監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法・日本年金機構の障害認定基準・難病情報センターの公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
全身性強皮症は障害年金の対象になる疾患で、障害認定基準第18節「その他の疾患による障害」に基づいて認定されます。
認定のポイントは皮膚の硬化そのものではなく、間質性肺疾患・肺高血圧症・腎クリーゼなど内臓への障害が、日常生活や労働にどれだけ支障を与えているかです。
皮膚症状だけを見ると軽症に思えても、肺や心臓の検査数値によっては2級以上に認定される可能性があるため、自己判断で「対象外」と決めつけないことが重要です。
「強皮症と診断されたけれど、障害年金は関係ないと思っていた」というお声を、ご相談の中でよく耳にします。全身性強皮症は国の指定難病(指定難病51)で、皮膚だけでなく肺・心臓・消化管など全身の臓器に影響が及ぶことがある病気です。
障害年金というと、肢体の障害や精神疾患のイメージが強く、内臓に症状が出る難病は対象外だと考えてしまう方が少なくありません。しかし全身性強皮症は、障害認定基準の中できちんと「対象疾患」として扱われています。
この記事では、社会保険労務士の視点から、全身性強皮症で障害年金の対象になるケースと、申請にあたって押さえておきたいポイントを整理します。診断されたばかりの方はもちろん、通院を続けながら「そろそろ生活が大変になってきた」と感じ始めた方にも、参考にしていただける内容です。
全身性強皮症は障害年金の対象になりますか?
対象になります。全身性強皮症は、障害認定基準第18節「その他の疾患による障害」の中で扱われる、指定難病の一つです。
障害認定基準第1節「眼の障害」から第17節「高血圧症による障害」までのいずれにも当てはまらない疾患は、この第18節でまとめて扱われます。全身性強皮症のほか、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群、混合性結合組織病といった膠原病・難病がここに含まれます。
皮膚だけでなく内臓の障害も評価対象
全身性強皮症は皮膚が硬くなる病気として知られていますが、進行すると肺線維症や肺高血圧症、心臓の不整脈、腎クリーゼ、消化管の機能障害など、複数の臓器に影響が及ぶことがあります。障害認定基準第18節の認定要領では、いわゆる難病について「客観的所見に基づいた日常生活能力等の程度を十分考慮して総合的に認定する」とされています。皮膚症状の見た目だけで判断されるわけではありません。
障害基礎年金・障害厚生年金どちらも対象
初診日にどの年金制度に加入していたかによって、支給される年金が変わります。国民年金加入中であれば国民年金法第30条に基づく障害基礎年金、厚生年金加入中であれば厚生年金保険法第47条に基づく障害厚生年金が支給の対象です。
「強皮症」という診断名がついたばかりの段階では、まだ障害年金のことまで考えられないという方も多いはずです。ですが、抗セントロメア抗体や抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体などの検査で診断が確定した時点で、すでに内臓への影響が始まっている場合もあります。診断確定後は、皮膚科だけでなく内科的な経過観察もあわせて記録しておくことが、将来の申請につながります。
皮膚の症状が軽くても、内臓の数値だけで認定されることはありますか?

あります。皮膚硬化がそれほど目立たなくても、肺機能や心エコーの数値が悪化していれば、その臓器の障害として認定される可能性があります。
これは全身性強皮症の申請で、意外と見落とされやすいポイントです。難病情報センターの重症度分類では、皮膚・肺・心臓・腎・消化管のうち最も重症度スコアの高いものを基準に、医療費助成の対象を判断しています。障害年金の認定でも、同じように「どの臓器がいちばん重いか」が見られます。
手の皮膚はそこまで硬くなっていないので、対象にならないと思っていました。
社労士皮膚の見た目だけでは判断できません。肺や心臓の検査結果次第で、対象になることは十分にあります。まずは検査データを一緒に確認しましょう。
間質性肺疾患・肺高血圧症が特に重要
全身性強皮症の死因としてもっとも多いのが間質性肺疾患です。呼吸機能検査の数値や在宅酸素の要否は、内臓疾患としての等級判定に直結します。
「見た目は元気そう」が誤解を生みやすい
手指の皮膚硬化だけを見ると軽症に見えても、実際は肺や心臓に大きな負担がかかっているケースは少なくありません。診断書を依頼する際は、皮膚科だけでなく呼吸器内科や循環器内科の検査結果も、あわせて主治医に伝えることが大切です。
何級に認定される可能性がありますか?
日常生活の制限の程度によって1級から3級まで認定される可能性があり、内臓病変が重いほど上位等級になりやすい傾向があります。
障害認定基準第18節では、その他の疾患による障害の程度について、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度を1級、日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度を2級、労働に制限を加えることを必要とする程度を3級としています。
| 目安となる状態 | 対象となる年金 | |
|---|---|---|
| 1級 | 日常生活の用をほとんど自分で行えない | 障害基礎年金・障害厚生年金 |
| 2級 | 日常生活に著しい制限がある | 障害基礎年金・障害厚生年金 |
| 3級 | 労働に著しい制限がある | 障害厚生年金のみ |
障害基礎年金と障害厚生年金の等級の違い
障害基礎年金は1級・2級のみで、3級はありません。初診日に国民年金第1号被保険者(自営業・専業主婦など)だった方は、3級相当の状態でも年金が支給されない場合がある点に注意が必要です。
複数の臓器障害がある場合の考え方
肺と心臓の両方に障害がある場合など、複数臓器の症状がある場合は、それぞれの重さを踏まえて総合的に等級が判断されます。1つの臓器だけでは3級相当でも、肺と心臓の両方に軽度の障害があることで、あわせて2級と判断されるケースもあります。
なお、障害厚生年金3級には最低保障額が設定されており、報酬比例部分の計算結果がこの額を下回る場合でも、最低保障額まで引き上げられます。給与収入が少なかった時期に初診日がある方でも、極端に低い年金額にはならない仕組みです。
初診日はいつとして扱われますか?

