監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は厚生労働省の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
「却下」は、保険料納付要件を満たさない、初診日が証明できないなど、障害の程度を審査する段階まで至らずに退けられることをいいます。
「不支給」は、初診日や納付要件などの入口の要件は満たしているものの、実際に審査した結果、障害の程度が等級に該当しないと判断されることです。
どちらの結果であっても、決定を知った日の翌日から3か月以内であれば、社会保険審査官への審査請求という不服申立ての手段があります。
障害年金の審査結果が届いたとき、「却下」と「不支給」という似た言葉の違いが分からず、混乱してしまう方は少なくありません。同じ「もらえなかった」という結果でも、この2つは意味も、その後の対応もまったく異なります。
この記事では、「却下」と「不支給」がそれぞれどのような場合に出される結果なのか、そして受け取った後にどう対応すればよいのかを整理します。
通知書を受け取った直後は動揺してしまいがちですが、原因を正しく見極めることが、次の一手を考えるうえでの出発点になります。
「却下」とは、どのような場合に出される結果ですか?
却下とは、障害の程度を審査する段階に至る前に、入口の要件を満たしていないとして退けられることです。障害の状態そのものは審査されません。
却下になる主なケース
却下は、次のような理由で出されることが多くなっています。保険料納付要件(初診日の前日において、一定の保険料納付済期間・免除期間があること)を満たしていない場合、初診日を証明する資料がどうしても得られない場合、申請書類の不備が期限までに補正されなかった場合などです。これらはいずれも、障害の状態を評価する以前の、請求そのものの前提条件に関わる問題です。障害の程度がどれほど重くても、これらの入口の要件を満たしていなければ、審査そのものに進むことができません。
「不支給」とは、どのような場合に出される結果ですか?
不支給とは、初診日や保険料納付要件などの入口の要件は満たしたうえで、実際に障害の程度を審査した結果、等級に該当しないと判断されることをいいます。いわば、審査の最後まで進んだうえでの結論です。
不支給になる主なケース
不支給は、診断書に記載された日常生活能力の程度や検査数値などが、障害認定基準の等級に届かないと判断された場合に出されます。障害基礎年金であれば2級、障害厚生年金であれば3級に該当しないと判断されると、不支給決定になります。診断書の内容と病歴・就労状況等申立書の内容に食い違いがある場合も、実際の状態が正しく伝わらず、不支給の一因になることがあります。例えば、診断書には「一人での外出が困難」と記載されているのに、申立書には日常の買い物や通院を一人でこなしている様子が書かれていると、審査側にとって矛盾した印象を与えてしまいます。
「却下」も「不支給」も、結局もらえなかったことに変わりはないですよね
社労士結果としては同じですが、原因がまったく違います。却下は入口の要件、不支給は障害の程度の問題ですので、次にどう対応すべきかも変わってきます
却下と不支給、審査結果はどうやって見分ければいいですか?
届いた通知書の名称と、同封されている「決定の理由」の記載内容を確認することで見分けられます。令和2年4月以降は、この理由書が以前より詳しく記載されるようになっており、以前より判断しやすくなっています。

却下と不支給の違い
| 却下 | 不支給 | |
|---|---|---|
| 審査の段階 | 入口の要件で止まる | 障害の程度まで審査される |
| 主な理由 | 保険料納付要件不足、初診日の証明不可等 | 障害の程度が等級に該当しない |
| 再請求で変わる可能性 | 要件自体が変わらない限り低い | 資料の見直しにより変わる余地がある |
不支給決定通知書には「決定の理由」という書面が同封されており、「現在の状態は障害の状態に該当しません」「認定日も障害の状態に該当しません」といった判断の根拠が記載されています。以前はこの理由が簡潔すぎるという指摘がありましたが、不支給の取消を求める裁判の過程などを経て、現在はより具体的な記載がされるようになっています。「日常生活能力の程度」の評価内容や、認定日頃の就労状況など、判断の根拠となった具体的な事情が書かれることが多くなっています。却下の場合も同様に、理由書には保険料納付要件のどの部分を満たしていないか等が記載されますので、あわせて確認しておきましょう。
却下や不支給の通知を受け取ったら、どう対応すればいいですか?
