監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・日本年金機構の公表情報(請求時期・障害認定日)に基づき作成しています。
この記事の結論
障害認定日から3か月以内に受診していなければ、その時点の診断書が作れないため、原則としてさかのぼって請求することはできません。
その場合も、今の状態で請求する「事後重症請求」で障害年金を受けられます(国民年金法第30条の2)。
ただし人工透析や人工関節などは障害認定日が早まる特例があり、受診していないと思っていた時期の記録が使える場合があります。
「1年6か月たったころは、通院をやめていた」「その時期だけ病院に行っていなかった」。さかのぼって請求しようとしたときに、この点で手が止まってしまう方は少なくありません。
この記事では、障害認定日のころに受診していない場合に何ができて何ができないのか、さかのぼれないときの請求方法、そして見落としやすい確認ポイントを、国の資料をもとに整理します。
障害認定日のころに受診していないと、さかのぼって請求できませんか?
原則としてできません。さかのぼって請求するには、障害認定日から3か月以内の状態を書いた診断書が必要だからです。
必要なのは「障害認定日の状態」を書いた診断書
障害認定日(原則として初診日から1年6か月たった日)の状態で請求する方法を「障害認定日による請求」といいます。日本年金機構は、この請求の診断書を「障害認定日より3カ月以内の現症のもの」としています。障害認定日に等級に当てはまる状態であれば、その翌月分から年金を受けられます(国民年金法第30条・第18条)。
受診していなければ、医師は診断書を書けない
診断書は、医師が診察した内容やカルテの記録をもとに作成するものです。障害認定日から3か月以内に受診がなければ、その時期の状態を書く根拠がありません。つらくて通院できなかった時期ほど、記録が残っていないのはよくあることです。まずは当時の受診歴を確認してみましょう。
障害認定日ちょうどに受診していなくても大丈夫ですか?
大丈夫です。障害認定日の当日でなくても、障害認定日から3か月以内に受診していれば、その時期の診断書を作成してもらえます。
「1日の受診」ではなく「3か月の幅」で考える
障害認定日の当日に病院に行っている方はほとんどいません。診察券やお薬手帳、医療費の領収書などを見て、障害認定日から3か月以内に受診した日があるかを確かめてください。1回でも受診してカルテに記録があれば、診断書を依頼できる可能性があります。
2つの請求方法の違い
| 障害認定日による請求 | 事後重症による請求 | |
|---|---|---|
| 必要な診断書 | 障害認定日より3か月以内の状態(請求日と1年以上離れていれば、直近の診断書も) | 請求日前3か月以内の状態 |
| 年金の始まり | 障害認定日の翌月分から(さかのぼりは時効により5年分まで) | 請求した日の翌月分から |
| 請求の期限 | 特になし | 65歳の誕生日の前々日まで |
| 根拠 | 国民年金法第30条 | 国民年金法第30条の2 |

1年6か月のころは通院をやめていた気がします。もうさかのぼるのは無理でしょうか?
社労士まずは初診日と障害認定日を正確に出して、その前後の受診歴を一緒に確認しましょう。記憶よりも実際の記録が大切です。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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さかのぼれない場合は、どうすればいいですか?
今の状態で請求する「事後重症請求」をします。認められれば、請求した日の翌月分から障害年金を受けられます。
事後重症請求は、今の診断書で請求できる
事後重症請求は、障害認定日には等級に当てはまらなかった、または当時の状態を証明できない場合に、その後の状態で請求する方法です(国民年金法第30条の2、厚生年金保険法第47条の2)。診断書は請求日前3か月以内の状態を書いたものを使います。
請求が1か月遅れると、1か月分受け取れない
事後重症請求は、請求した日の翌月分からしか受け取れず、さかのぼりはありません。また、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。さかのぼれないと分かったら、書類の準備を急ぎ、早めに請求することが大切です。
「受診していない」と思っても、確かめることはありますか?
あります。障害認定日が1年6か月より早まる特例と、初診日そのものが正しいかを確かめてください。
障害認定日が早まる特例がある
日本年金機構は、初診日から1年6か月以内に次のような状態になった場合、障害認定日を早める特例を定めています。人工透析は開始から3か月たった日、人工関節は挿入した日、ペースメーカーは装着した日、在宅酸素療法は開始した日などです。特例に当たれば、治療中で受診している時期が障害認定日になることがあります。

初診日がずれていれば、障害認定日もずれる
障害認定日は初診日(その病気で初めて医師の診察を受けた日)から数えます。たとえばうつ病で、精神科より前に内科を受診していた場合、内科の受診日が初診日になることがあります。初診日が変われば障害認定日も変わり、受診していた時期に重なる場合があります。自己判断であきらめる前に、受診歴を時系列で書き出してみてください。
よくある質問
Q. 障害認定日のころは重く、今は少し軽くなっている場合もさかのぼれますか?
A. さかのぼれる場合があります。障害認定日に等級に当てはまれば受給権が発生し、その後に等級に当てはまらなくなった時点で支給が停止されます(国民年金法第36条第2項)。障害認定日と現在の両方の診断書を提出して審査を受けます。
Q. さかのぼって受け取れるのは何年分までですか?
A. 最大5年分です。障害認定日が10年前でも、時効により5年より前の分は受け取れません(国民年金法第102条)。障害認定日の診断書が取れる見込みがあるなら、カルテが残っているうちに早めに動くことが大切です。
Q. 事後重症請求だと、等級が低く判定されやすいですか?
A. 低く判定されやすいことはありません。等級は請求方法ではなく、診断書に書かれた障害の状態で判定されます。違うのは年金の始まる時期と、さかのぼりがないことです。今の生活の困りごとを診断書に正確に反映してもらいましょう。
Q. 65歳を過ぎてからでも、事後重症請求はできますか?
A. できません。事後重症請求は、65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出する必要があります(国民年金法第30条の2)。60代前半で障害認定日の診断書が取れない方は、65歳になる前に請求を済ませてください。
まとめ:受診していなくても、今から請求できる道はある
障害認定日のころに受診していなくても、障害年金そのものをあきらめる必要はありません。まずは初診日と障害認定日を正確に確かめ、3か月以内の受診歴がないかを記録で確認し、さかのぼれない場合は早めに事後重症請求に進みましょう。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
この記事に関連する受給事例
正しい認定日判断で受給損失を防いだ透析患者のケース|障害厚生年金2級|愛媛県
参考資料
・国民年金法 第30条・第30条の2・第36条・第102条(e-Gov法令検索)
・障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額(日本年金機構)
・障害基礎年金を受けられるとき(日本年金機構)
・用語集「障害認定日」(日本年金機構)
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