監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法、日本年金機構の障害認定基準・診断書記載要領に基づき作成しています。
この記事の結論
摂食障害でも、うつ病などの併発や重い体の衰弱によって日常生活が著しく制限されていれば、障害年金の対象になります(国民年金法第30条)。
審査で見られるのは病名ではなく生活の支障なので、拒食・過食以外の困りごとを診断書に書いてもらうことが必要です。
診断書の記載要領は、拒食や過食の食行動そのものを「食べられない」とは評価しないと定めており、食事以外の項目の伝え方が結果を左右します。
「主治医から、摂食障害では障害年金は無理だと言われた」。こうしたご相談は少なくありません。
たしかに、障害認定基準には「摂食障害」という区分がありません。ただ、それは受給できないという意味ではありません。審査の仕組みを知り、伝えるべきことを診断書に反映できれば、道は開けます。この記事では、認定基準と診断書記載要領の原文をもとに、摂食障害で請求するときに押さえるべき点を整理します。
摂食障害は障害年金の対象になりますか?
対象になります。ただし、障害認定基準に「摂食障害」の区分はなく、病名ではなく病状と生活の支障で評価されます。
認定基準に並ぶ6つの区分
精神の障害の認定基準(障害認定基準 第8節)は、統合失調症、気分(感情)障害、症状性を含む器質性精神障害、てんかん、知的障害、発達障害の6区分で書かれています。摂食障害の名前は、本文のどこにも出てきません。
「神経症」とは別の分類です
診断書の記載要領は「神経症圏」をICD-10(国際疾病分類)のコードF4と定めており、摂食障害(F50)はこれに含まれません。
| 病名の区分 | 認定基準での扱い |
|---|---|
| 統合失調症・気分障害など6区分 | 区分ごとの基準で等級を判定 |
| 神経症(ICD-10のF4) | 原則対象外。精神病の病態を示すときは統合失調症・気分障害に準じる |
| 人格障害 | 原則対象外 |
| 摂食障害(ICD-10のF50) | 記載なし。病状と生活の支障で評価 |
まず確認したいのは、病名ではなく「いま生活のどこに支障が出ているか」です。そこが請求の出発点になります。
拒食や過食は、診断書でどう評価されますか?
拒食や過食の食行動そのものは、「適切な食事ができない」とは評価されません。

記載要領に書かれた注意書き
精神の診断書の裏面には、日常生活能力を7項目で判定する欄があります。日本年金機構の記載要領は、その1つ目「適切な食事」に「嗜癖的な食行動(たとえば拒食症や過食症)をもって『食べられない』とはしない」と注意書きを付けています。
つまり、食べられないつらさを「食事」の欄に書いてもらうだけでは、評価につながりにくいということです。
評価の中心になる残り6項目
食事以外の6項目(身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人との意思伝達・対人関係、身辺の安全保持・危機対応、社会性)に、実際の困りごとを反映してもらうことが大切です。入浴できない日が続く、買い物で混乱する、外出できないといった具体的な場面を、受診のときにメモで伝えておきます。
食べられないことがいちばんつらいのに、そこは評価されないんですか?
社労士つらさが軽く見られるわけではありません。食事の欄とは別に、そのつらさが入浴や外出、人との関わりにどう影響しているかを伝えると、生活の支障として評価の材料になります。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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どんな場合に受給が認められますか?
受給の道は、認定基準の区分に当たる病気や病態がある場合と、体の衰弱で生活が制限されている場合の大きく2つです。
うつ病などを併発している場合
うつ病や双極性障害は「気分(感情)障害」として認定基準の区分にあります。摂食障害と並んでこうした病気の診断を受けている場合は、診断書の傷病名欄にその病名とICD-10コードも書いてもらいます。記載要領は、請求する傷病名をすべて、コードとともに記入するよう求めています。
2つの道と、診断書で伝えること
| 受給の道 | 当てはまる状態 | 診断書で伝えること |
|---|---|---|
| 精神の障害として | うつ病・双極性障害などの併発、精神病の病態 | 併発している病名とICD-10コード、日常生活能力6項目の支障 |
| 体の衰弱として | 低栄養などで、身の回りのことにも介助が必要 | 検査の数値、横になっている時間、介助の内容 |
どちらの道で請求するかは、症状と経過によって変わります。主治医に相談する前に、ご自身の状態を整理しておくと話が進みやすくなります。
低体重や体力の低下は、審査で考慮されますか?
考慮されます。体の状態は、精神の診断書の病状欄と、生活の支障の記載を通じて審査の材料になります。

数値と生活の場面をそろえて伝える
体重の推移、血液検査の結果、入院の有無は、病状の重さを示す客観的な材料です。あわせて「階段が上れない」「1日の大半を横になって過ごす」など、数値が生活にどう表れているかを伝えます。数値だけ、困りごとだけでは、重さが伝わりにくくなります。
身体の障害として見る基準もあります
障害認定基準の第18節「その他の疾患による障害」は、ほかの節で扱わない疾患を対象とし、2級は「一般状態区分表」のエ又はウに当たる状態を目安にしています。エは、身の回りのことはある程度できても、しばしば介助が必要で、日中の50%以上を横になって過ごす状態を指します。衰弱が重い方は、精神の面だけで請求するか、身体の面もあわせて見てもらうか、事前に専門家と整理してください。
よくある質問
Q. 主治医に「摂食障害は対象外」と言われたら、あきらめるしかありませんか?
A. あきらめる必要はありません。認定基準に摂食障害の区分はありませんが、併発している病気や生活の支障があれば評価の対象になります。困りごとを整理したうえで、診断書に反映できるか主治医に相談してください。
Q. 過食症でも、考え方は同じですか?
A. 同じです。診断書の記載要領は、拒食症と過食症を並べて、食行動そのものを「食べられない」とは評価しないとしています。評価は、食事以外の日常生活能力と、うつ状態などの病状で決まります。
Q. 精神障害者保健福祉手帳がなくても請求できますか?
A. 請求できます。手帳と障害年金は別の制度で、手帳を持っていることは障害年金の受給要件ではありません。手帳の等級と年金の等級も、それぞれ別の基準で判定されるため、手帳の等級だけで見通しを決めないでください。
Q. 会社員のときに初診日があると、何が違いますか?
A. 初診日に厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象になり、3級まで受け取れる可能性があります(厚生年金保険法第47条)。初診日に国民年金だけに加入していた場合の障害基礎年金は、1級と2級だけです(国民年金法第30条)。
まとめ:病名ではなく、生活の支障を伝えることから
摂食障害は認定基準に区分がなく、拒食や過食の食行動そのものは診断書の「食事」の評価になりません。だからこそ、併発している病気や、入浴・外出・人との関わりといった生活の支障を、具体的な場面で主治医に伝えることが第一歩です。体の衰弱が重い場合は、身体の面からの見方もあわせて検討してください。
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参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・ICD-10(2013年版)準拠「疾病、傷害及び死因の統計分類」第V章 精神及び行動の障害(厚生労働省)
・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害/第18節 その他の疾患による障害(日本年金機構)
・障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領(日本年金機構)
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