監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金・厚生年金保険障害認定基準・日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
アジソン病(副腎皮質機能低下症)は障害年金の対象になり得る疾患で、障害認定基準では「代謝疾患による障害」として、合併症の程度や治療経過、日常生活状況等を総合的に考慮して1〜3級のいずれかに認定されます(障害認定基準第1章第15節)。
ホルモン補充療法を続けていても症状が安定しない場合や、日常生活・就労に著しい制限が生じている場合は、認定の対象になる可能性があります。
アジソン病には糖尿病のようなHbA1c等の数値基準が設けられておらず、一般状態区分表をもとに総合的に判断されるため、日常生活でどれだけ支障が出ているかを診断書に具体的に反映してもらうことが、他の代謝疾患以上に重要になります。
アジソン病(副腎皮質機能低下症)と診断され、ホルモン補充療法を続けながら生活している方の中には、「治療でコントロールできているのだから、障害年金の対象にはならないだろう」とあらかじめ諦めてしまっている方が少なくありません。糖尿病のように「HbA1cが〇%以上」といった分かりやすい数値基準がないことも、対象になるかどうかの判断を難しくしている一因です。周囲から「薬を飲んでいるだけなのに大げさでは」と誤解されてしまうことに、もどかしさを感じている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、数値基準がないからといって対象外というわけではありません。この記事では、アジソン病が障害年金の審査でどのように扱われるのか、そして認定を左右するポイントを社労士の視点から解説します。
アジソン病は、障害年金の対象になりますか?
アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、障害年金の対象になり得る疾患です。障害認定基準では「代謝疾患による障害」の中の「その他の代謝疾患」として扱われます(障害認定基準第1章第15節)。
障害認定基準の代謝疾患の節は、患者数が多い糖尿病について詳しく基準を定めていますが、糖尿病以外の代謝疾患(アジソン病を含む)についても、合併症の有無・程度、治療の経過、日常生活の状況等を十分考慮して総合的に認定するとされています。数値による明確な線引きがない分、審査する側の裁量が大きくなりやすいため、伝え方の工夫がより重要になる疾患だといえます。
原発性か続発性かは問われません
アジソン病(原発性副腎皮質機能低下症)だけでなく、下垂体の病変による続発性の副腎皮質機能低下症も、同じ節の基準で認定の対象になります。原因が何であるかよりも、実際にどれだけの障害が生じているかが審査の中心になります。下垂体腫瘍の術後やシーハン症候群など、続発性の原因はさまざまですが、いずれも同様の考え方で審査されます。
指定難病であることと障害年金は別の話です
アジソン病は国の指定難病に指定されていますが、難病医療費助成の対象になることと、障害年金の対象になることはまったく別の制度です。難病の医療費助成を受けていない場合でも、障害の状態が基準を満たせば障害年金を申請できます。逆に、医療費助成を受けているからといって、自動的に障害年金が認定されるわけでもありません。それぞれ審査の主体も基準もまったく異なるため、片方の結果をもう片方の判断材料にしないよう注意が必要です。
アジソン病の障害等級は、どのように判断されますか?

糖尿病のようなHbA1c等の数値基準はなく、一般状態区分表(ア〜オの5段階)をもとに、日常生活や就労にどれだけ支障が出ているかを総合的に考慮して等級が判断されます。
一般状態区分表の「オ」(身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床)に近いほど1級に、「エ」「ウ」(日中の50%以上就床、軽労働ができない等)に近いほど2級に、「ウ」「イ」(軽度の症状があり肉体労働は制限されるが軽労働はできる)に近いほど3級に、それぞれおおむね相当するとされています。この区分表はあくまで目安であり、実際には合併症の有無や治療経過なども含めて総合的に判断されます。
| 等級 | 一般状態区分表の目安 | 状態の例 |
|---|---|---|
| 1級 | オ | 常に介助が必要で終日就床、活動範囲がベッド周辺 |
| 2級 | エ・ウ | 日中の50%以上就床、軽労働ができない |
| 3級 | ウ・イ | 軽度の症状があり肉体労働は制限される |
ホルモン補充で症状が落ち着いている場合
適切な補充療法によって症状が安定していると、日常生活への支障が小さいと判断されやすく、認定される等級も低くなる傾向があります。一方で、補充療法を続けていても倦怠感や体調の波が残っている場合は、その実態を診断書に反映してもらうことが重要です。
ホルモン補充療法を続けていても、申請の対象になりますか?
対象になります。治療によって一定の生活が送れていても、症状の波や体調管理の負担が続いている場合は、その状態が審査の対象になります。
アジソン病は、ステロイドホルモンの補充を生涯続ける必要があることが多い病気です。日々の服薬管理や、体調の変化に応じた薬の調整が欠かせず、天候や感染症、ストレスなどで容易に体調を崩しやすいという特徴があります。こうした管理の負担や、体調の波によって仕事や生活にどう支障が出ているかを具体的に伝えることが大切です。「薬を飲んでいれば普通に生活できる」と一括りにされがちですが、実際には体調管理そのものが日常の大きな負担になっているケースも少なくありません。
薬でコントロールできているので、障害年金は対象外だと思っていました。それでも申請していいのでしょうか?
