監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・日本年金機構の障害認定基準・日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
相当因果関係が認められると、前後の病気は1つの傷病として扱われ、前の病気で初めて受診した日が全体の初診日になります(障害認定基準 第1 一般的事項)。
初診日が前に動くと加入制度や納付要件も変わるため、申請前に受診歴を時系列で整理してください。
高血圧と脳梗塞のように、医学的に関係がありそうでも相当因果関係「なし」と扱われる組み合わせがあります。
「何年も前にかかった病気は、今の障害と関係があるのだろうか」。複数の病歴がある方の障害年金申請では、この点が初診日を決める大きな分かれ道になります。
この記事では、障害認定基準に沿って相当因果関係の考え方を整理し、「あり」「なし」とされる代表的な組み合わせと、初診日が変わったときの影響を解説します。
障害年金の「相当因果関係」とは何ですか?
「前の病気やけががなかったら、後の病気は起こらなかった」と認められる関係のことで、認められると前後の病気は1つの傷病として扱われます。
障害認定基準の定義
障害認定基準は、「傷病」を「疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病」と定めています。「起因する疾病」とは、前の疾病や負傷との間に相当因果関係があると認められる場合をいい、負傷は含まれません。つまり、後から起きたけがは、前の病気と相当因果関係があるとは扱われません。
「併合認定」とは別の仕組み
相当因果関係は、前後の病気を「1つの傷病」として初診日をまとめる考え方です。一方、併合認定は、別々の傷病による複数の障害を合わせて等級を決める仕組みです。ご自身の病気がどちらに当たるかで、初診日の取り方が変わります。
相当因果関係が「あり」「なし」とされるのは、どんな組み合わせですか?

糖尿病と糖尿病性腎症のように、前の病気が進行して後の病気が生じた組み合わせは「あり」、高血圧と脳出血のように別の病気として扱われる組み合わせは「なし」とされます。
実務で示されている代表例
| 判断 | 前の病気・治療 → 後の病気・障害 |
|---|---|
| あり | 糖尿病 → 糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害 |
| あり | 慢性腎炎・ネフローゼ症候群・多発性のう胞腎 → 慢性腎不全 |
| あり | 肝炎 → 肝硬変 |
| あり | 手術時の輸血 → 肝炎/ステロイドの投薬 → 大腿骨頭無腐性壊死 |
| あり | 肺疾患の手術 → 呼吸不全(期間が長くても可) |
| なし | 高血圧 → 脳出血・脳梗塞 |
| なし | 糖尿病 → 脳出血・脳梗塞 |
| なし | 近視 → 黄斑部変性・網膜剥離・視神経萎縮 |
医学的な関係と同じとは限らない
高血圧は脳出血の危険因子ですが、障害年金では相当因果関係なしとして、脳出血で初めて受診した日が初診日になります。医学的に関係がありそうかどうかではなく、制度上の取扱いで判断されるため、自己判断で初診日を決めないことが大切です。
10年前から血圧の薬を飲んでいて、去年脳梗塞になりました。初診日は血圧で受診した日になるんですか?
社労士高血圧と脳梗塞は相当因果関係なしと扱われるので、初診日は脳梗塞で初めて受診した日になるのが通常です。そのときの加入制度と納付状況を確認しましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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相当因果関係が認められると、初診日や受給要件はどう変わりますか?
前の病気の初診日を基準に、加入していた年金制度、保険料の納付要件、初診日の証明がすべて判断し直されます。
初診日が前に動くと変わる4つのこと
| 項目 | 変わる内容 |
|---|---|
| 加入していた制度 | 前の初診日に厚生年金なら障害厚生年金(3級あり)、国民年金なら障害基礎年金(1・2級のみ) |
| 保険料納付要件 | 前の初診日の前日時点で判断(国民年金法第30条) |
| 20歳前の初診日 | 前の初診日が20歳前なら、納付要件を問わない障害基礎年金の対象(国民年金法第30条の4) |
| 初診日の証明 | 前の病気で最初にかかった医療機関の受診状況等証明書が必要 |
有利になる場合と不利になる場合
前の初診日に会社員で厚生年金に入っていた場合や、後の初診日の時点では未納があっても前の時点では要件を満たす場合は、有利になります。反対に、前の病院のカルテが残っておらず初診日を証明できない場合や、前の時点で未納が多い場合は、受給が難しくなります。
どちらになるかは受診歴しだいです。前の病気と後の病気、それぞれの最初の受診日と医療機関を書き出してから判断しましょう。
精神疾患では、前後の病気はどう扱われますか?

精神疾患では病名が途中で変わることが多く、前後の病名が同じ一連の病気と判断されれば、最初に受診した日が初診日になります。
発達障害のあとにうつ病を発症した場合
発達障害の方が、職場や生活の困難からうつ病などを発症した場合、実務では同一の傷病として、発達障害で初めて受診した日を初診日と扱うことが一般的です。障害認定基準(第8節)も、発達障害と他の精神疾患が併存するときは、併合認定をせず諸症状を総合的に判断するとしています。
神経症から始まった場合と「社会的治癒」
パニック障害などの神経症は、原則として認定の対象外です(第8節)。ただし、精神病の病態を示す場合はうつ病などに準じて扱われるため、最初の受診がどの病名だったかの確認が欠かせません。また、前後に関係があっても、長期間治療を受けずに普通に生活・就労できていた期間があれば、「社会的治癒」として後の受診日を初診日とできる場合があります。
よくある質問
Q. 相当因果関係があるかどうかは、誰が判断しますか?
A. 日本年金機構が、提出された診断書や受診状況等証明書、病歴・就労状況等申立書の内容から判断します。主治医の意見は重要な材料になりますが、医師が関係ありと書いても、制度上は別の傷病と判断されることがあります。
Q. 前の病気の病院にカルテが残っていない場合は?
A. 2番目以降の医療機関の記録や診察券、お薬手帳などを組み合わせて初診日を証明する方法があります。その場合は「受診状況等証明書が添付できない申立書」を提出し、手元にある資料を添えます。前の病院が閉院している場合も同じです。
Q. 相当因果関係がない2つの障害は、合わせて評価されますか?
A. 別々の傷病でも、それぞれの障害が一定の程度にあれば「併合認定」で合わせて等級が判断されます。ただし初診日は傷病ごとに別で、それぞれ受給要件を確認する必要があります。組み合わせによっては、等級が上がらないこともあります。
Q. 初診日の判断に納得できない場合はどうすればいいですか?
A. 決定を知った日の翌日から3か月以内に、社会保険審査官へ審査請求ができます(社会保険審査官及び社会保険審査会法第4条)。その際は、前後の病気の経過を示す診断書などの医証を新たに用意し、主張を裏付けることが大切です。
まとめ:相当因果関係は「初診日をどこにするか」の問題
相当因果関係は、等級よりも先に「初診日」を決める考え方です。次の一歩として、①これまでにかかった病気と最初の受診日を年表にする、②それぞれの時点の加入制度と納付状況を確認する、③前の病院にカルテが残っているかを問い合わせる、の3つから始めてください。
どちらの初診日で請求すべきか迷ったら、申請前に専門家へご相談ください。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・国民年金法 第30条・第30条の4(e-Gov法令検索)
・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第1 一般的事項(日本年金機構)
・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害(日本年金機構)
・用語集「初診日」(日本年金機構)
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