監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法・国の障害認定基準に基づき作成しています。
この記事の結論
肺高血圧症は、息切れや疲れやすさで日常生活や仕事に制限があれば、障害年金の対象になります。
障害認定基準は「肺血栓塞栓症、肺動脈性肺高血圧症は、心疾患による障害として認定する」と定めており、主に心疾患の基準で審査されます。
一方で呼吸器疾患の基準にも肺血管疾患の規定があるため、どちらの診断書を使うかは検査結果を見て主治医と確認することが大切です。
「少し歩いただけで息が切れる」「疲れやすく、以前のように働けない」。肺高血圧症と診断され、そんな状態が続いている方は少なくありません。
この記事では、肺高血圧症で障害年金を申請するときに、どの認定基準で審査されるのか、在宅酸素療法を受けている場合はどうなるのか、初診日はいつになるのかを、国の障害認定基準をもとに整理します。
肺高血圧症でも障害年金はもらえますか?
もらえます。肺高血圧症によって日常生活や仕事に制限があれば、障害年金の対象になり、1級から3級のいずれかで認定されます。
病名ではなく、生活や仕事への制限で審査される
障害年金は、病名ではなく、病気によって日常生活や仕事がどの程度制限されているかで審査されます(国民年金法第30条・厚生年金保険法第47条)。肺動脈性肺高血圧症だけでなく、慢性血栓塞栓性肺高血圧症など、原因の異なる肺高血圧症も対象です。
3級があるのは初診日に厚生年金だった方だけ
障害基礎年金は1級・2級だけで、3級は障害厚生年金にだけあります。初診日(その病気で初めて医師の診察を受けた日)に会社員などで厚生年金に加入していたかどうかで、受けられる等級の範囲が変わります。
肺高血圧症は、どの認定基準で審査されますか?
肺動脈性肺高血圧症と肺血栓塞栓症は、心疾患の認定基準で審査されます。障害認定基準の心疾患の節に「心疾患による障害として認定する」と明記されています。

| 心疾患の基準 | 呼吸器疾患の基準 | |
|---|---|---|
| 認定基準の規定 | 肺血栓塞栓症、肺動脈性肺高血圧症は心疾患として認定する | 原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症等の肺血管疾患は、呼吸不全の検査値と日常生活状況で総合的に認定する |
| 主に見られるもの | 心電図・心エコーなどの検査所見、息切れ・動悸・むくみなどの症状、一般状態区分 | 動脈血ガス分析値(血液中の酸素の量)、日常生活の状況 |
| 使う診断書 | 循環器疾患の障害用 | 呼吸器疾患の障害用 |
心疾患として審査されるときは「一般状態区分」が目安になる
心疾患の認定基準は、検査所見や症状に加えて、日常生活の状態を「ア」から「オ」の5段階で示す一般状態区分を使います。たとえば「歩行や身のまわりのことはできるが軽い労働もできず、日中の半分以上は起きている」状態はウに当たり、2級または3級の目安になります。
呼吸器の基準にも肺血管疾患の規定がある
呼吸器疾患の認定基準にも、原発性肺高血圧症や慢性肺血栓塞栓症などの肺血管疾患について、血液中の酸素の量と日常生活の状況で総合的に認定するという規定があります。酸素の取り込みの低下が目立つ場合は、どちらの診断書で請求するかを主治医と確認してください。
主治医は循環器内科ですが、呼吸器の診断書のほうがいいのでしょうか?
社労士肺動脈性肺高血圧症なら、まずは心疾患の基準で考えます。どの検査結果に一番はっきり障害が表れているかを主治医と確認し、合う診断書を選びましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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在宅酸素療法を始めたら、何級になりますか?
在宅酸素療法を始めたことだけで、等級が決まるわけではありません。「常時の在宅酸素療法で原則3級」とする規定は、呼吸器疾患(呼吸不全)の認定基準に置かれたものです。
呼吸不全の基準にある在宅酸素療法の規定
呼吸器疾患の認定基準は、「常時(24時間)の在宅酸素療法を施行中のもので、かつ、軽易な労働以外の労働に常に支障がある程度のものは3級と認定する」と定めています。障害認定日も、初診日から1年6か月以内に在宅酸素療法を始めた場合は、その開始日になります。
心疾患として審査されるなら、検査所見と生活の状態で決まる
肺高血圧症を心疾患の基準で審査する場合、等級は在宅酸素療法の有無ではなく、検査所見・症状・一般状態区分を合わせて判断されます。酸素を使っていても階段で休む、家事を分けて行うなど、生活の中の制限を具体的に主治医へ伝えることが大切です。
肺高血圧症の初診日は、いつになりますか?
肺高血圧症の初診日は、肺高血圧症と診断された日ではなく、息切れなどの症状で初めて医師の診察を受けた日です。障害認定基準は初診日を「障害の原因となった傷病につき、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」と定めています。

診断までに複数の病院を受診していることが多い
肺高血圧症は、息切れや疲れやすさで近くの内科を受診し、いくつかの検査を経て専門病院で診断されることが少なくありません。最初に受診した病院と日付を書き出し、そこに受診状況等証明書(初診日を証明する書類)を依頼できるか確認しましょう。
障害認定日は、初診日から1年6か月を経過した日
障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です(国民年金法第30条第1項)。診断まで時間がかかった方は、すでに障害認定日を過ぎていることもあるため、さかのぼって請求できるかも含めて早めに専門家へ相談してください。
よくある質問
Q. 指定難病の医療費助成を受けていれば、障害年金も受けられますか?
A. 自動的には受けられません。指定難病の医療費助成と障害年金は別の制度で、障害年金は年金事務所などへ別に請求する必要があります。医療費助成の受給者証や申請書類の控えは、受診歴や診断の時期を確かめる手がかりとして役立ちます。
Q. 座り仕事なら続けられていますが、申請できますか?
A. 申請できます。心疾患の一般状態区分の「イ」は、肉体労働は制限を受けるが歩行や軽い労働、座業はできる状態で、3級の目安に含まれます。仕事を続けるために受けている配慮や、帰宅後に横になって休んでいる様子も主治医に伝えてください。
Q. 薬で症状が落ち着いている場合はどうなりますか?
A. 審査されるのは、治療を続けている状態での日常生活の制限です。診断書にも、治療を受けたうえでの状態が書かれます。薬で息切れが軽くなっていても、坂道や階段の途中で休む、外出は短時間に限るなど、残っている制限を具体的に伝えましょう。
Q. 身体障害者手帳の等級と、障害年金の等級は同じになりますか?
A. 必ずしも同じになるとは限りません。身体障害者手帳(心臓機能障害)と障害年金は別の制度で、それぞれ別の基準で審査されます。手帳の等級に関係なく障害年金の基準で改めて審査され、手帳を持っていなくても請求できます。
まとめ:肺高血圧症は主に心疾患の基準で審査される
肺高血圧症は、日常生活や仕事に制限があれば障害年金の対象になり、主に心疾患の基準で審査されます。まずは息切れなどで最初に受診した病院と日付を確かめ、主治医とどの診断書を使うかを相談するところから始めてみてください。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・厚生年金保険法 第47条(e-Gov法令検索)
・障害認定基準 第11節 心疾患による障害(日本年金機構)
・障害認定基準 第10節 呼吸器疾患による障害(日本年金機構)
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