょう。
症状が固定していなければ障害手当金の対象にはなりませんが、労働に制限があれば、年金である3級に当たる可能性があります。
「障害厚生年金3級には届かなくても、もう少し軽い障害手当金ならもらえるかもしれない」。こう考えて申請の準備を進めている方は少なくありません。ところが、障害手当金は「3級の一つ下の等級」という仕組みではありません。
この記事では、障害手当金とはどんな制度か、3級とは何が違うのか、受け取るための条件と金額、精神疾患の場合の考え方を、社労士の視点でお伝えします。
障害手当金とは、どんな制度ですか?
障害手当金とは、厚生年金に加入中に初診日がある病気やけがが初診日から5年以内に治り、障害厚生年金3級より軽い障害が残ったときに、1回限り支給される一時金です。
「治った」とは、症状が固定したこと
障害年金でいう「治った」とは、完全に元どおりになることではありません。日本年金機構の障害年金ガイドでは、「症状が固定し、治療の効果が期待できない場合」とされています。障害が残ったまま、これ以上良くも悪くもならない状態を指します。
「4級の年金」ではない
障害手当金は、厚生年金保険法第55条に定められた、年金とは別の給付です。3級に当たらなかった人が自動的に移る「4級」ではなく、症状が固定していることが前提になります。固定していない状態では、障害手当金として判定されることはありません。
障害手当金と障害厚生年金3級は、何が違いますか?
最大の違いは、3級は障害の状態が続く間支給される「年金」で、障害手当金は1回限りの「一時金」である点です。もう一つの違いが、症状が固定しているかどうかの扱いです。

| 障害厚生年金3級 | 障害手当金 | |
|---|---|---|
| 支給の形 | 障害の状態が続く間の年金 | 1回限りの一時金 |
| 症状の固定 | 固定していなくても認定される | 固定していることが条件 |
| 初診日の加入制度 | 厚生年金 | 厚生年金 |
| 根拠となる条文 | 厚生年金保険法第47条 | 厚生年金保険法第55条 |
3級は「固定」でも「未固定」でも認定される
3級には、脳梗塞の後遺症のように症状が固定して認定されるケースもあれば、精神疾患やがんのように治療を続けていて症状は固定していないものの、労働に制限があるため認定されるケースもあります。一方、障害手当金は「症状が固定していること」が絶対条件です。
どちらになるかは、選べない
3級になるか障害手当金になるかは、本人の希望で選ぶものではなく、診断書に書かれた障害の状態で決まります。だからこそ、診断書を依頼する前に、症状が固定しているのかどうかを主治医と確認しておくことが大切です。
3級は難しそうなので、障害手当金で申請したほうが通りやすいでしょうか?
社労士どちらになるかは、申請の仕方ではなく症状の状態で決まります。治療を続けていて症状が固定していないなら、まずは3級に当たるかを一緒に確認しましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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障害手当金をもらえる条件と金額は?
障害手当金を受けるには、初診日の加入制度・症状の固定・障害の程度・保険料の納付の4つの条件をすべて満たす必要があります。
受け取るための4つの条件
- 初診日に厚生年金に加入していること(国民年金だけの加入期間は対象外)
- 初診日から5年以内に症状が固定していること
- 症状が固定した日に、障害厚生年金3級より軽く、障害等級表に定める障害の状態であること
- 初診日の前日において、保険料の納付要件を満たしていること
金額は報酬比例の年金額の2年分
障害手当金の額は、報酬比例の年金額の2倍です(厚生年金保険法第57条)。計算した額が低い場合でも最低保障額があり、令和8年度は1,271,000円(昭和31年4月1日以前に生まれた方は1,267,400円)です。実際の額は、厚生年金の加入期間や給与の額で変わります。
うつ病などの精神疾患でも、障害手当金は受けられますか?
精神疾患で障害手当金に当たるケースは、実務上は極めてまれです。症状が固定したと判断されにくいため、3級に当たるかを検討するのが一般的です。

精神疾患で「固定」と判断されにくい理由
精神疾患は、医学的に「将来良くなる可能性も、悪くなる可能性も常にある」とみなされます。そのため、「一生このまま変わらない」と示すことが難しく、症状が固定した状態を前提とする障害手当金には当てはまりにくいのです。
固定していなくても、あきらめる必要はない
「症状が固定していないから、手当金も年金も無理だ」と考える必要はありません。固定していなくても、その傷病で労働に制限があれば、3級の基準に当たる可能性があります。仕事でどんな制限や配慮を受けているかを、診断書と申立書で具体的に伝えることが大切です。
よくある質問
Q. 国民年金だけに加入していた場合も、障害手当金は受けられますか?
A. 受けられません。障害手当金は厚生年金の給付のため、初診日に厚生年金に加入していたことが条件です。自営業や学生の期間に初診日がある場合は、障害基礎年金(1級・2級)に当たるかを確認することになります。
Q. 初診日から5年たっても症状が固定しない場合は、どうなりますか?
A. 障害手当金の対象にはなりません。障害手当金は、初診日から5年以内に症状が固定していることが条件だからです。その場合でも、症状が続いて労働に制限があれば、障害厚生年金3級に当たるかを検討できます。主治医に今後の見通しも聞いておきましょう。
Q. 障害手当金を受け取った後に悪化したら、年金に切り替えられますか?
A. 65歳になる前に悪化した場合は、事後重症請求として障害厚生年金をあらためて請求できます(厚生年金保険法第47条の2)。受け取った障害手当金は返還しなければなりませんが、実際には、その後に支給される年金と相殺する形で返還します。
Q. 障害手当金に税金はかかりますか?
A. かかりません。厚生年金保険法第41条第2項により、老齢厚生年金を除く保険給付には税金をかけられないため、障害手当金は非課税です。確定申告で収入として申告する必要もありません。受け取った後の生活設計に、そのまま充てることができます。
まとめ:制度の名前ではなく「症状が固定しているか」で考えましょう
障害手当金は、3級に届かない人のための「4級の年金」ではなく、症状が固定した障害への一時金です。治療を続けていて症状が固定していないなら、3級の可能性から考えるのが出発点です。診断書を依頼する前に、主治医に症状が固定しているかを確認してみてください。
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参考資料
・厚生年金保険法 第41条・第47条・第47条の2・第55条・第57条(e-Gov法令検索)
・障害年金(日本年金機構)
・障害年金ガイド 令和8年度版(日本年金機構)
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