社労士治療をしていること自体は対象外の理由になりません。薬でコントロールしていても、疲れやすさや体調の波が続いていたり、仕事や家事に支障が出ていたりするなら、その実態を伝えることが大切です。一度、今の生活での困りごとを整理してみましょう。
「副腎クリーゼ」を起こしたことがある場合、認定に影響しますか?

副腎クリーゼ(急性副腎不全)を起こした経験がある場合、それは病状の重さを示す重要な情報として、審査に影響する可能性があります。
副腎クリーゼは、感染症や手術、強いストレスなどをきっかけに、体が急激にホルモン不足の状態に陥り、意識障害やショック状態に至ることもある緊急事態です。過去に副腎クリーゼで救急搬送や入院をした経験がある場合は、その頻度や重症度を診断書や病歴・就労状況等申立書に具体的に記載してもらうことが大切です。命に関わりかねない事態を繰り返している場合は、日常生活における制約の大きさを裏付ける重要な情報になります。
日頃の予防的な工夫も伝えておきましょう
体調不良時にステロイドの増量が必要になる、常に緊急時用の注射薬を携帯している、といった日頃の管理そのものが大きな負担になっているケースもあります。こうした「クリーゼを防ぐための努力」も、生活への支障として伝える価値があります。旅行や出張の際に薬の携帯や医療情報カードの準備が欠かせないといった制約も、日常生活の困難さを示す材料になります。周囲に病状を説明し理解を得ておく必要がある点も、見えにくい負担のひとつです。
診断書には、どんなことを書いてもらえばいいですか?
倦怠感や体調の波が日常生活や仕事にどう影響しているか、副腎クリーゼの既往があるかどうかを、具体的に診断書へ反映してもらうことが重要です。
「疲れやすい」というだけでなく、どのくらいの頻度で、どんな場面で体調を崩すのか、仕事や家事にどんな支障が出ているのかを、日頃から医師に伝えておくことが大切です。診察の限られた時間で伝えきれないことも多いため、体調の記録をメモにまとめて持参する方法も有効です。数値で示せない分、具体的なエピソードの積み重ねが説得力を持ちます。天候や生理周期、季節の変わり目など、体調を崩しやすいタイミングに傾向があれば、それも記録しておくと役立ちます。
よくある質問
Q. アジソン病は何級に認定されることが多いですか?
A. 個々の症状によって異なりますが、ホルモン補充療法で比較的安定している場合は3級、日常生活に著しい制限がある場合は2級に認定される傾向があります。ただし数値基準がないため、実際の生活状況によって幅があり、同じような治療内容でも認定結果が異なることがあります。
Q. 続発性副腎皮質機能低下症でも同じように申請できますか?
A. はい。原発性(アジソン病)か続発性かにかかわらず、同じ「代謝疾患による障害」の基準で認定の対象になります。原因となる病気の種類より、現在の症状と日常生活への支障の程度が重視されます。
Q. 症状が落ち着いている時期に診断書を書いてもらっても大丈夫ですか?
A. 診断書は現在の状態を反映するものなので、症状が落ち着いている時期に依頼すると、実際の困難さが伝わりにくくなることがあります。体調の波がある場合は、その波の実態も含めて医師に伝えておくことが大切です。可能であれば、体調が悪い時期の記録も日頃から残しておくとよいでしょう。
Q. 会社員として働きながらでも申請できますか?
A. 働いていること自体が申請の妨げになるわけではありません。ただし、就労を続けるためにどのような配慮や工夫が必要になっているかを具体的に伝えることが重要です。周囲の理解を得ながら勤務時間や業務内容を調整している場合は、その内容も伝えておくとよいでしょう。
Q. 自分の症状で対象になるか、事前に相談できますか?
A. ご相談いただけます。数値基準がない分、実際の生活状況を丁寧にうかがいながら、認定の可能性を一緒に整理していきます。診断書を依頼する前の段階でご相談いただくと、伝え方の準備もしやすくなります。
まとめ:数値基準がないからこそ、生活実態を具体的に
アジソン病(副腎皮質機能低下症)は、障害認定基準の「代謝疾患による障害」として、糖尿病以外の代謝疾患と同じ枠組みで審査される疾患です。数値基準ではなく、一般状態区分表をもとに、日常生活や就労にどれだけ支障が出ているかを総合的に考慮して等級が判断されます(障害認定基準第1章第15節)。ホルモン補充療法を続けていても、体調の波や副腎クリーゼの既往があれば、それを具体的に診断書へ反映してもらうことが認定のポイントになります。
「治療を続けているから対象外だろう」と思い込まず、今の生活での困りごとを整理してみることをおすすめします。数値で証明できない分、ご自身の言葉で状況を丁寧にお聞かせいただくことが何より大切です。香川県観音寺市に事務所を構え、全国どこからのご相談にも対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
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