監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法、厚生年金保険法、厚生労働省・日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
通院歴が長くても、日常生活や仕事への影響が大きければ、障害年金の申請は可能で、通院歴の長さ自体が不利になるわけではありません。
重要なのは通院の年数ではなく、初診日の特定と、病歴・就労状況等申立書での経過の伝え方です。
病名が「適応障害」から「うつ病」「統合失調症」などへ変わっていても、症状が連続していれば同一傷病と判断され、最初の受診日が初診日になります。
精神疾患で長期間通院している方から、障害年金の相談を受ける中で、よく聞かれるのが「通院歴が長すぎて、どこから整理すればいいか分からない」「昔のことを思い出すのがつらい」「申請が複雑になりそうで不安」といった声です。
精神疾患の場合、通院歴が長いこと自体が不利になるわけではありません。しかし、長期通院ならではの注意点があるのも事実です。この記事では、精神疾患で通院歴が長い場合に、障害年金申請で特に注意すべきポイントを実務の視点から解説します。
通院歴が長いと、障害年金の審査で不利になりますか?
通院歴の長さそのものは、障害年金の審査を不利にする要因ではありません。審査で見られるのは、何年通院しているかではなく、日常生活にどの程度支障があるか、就労や社会生活がどれほど制限されているかという、現在および経過を含めた生活への影響です。
長期間通院していても、生活や就労に大きな制限があれば、障害年金の対象となる可能性は十分にあります。厚生労働省の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月)でも、診断書の記載事項に基づく「等級の目安」に加えて、日常生活状況などを総合的に考慮して等級判定を行うことが定められています。
審査で見られているのは「生活への影響」です
審査で見られているのは、何年通院しているか、どれだけ治療を続けているかといった点そのものではなく、日常生活にどの程度支障があるか、就労や社会生活がどれほど制限されているかという、現在および経過を含めた実態です。通院年数が長いことをマイナス要因と思い込み、申請自体をためらってしまう方もいますが、まずは現在の生活状況を整理することから始めるのが第一歩です。
通院歴が長い場合、初診日の整理でどんな点に注意すればいいですか?
通院歴が長い精神疾患では、初診日の特定が最も重要で、かつ難しくなりやすい傾向があります。初診日は、国民年金法第30条第1項・厚生年金保険法第47条第1項に基づく障害認定日の起点であり、この判断を誤ると申請自体ができなくなったり不支給になったりという重大な結果につながります。
| 状況 | 初診日の扱い |
|---|---|
| 「適応障害」→「うつ病」→「双極性障害」のように病名が変わっている | 症状や経過が連続していれば同一傷病と判断され、最初に受診した日が初診日 |
| 内科や婦人科で頭痛・不眠等の治療を受けていた | 現在の精神症状に繋がっていると判断されれば、その受診日が初診日になることがある |
| 別の傷病がきっかけで精神疾患を発症した | 「障害認定基準」上の相当因果関係が認められれば、前の傷病の初診日が基準になる |

ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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通院歴は、どのように整理して伝えればいいですか?
通院していた事実・医療機関の変遷・治療の継続性は省略できませんが、単に病院名や年月日を時系列に並べるだけでは審査側に状況が伝わりにくくなります。症状が変化した時期、悪化・安定・再発の流れ、生活や就労に影響が出たタイミングを意識しながら、通院歴を「経過として整理すること」が重要です。
今は比較的落ち着いている時期なのですが、調子が良いときのことだけ伝えれば大丈夫でしょうか?
社労士いいえ、調子が悪いときの状態や日常生活が成り立たなくなる場面を含めて伝えないと、実態より軽く評価される可能性があります。精神疾患では症状に波があるため、良い時期だけでなく、悪化していた時期の状況もあわせて整理することが大切です。
また、長く通院していると、本人が困難を当たり前だと感じてしまったり、医師も現状に慣れてしまったりすることが起こりやすくなります。家事はどこまでできているか、外出や対人関係の困難さ、一人では対応できない場面を、あらためて整理し直すことで、生活上の制限が明確になります。
一人で整理するのが難しい場合、どうすればいいですか?
精神疾患で通院歴が長い場合、申請が不利になるというよりも、整理が難しかったり判断が複雑になったりするという特徴があります。「昔のことを振り返るのがつらい」「何から整理すればいいか分からない」という場合、無理に一人で進める必要はありません。

家族や専門家と一緒に整理することで、精神的な負担を軽減しながら進めることも可能です。「通院が長いから難しい」と感じている方ほど、早めに状況を整理することが大切です。
まずは通院歴の年表を作ることから
いきなり申立書を書こうとせず、まずは受診した医療機関と時期を簡単な年表にまとめることから始めると整理しやすくなります。記憶があいまいな部分は、お薬手帳や診察券、健康保険の医療費通知などを手がかりに埋めていく方法もあります。すべてを一人で正確に思い出す必要はなく、分かる範囲から少しずつ整理していく進め方で十分です。
よくある質問
Q. 昔の病院のカルテが残っていない場合、初診日はどうなりますか?
A. カルテがなくても、お薬手帳・診察券・紹介状・第三者証明などから初診日を推定する方法があります。まずは当時の記録が何か残っていないか確認してみましょう。
Q. 通院を自己判断でやめていた時期があっても、申請できますか?
A. できます。通院していなかった理由や当時の状態を申立書に具体的に記載することで、審査に正しく伝えることができます。
Q. 病名が何度も変わっている場合、診断書はどの病名で書いてもらえばいいですか?
A. 現在の診断名で作成してもらうのが基本です。ただし、それまでの病名の変遷が同一傷病として扱われるかどうかは初診日の判断に影響するため、事前に整理しておくことが重要です。
Q. 家族が通院歴の整理を手伝ってもいいですか?
A. はい。本人が思い出すのがつらい場合、家族が一緒に振り返りながら年表を作る方法は実務上よく使われています。
まとめ:通院歴が長くても、正しく整理すれば申請につながります
精神疾患で通院歴が長い場合でも、初診日を正確に整理する、通院歴を意味のある形で整理する、生活への影響を具体的に伝えることで、障害年金の申請につながるケースは多くあります。「通院が長いから難しい」と感じている方ほど、早めに状況を整理することが大切です。判断に迷う点があれば、一人で抱え込まずご相談ください。
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参考資料
・精神の障害に係る等級判定ガイドラインの策定及び実施について(厚生労働省)
・障害認定基準(日本年金機構)
・用語集「初診日」(日本年金機構)
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