監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は厚生年金保険法・障害認定基準・日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
頸椎症性脊髄症でも、手足のしびれや動かしにくさ、歩きにくさが残り、生活や仕事に支障があれば障害年金を申請できます。
手足の両方に障害がある場合は「肢体の機能の障害」として、日常生活の動作の状態から総合的に等級が決まります(障害認定基準 第7節)。
頸椎の手術は障害認定日を早める特例に含まれず、原則は初診日から1年6か月を経過した日が基準です。
首の骨の変化で脊髄が圧迫され、手のしびれや箸の使いにくさ、つまずきやすさが続く。手術を受けても症状が残り、以前のように働けなくなった。頸椎症性脊髄症は、こうした悩みを抱えやすい病気です。
この記事では、障害年金の対象になるか、等級の決まり方、手術との関係、初診日と請求の時期を、日本年金機構の資料をもとに整理します。
頸椎症性脊髄症でも、障害年金は申請できますか?
申請できます。病名ではなく、手足に残った障害で日常生活や仕事がどれだけ制限されているかで判断されます。
どんな症状が審査の対象になるか
頸椎症性脊髄症では、手指のしびれや細かい動作のしにくさ(ボタンをかける、字を書くなど)、手足の筋力の低下、歩きにくさが出ることがあります。こうした手足の機能の障害が、審査の対象です。
診断書は「肢体の障害用」を使う
手足の障害は、肢体の障害用の診断書で審査されます。診断書には、関節の動く範囲や筋力に加え、日常生活の動作がどのくらいできるかを書く欄があります。整形外科など、経過を診ている医師に作成を依頼しましょう。
頸椎症性脊髄症の等級は、どのように決まりますか?
手足の両方に障害がある場合は、「肢体の機能の障害」として、日常生活の動作の状態から総合的に決まります。
上肢・下肢を別々に見るのではない
障害認定基準 第7節は、脊髄の障害などで手足の広い範囲に障害がある場合、上肢・下肢それぞれの基準によらず「肢体の機能の障害」として認定するとしています。程度は、関節可動域、筋力、巧緻性(細かい動作の正確さ)、速さ、耐久性を考慮し、日常生活の動作の状態から総合的に判断されます。
| 等級 | 肢体の機能の障害の例示(要旨) | 対象の年金 |
|---|---|---|
| 1級 | 一上肢と一下肢の用を全く廃したもの、または四肢の機能に相当程度の障害を残すもの | 障害基礎年金・障害厚生年金 |
| 2級 | 一上肢と一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの、または四肢に機能障害を残すもの | 障害基礎年金・障害厚生年金 |
| 3級 | 一上肢と一下肢に機能障害を残すもの | 障害厚生年金のみ |
見られる日常生活の動作
認定基準は、手指では物をつまむ・握る・タオルを絞る・紐を結ぶ、上肢では食事・洗顔・上着の着脱、下肢では片足で立つ・歩く・立ち上がる・階段の昇り降りなどの動作を挙げています。どの動作に、どのくらい手間や助けが必要かを書き出しておきましょう。

しびれはあるけれど、時間をかければ自分で着替えられます。それでも対象になりますか?
社労士「できるけれど、とても時間がかかる」「何度もやり直す」も大切な情報です。速さや正確さも評価の対象なので、具体的に医師へ伝えましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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手術を受けた後でも、障害年金はもらえますか?
もらえます。手術の後に残った手足の障害の状態で判断されます。
頸椎の手術は、障害認定日の特例に入らない
障害の程度を判断する日(障害認定日)は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。日本年金機構は、人工関節を入れた日や切断した日など、それより早く認定日になる特例を挙げていますが、頸椎の手術はその中に含まれていません。手術をした日が、そのまま認定日になるわけではありません。
手術の前後の経過を記録しておく
手術で良くなった動作と、残った動作を分けて整理しておきましょう。障害認定日の頃の状態がわかる受診記録があれば、さかのぼって請求できる場合もあります。手術を受けた病院と、その前に通っていた病院の名前と時期を書き出しておくと役立ちます。
加齢による病気でも、初診日や請求の考え方は同じですか?
同じです。加齢が原因でも、初診日にどの年金に入っていたか、いつまでに請求するかで受け取れる年金が決まります。
初診日は、しびれで最初に受診した日
国民年金法第30条第1項は、初診日を、その病気について「初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」としています。病名がつく前に、手のしびれで内科や整形外科にかかっていれば、その日が初診日になることがあります。3級は障害厚生年金だけの等級なので(厚生年金保険法第47条第2項)、初診日が会社勤めの間かどうかも大切です。

事後重症請求は65歳になる前に
障害認定日には軽く、その後に重くなった場合の請求(事後重症請求)について、日本年金機構は「請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります」としています。50代・60代で発症しやすい病気なので、請求の時期は早めに確認しておきましょう。
よくある質問
Q. 頸椎症性脊髄症で認定されると、年金額はいくらですか?
A. 障害基礎年金2級は、令和8年4月分から年額847,300円です(昭和31年4月2日以後生まれの方)。障害厚生年金3級は報酬比例の額で、最低保障額は年額635,500円です。初診日に厚生年金に入っていれば、2級以上は両方を受け取れます。
Q. 身体障害者手帳の等級と、障害年金の等級は同じですか?
A. 同じになるとは限りません。手帳と障害年金は別の制度で、基準も審査も別々です。障害年金は、肢体の障害用の診断書をもとに、障害認定基準に沿って判断されます。手帳の等級は、あくまで参考程度にとどめましょう。
Q. 腕の痛みやしびれが中心の頸椎症性神経根症でも対象になりますか?
A. 痛みだけでは、原則として認定の対象になりません。障害認定基準 第9節は、疼痛を原則として認定の対象外としています。ただし、筋力の低下などで腕の機能に障害が残っていれば、肢体の障害として審査されます。
Q. 3級より軽い場合は、何も受け取れませんか?
A. 障害手当金を受け取れる場合があります。初診日に厚生年金に入っていて、初診日から5年以内に症状が固定した(治った)場合の一時金です(厚生年金保険法第55条)。症状が変わり続けている間は対象になりません。
まとめ:日常生活の動作を具体的に伝える
頸椎症性脊髄症は、手術を受けた後でも、手足の障害が残っていれば障害年金の対象になります。等級は、つまむ・握る・着替える・歩くといった動作が、どのくらいできるかで総合的に判断されます。まずは初診日と手術前後の経過を整理し、困っている動作を医師に具体的に伝えましょう。請求の時期や等級の見通しに迷うときは、お気軽にご相談ください。
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交通事故を契機に発症した靭帯骨化症|下肢麻痺が進行し障害厚生年金1級に認定されたケース|香川県
参考資料
・厚生年金保険法 第47条・第55条(e-Gov法令検索)
・障害認定基準 第7節 肢体の障害 第4 肢体の機能の障害(日本年金機構)
・年金用語集「障害認定日」(日本年金機構)
・障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)
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