監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・国の障害認定基準・日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
適応障害からうつ病に病名が変わった場合、初診日は原則として、適応障害の症状で初めて医師の診察を受けた日です。
初診日は「障害の原因となった傷病」につき初めて受診した日で決まるため、うつ病と診断された日に移ることはありません。
ただし、適応障害の治療が終わり、通院せずに普通に働けていた期間が長い場合は、うつ病を別の病気として扱う余地があります。
「最初は適応障害と言われたけれど、今はうつ病と診断されている。初診日はどちらの日になるのだろう」と迷う方は少なくありません。
この記事では、病名が変わったときの初診日の決まり方と、初診日が別になる場合、最初の病院の証明の取り方を、国の障害認定基準と日本年金機構の資料をもとに整理します。
適応障害からうつ病に病名が変わったら、初診日はいつですか?
初診日は原則として、適応障害の症状で初めて医師の診察を受けた日です。うつ病と診断された日ではありません。
初診日は「病名」ではなく「傷病」で決まる
障害認定基準は、初診日を「障害の原因となった傷病につき、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」と定めています。気分の落ち込みや意欲の低下が続き、診断名が適応障害からうつ病に変わっただけなら、同じ傷病として最初の受診日が初診日になります。
適応障害の前に内科を受診していれば、さらにさかのぼる
適応障害と診断される前に、眠れない、食欲がないなどの症状で内科を受診していた場合は、その日が初診日になることがあります。診療科は問われないため、心療内科や精神科より前の受診歴も書き出しておきましょう。
病名が変わったことで、申請は不利になりますか?
不利にはなりません。うつ病と診断されたことで、障害年金の審査の対象になります。うつ病は、障害認定基準では「気分(感情)障害」という区分の中で審査されます。病名と初診日は、それぞれ次のように扱われます。

| 適応障害 | うつ病 | |
|---|---|---|
| 認定基準での扱い | 神経症として、原則は認定の対象外 | うつ病として認定の対象(認定基準上は「気分(感情)障害」の区分) |
| 初診日になる日 | 一連の症状で最初に医師の診察を受けた日(病名が変わっても動かない) | |
| 診断書の傷病名 | 請求する時点で主治医が診断している病名 | |
適応障害のままでは、原則として認定の対象外
障害認定基準は、神経症について「原則として、認定の対象とならない」と定めています。ただし、臨床症状から精神病の病態を示しているものは、統合失調症または気分(感情)障害に準じて扱うとしています。うつ病への診断名の変更は、この「精神病の病態」に当たるかどうかに関わる大切な情報です。
障害認定日の頃の診断名にも注意する
さかのぼって請求する場合は、障害認定日(初診日から1年6か月を経過した日)の頃の状態が審査されます。その頃にまだ適応障害と診断されていた場合は、当時の状態がうつ病の病態を示していたかどうかが問われるため、カルテの記載を主治医に確認してもらいましょう。
最初の病院では適応障害、今の病院ではうつ病です。どちらの病院に何を頼めばいいですか?
社労士最初の病院には初診日の証明(受診状況等証明書)を、今の病院には診断書をお願いします。病名が違っていても、受診の流れがつながっていれば問題ありません。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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初診日が別の日になるのは、どんな場合ですか?
適応障害とうつ病が、別の病気と判断される場合です。その場合は、うつ病の症状で初めて受診した日が初診日になります。
前の病気とのつながりがないと判断される場合
障害認定基準は、前の病気がなければ後の病気が起こらなかったといえる関係を「相当因果関係」と呼び、この関係がある病気を同じ傷病として扱います。たとえば数年前に別の原因で適応障害と診断され、その後まったく別の出来事をきっかけにうつ病を発症した場合は、別の傷病と判断されることがあります。
治療を終え、普通に働けた期間が長くある場合
適応障害の治療が終わり、薬も通院もなく普通に働けていた期間が長くある場合は、「社会的治癒」という考え方で、うつ病を新たな傷病として扱う余地があります。初診日が後ろにずれると、加入していた年金制度や保険料の要件の判断も変わるため、どちらの日で請求するかは、迷ったら専門家に相談したうえで慎重に決めてください。
最初の病院の証明が取れないときは、どうすればいいですか?
2番目以降に受診した病院の証明や、診察券・お薬手帳などの資料で初診日を示せる場合があります。まずは最初に適応障害と診断された病院に、受診状況等証明書を依頼しましょう。

最初の病院には「受診状況等証明書」を依頼する
受診状況等証明書は、初診日を証明するための書類です。最初の病院と、いま診断書を書いてもらう病院が違う場合に必要になります。証明書の傷病名が「適応障害」でも、症状の経過がうつ病につながっていれば、そのまま初診日の証明として使えます。
カルテがないときは、ほかの資料を集める
日本年金機構は、最初の病院の証明が取れない場合に、2番目以降の病院が作成した受診状況等証明書や、診察券、薬局の領収書、健康保険の給付記録などを参考資料として挙げています。請求の5年以上前に作られたカルテの写しに、本人が申し立てた初診日が書かれていれば、初診日が認められる場合もあります。
よくある質問
Q. 適応障害で1回しか受診していなくても、その日が初診日ですか?
A. 受診の回数は関係ありません。その受診がうつ病と一連の症状によるものであれば、1回だけでも初診日になります。カルテが残っていれば1回の受診でも受診状況等証明書を依頼できるため、早めに病院へ問い合わせましょう。
Q. 会社員のときに適応障害で受診し、退職後にうつ病と診断された場合は?
A. 初診日が会社員のときなら、厚生年金に加入中の初診として障害厚生年金の対象になります。障害厚生年金には3級もあるため(厚生年金保険法第47条)、退職後の診断日ではなく最初の受診日を必ず確認してください。
Q. 初診日が早まると、保険料の要件はどう変わりますか?
A. 保険料の納付要件は、初診日の前日の時点で判断されます(国民年金法第30条第1項)。初診日が早まれば判断の時点も早まるため、その頃に未納の期間がなかったかを、ねんきんネットや年金事務所で確認し直してください。
Q. 病歴・就労状況等申立書は、どこから書けばいいですか?
A. 適応障害の症状が出始めた頃から書き始めます。日本年金機構の記入要領は、発病から現在まで期間をあけずに順番に書き、5年を超える期間は3〜5年ごとに区切るよう求めています。受診していない期間も、「受診していない」として書きます。
まとめ:病名が変わっても、初診日は最初の受診日が基本
適応障害からうつ病に病名が変わっても、初診日は原則として最初に適応障害の症状で受診した日のままです。まずは最初の病院名と受診日を確かめ、その病院に受診状況等証明書を依頼できるかを確認するところから始めてみてください。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(第1章 一般的事項・第8節 精神の障害)(日本年金機構)
・障害年金の初診日証明書類のご案内(日本年金機構)
・病歴・就労状況等申立書の記入にあたって(日本年金機構)
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