レイノー現象や関節の痛みで最初に医療機関を受診した日が、初診日になるのが原則です。
全身性強皮症は、皮膚硬化がはっきり出るより前に、指先が白くなったり紫色になったりするレイノー現象だけが、数年から十年以上先行することが珍しくありません。
「強皮症」と診断される前の受診も初診日になり得る
内科や皮膚科でレイノー現象について相談し、その後の検査で全身性強皮症と診断された場合、最初にレイノー現象で受診した日が初診日として扱われることがあります。
転院を重ねている場合はカルテの確認を
大学病院の膠原病内科を紹介される前に、複数の医療機関を受診しているケースも多くあります。受診状況等証明書を取得する際は、一番古い受診歴までさかのぼって確認することが大切です。転院を繰り返すうちに一番最初の病院のカルテが残っていないこともありますが、その場合でも診察券やお薬手帳、健康診断の記録などが初診日の証拠として認められることがあります。あきらめずに手元の資料を確認してみてください。
診断書はどの様式を使えばいいですか?
どの臓器に一番重い障害が出ているかによって、使用する診断書の様式が変わります。
全身性強皮症は複数の臓器に症状が及ぶ疾患のため、診断書の様式も一つとは限りません。
主な症状に応じた診断書の様式
皮膚硬化による手指の機能障害が中心であれば肢体の障害用の診断書、呼吸機能の低下が中心であれば呼吸器疾患用の診断書というように、もっとも重い症状に応じた様式を主治医に選んでもらいます。
複数の障害をまとめて評価する「併合認定」
肺と皮膚の両方に相応の障害がある場合など、複数の障害を組み合わせて認定する「併合認定」が検討されることもあります。この場合は、それぞれの臓器について別々の診断書が必要になることがあります。
診断書の様式は日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできますが、どの様式を選ぶべきかは症状の組み合わせによって判断が分かれます。迷ったときは、自己判断で1種類に絞り込む前に、年金事務所や社労士に相談することをおすすめします。
よくある質問
Q. 指定難病の医療費助成と、障害年金は両方使えますか?
A. 両方使えます。指定難病の医療費助成(特定医療費)と障害年金は別の制度のため、それぞれの要件を満たせば同時に利用できます。
Q. レイノー現象だけの時期でも、もう申請できますか?
A. レイノー現象だけの段階では、通常は障害等級に該当しません。全身性強皮症の診断が確定し、皮膚硬化や内臓病変が進行してからの申請が現実的です。ただし、レイノー現象で受診した日は将来の初診日の候補になるため、当時の受診記録は残しておくと安心です。
Q. 症状の波がある場合、更新のときに等級はどうなりますか?
A. 更新時に提出する診断書の内容によって、等級が変わる可能性があります。症状が改善していれば、等級が下がったり支給停止になったりすることもあるため、更新前の状態を正確に伝えることが重要です。
Q. 強皮症腎クリーゼで人工透析が必要になった場合はどうなりますか?
A. 人工透析が必要な状態であれば、原因が強皮症腎クリーゼであっても、腎疾患の認定基準に沿って重い等級になる可能性があります。
Q. 皮膚科にしか通院していませんが、申請の準備はできますか?
A. 皮膚科の通院歴だけでも申請の準備は始められます。ただし内臓病変の有無を正確に診断書へ反映するには、膠原病内科など専門医の受診をおすすめします。
Q. 家族が全身性強皮症です。今から準備できることはありますか?
A. 今のうちに初診日や通院歴を記録しておくことをおすすめします。将来申請が必要になったときに、初診日の証明がスムーズになります。
まとめ:全身性強皮症の障害年金は「内臓の状態」がカギ
全身性強皮症は、皮膚の症状だけを見ると軽く思われがちですが、肺や心臓、腎臓など内臓への影響次第で、障害年金の対象になる病気です。国民年金法第30条・厚生年金保険法第47条の支給要件を満たしていれば、指定難病であることは何のマイナスにもなりません。
令和元年度の医療受給者証保持者数は26,728人で、その多くが女性の患者さんです(難病情報センター調べ)。「自分だけがつらいのでは」と感じる必要はありません。
診断書の様式選びや初診日の整理など、専門的な判断が必要な場面も多い疾患です。当事務所は香川県観音寺市に事務所を構え、全国どこからのご相談にも対応していますので、申請を検討される際はお気軽にご相談ください。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
- 国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
- 厚生年金保険法 第47条(e-Gov法令検索)
- 全身性強皮症(指定難病51)診断・治療指針(難病情報センター)
- 障害認定基準 第18節「その他の疾患による障害」(日本年金機構)
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