決定を知った日の翌日から3か月以内であれば、社会保険審査官への審査請求という不服申立てができます。期限を過ぎた場合は、あらためて請求し直す「再請求」という方法も選べます。

審査請求(不服申立て)
決定(処分)があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、地方厚生(支)局の社会保険審査官に対して審査請求を行うことができます。審査請求の結果にさらに不服がある場合は、決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内に、厚生労働省の社会保険審査会へ再審査請求を行うことも可能です。審査請求は文書または口頭で行うことができますが、口頭の場合は面談のうえで聴取書が作成されるなど、一定の手続きが必要になります。
| 手続き | 期限 | 窓口 |
|---|---|---|
| 審査請求 | 決定を知った日の翌日から3か月以内 | 地方厚生(支)局の社会保険審査官 |
| 再審査請求 | 審査請求の決定書謄本送付の翌日から2か月以内 | 厚生労働省の社会保険審査会 |
| 行政訴訟 | 再審査請求の裁決から原則6か月以内 | 裁判所 |
再請求(改めての申請)
審査請求の期限を過ぎてしまった場合や、そもそも不服申立てではなく状況の変化を反映させたい場合は、あらためて請求をやり直す「再請求」という方法があります。却下の場合は、却下の原因となった要件(保険料納付要件や初診日の証明)そのものが解消されない限り、再請求しても同じ結果になりやすい点に注意が必要です。一方、不支給の場合は、前回の請求時よりも症状が悪化していれば、その状態を反映した新しい診断書で再請求することで、結果が変わる可能性があります。
審査請求と再請求、どちらを選べばいいのか迷っています
社労士決定書の内容と、ご自身の記憶や資料に食い違いがあると感じるなら審査請求、症状や記載内容を見直して再チャレンジしたいなら再請求が向いています。まずは決定の理由を一緒に確認させてください
却下と不支給で、その後の対応は変わりますか?
はい、大きく変わります。却下は要件そのものが原因のため、その要件を満たさない限り結果は変わりにくく、不支給は診断書や申立書の内容を見直すことで結果が変わる余地があります。
例えば却下の理由が保険料納付要件であれば、初診日そのものが変わらない限り、何度請求しても同じ結果になります。一方、不支給の理由が「日常生活能力の程度の評価」であれば、診断書に実際の生活状況がより具体的に反映されるよう医師に相談したり、病歴・就労状況等申立書の記載を見直したりすることで、次回の結果が変わる可能性があります。まずは「決定の理由」を読み、原因が入口の問題なのか、評価の問題なのかを見極めることが、次の一歩を考える出発点になります。
よくある質問
Q. 通知書に「却下」「不支給」どちらの言葉も書かれていない場合は?
A. 通知書の正式名称は「国民年金・厚生年金保険の支給しない理由のお知らせ」などとなっており、「却下」「不支給」という言葉そのものが前面に出ていないこともあります。同封の「決定の理由」を確認し、内容が分かりにくい場合は年金事務所に問い合わせましょう。窓口で「これは却下ですか、不支給ですか」と直接尋ねても構いません。
Q. 却下された場合、保険料を後から納めれば認められますか?
A. 保険料納付要件は初診日の前日時点の状況で判断されるため、初診日より後に保険料を納付しても、要件を満たすことにはなりません。この点は却下の理由の中でも覆すことが難しいケースです。ただし、初診日の特定自体に誤りがあった場合は、初診日を見直すことで結果が変わる可能性もあります。
Q. 不支給の理由はどこで詳しく確認できますか?
A. 不支給決定通知書に同封される「決定の理由」で確認できます。より詳しい審査の経緯を知りたい場合は、日本年金機構や厚生労働省への保有個人情報の開示請求により、「認定調書」などの内部資料を確認できる場合があります。開示請求には一定の手続きと時間がかかる点は覚えておきましょう。
Q. 審査請求と再請求、どちらを選べばいいですか?
A. 決定の判断内容そのものに誤りがあると考える場合は審査請求、症状や書類の内容を見直して新たに請求し直したい場合は再請求が向いています。審査請求は同じ資料をもとに判断の見直しを求める手続きであるのに対し、再請求は新しい資料をもとに一から審査してもらう手続きという違いも押さえておきましょう。
Q. 更新(再認定)で支給停止になった場合も同じ考え方ですか?
A. 更新時の「支給停止」は、いったん認められた受給権を前提に、症状が軽くなったと判断された場合に出される決定です。初めての請求における却下・不支給とは性質が異なりますが、不服がある場合の審査請求という仕組みは共通しています。支給停止の場合も、決定の理由をよく確認したうえで対応を検討しましょう。
Q. 審査請求で結果が覆る可能性はどのくらいありますか?
A. 一律に「何%覆る」とお伝えすることはできません。決定の理由と、提出した資料の内容を照らし合わせて、覆る見込みがあるかどうかを個別に判断する必要があります。判断に迷う場合は、専門家に資料を見てもらうことをおすすめします。
まとめ:原因が違えば、次にとるべき対応も変わります
「却下」は保険料納付要件や初診日の証明といった入口の問題で審査に至らなかった結果、「不支給」は審査までは進んだものの障害の程度が等級に該当しなかった結果です。同じ「もらえなかった」という結果でも、原因がまったく異なるため、その後に取るべき対応も変わってきます。決定を知った日の翌日から3か月以内であれば審査請求という手段もありますので、通知書と「決定の理由」をよく確認することが大切です。原因を正しく見極めないまま同じ内容で再請求してしまうと、また同じ結果を繰り返すことにもなりかねません。
通知書の内容が分かりにくい、次にどう動けばいいか分からないという方は、一人で抱え込まず専門家に相談することをおすすめします。決定の理由を一緒に読み解くだけでも、次の一歩が見えてくることがあります。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
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