監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法および日本年金機構の障害認定基準(第11節)に基づき作成しています。
この記事の結論
慢性心不全の等級は、EF値やBNP値などの異常検査所見、心不全の臨床所見の数、一般状態区分の3つの組み合わせで決まります(障害認定基準 第11節)。
心筋疾患の例示では、2級はEF40%以下と臨床所見5つ以上と区分ウ又はエ、3級はEF50%以下と臨床所見2つ以上と区分イ又はウが目安です。
数値が届かなくても総合的に認定されるため、区分の参考値(METs)に当たる生活の実態を伝えることが鍵です。
「少し歩くだけで息が切れる」「横になると苦しくて眠れない」。心不全のつらさは外から見えにくく、審査で伝わりにくい障害です。
障害認定基準は、そのつらさを「検査の数値」「臨床所見」「一般状態区分」という3つの物差しで測ります。この記事では、第11節の原文をもとに、それぞれの物差しで何が見られるのか、実態をどう裏付ければよいのかを整理します。
慢性心不全は、障害年金の何級に認定されますか?
心不全の重さに応じて1級から3級に認定され、心筋疾患の例示では2級はEF40%以下、3級はEF50%以下が数値の目安です。
原因の病気ごとに区分がある
障害認定基準 第11節は、心疾患を弁疾患、心筋疾患、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、難治性不整脈、大動脈疾患、先天性心疾患に区分しています。慢性心不全は、こうした心疾患が進んだ結果として現れる状態で、原因の病気の区分ごとに基準が定められています。
心筋疾患の例示
| 等級 | 障害の状態(心筋疾患の例示) |
|---|---|
| 1級 | 安静時にも心不全の症状(NYHA心機能分類クラスⅣ)があり、一般状態区分表のオに当たる |
| 2級 | 異常検査所見のF(EF40%以下)に加えて臨床所見が5つ以上あり、区分ウ又はエに当たる(ほかにA〜E・Gのうち2つ以上と臨床所見5つ以上の場合も) |
| 3級 | EF値50%以下で臨床所見が2つ以上あり、区分イ又はウに当たる(ほかにA〜E・Gのうち1つ以上と臨床所見1つ以上の場合も) |
弁疾患や虚血性心疾患など、ほかの区分にはそれぞれの基準があります。ご自身の心不全の原因がどの区分に当たるかを、まず主治医に確かめてください。
審査では、どの検査数値が見られますか?
認定基準は、心電図・胸部X線・心エコー・EF値・BNP値などを「異常検査所見」AからGとして定めています。

異常検査所見の一覧
| 所見 | 内容(障害認定基準 第11節) |
|---|---|
| A | 安静時心電図で0.2mV以上のST低下、または0.5mV以上の深い陰性T波 |
| B | 負荷心電図(6METs未満相当)などで明らかな心筋虚血所見 |
| C | 胸部X線で心胸郭係数60%以上、または明らかな肺静脈性うっ血所見や間質性肺水腫 |
| D | 心エコー図で中等度以上の左室肥大と心拡大、弁膜症、収縮能の低下、拡張能の制限 |
| E | 心電図で重症な頻脈性または徐脈性不整脈所見 |
| F | 左室駆出率(EF)40%以下 |
| G | BNPが200pg/ml相当を超える |
数値だけで決まるわけではない
認定基準は、「呼吸困難、心悸亢進、尿量減少、夜間多尿、チアノーゼ、浮腫等の臨床症状、X線、心電図等の検査成績、一般状態、治療及び病状の経過等により、総合的に認定する」としています。検査の数値が基準に届かなくても、それだけで対象外になるわけではありません。
検査の数値はそれほど悪くないと言われたのに、生活はかなりしんどいです。
社労士数値と実際の生活にずれがある方は少なくありません。認定基準は臨床症状や一般状態も含めて総合的に見ると定めているので、生活の実態を診断書に反映してもらうことが大切です。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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「苦しくて歩けない」は、どうすれば裏付けられますか?
一般状態区分には参考値として運動の強さ(METs)が示されているため、負荷検査の結果と日常の具体的な場面をそろえて伝えます。
一般状態区分とMETsの対応
METsは、安静時の酸素の取り込み量を1として、活動するときにその何倍の酸素を使うかを示す単位です。第11節は一般状態区分表に、次の参考値を示しています。
| 一般状態区分 | METsの参考値 |
|---|---|
| ア | 6METs以上 |
| イ | 4METs以上6METs未満 |
| ウ | 3METs以上4METs未満 |
| エ | 2METs以上3METs未満 |
| オ | 2METs未満 |
安静時の数値に出にくいときこそ
安静にしているときの検査では異常が目立たなくても、動いたときに苦しくなる方がいます。運動負荷の検査を受けていれば、その結果は区分を判断する客観的な材料になります。あわせて「着替えるだけで息が上がる」「買い物の途中で何度も休む」といった場面を、主治医に具体的に伝えてください。
診断書を頼むとき、主治医に何を伝えればよいですか?
症状が出る動作と頻度、入院や治療の経過、仕事や家事でどれだけ制限があるかの3点を、メモにして伝えます。

症状の場面と頻度を書き出す
「ときどき苦しい」ではなく、「階段を何段上ると」「週に何回」「何分続くか」を書き出します。夜に横になると苦しくて起き上がる、足のむくみが続くといった症状も、臨床所見を数えるうえで大切な情報です。心疾患の診断書は「循環器疾患の障害用」の様式で作られます。
治療の経過と働き方も伝える
認定基準は治療と病状の経過も総合的に見ると定めています。入院した時期や回数、薬が増えた経過を整理しておきます。働いている方は、短時間勤務や座ってできる仕事への配置換えなど、職場で受けている配慮も伝えてください。
よくある質問
Q. 心臓移植や人工心臓、CRTを入れた場合は何級ですか?
A. 障害認定基準 第11節は、重い心不全について、心臓移植と人工心臓を1級、CRT(心臓再同期医療機器)とCRT-Dを2級と定めています。装置の装着や手術の内容は、診断書に正確に書いてもらってください。
Q. 国民年金と厚生年金で、受けられる等級は違いますか?
A. 違います。初診日に厚生年金に加入していれば障害厚生年金で3級まで対象になります(厚生年金保険法第47条)。国民年金だけの場合の障害基礎年金は1級と2級だけです(国民年金法第30条)。どちらになるかは初診日で決まります。
Q. 心不全の原因になった病気で、基準は変わりますか?
A. 変わります。第11節は心疾患を弁疾患・心筋疾患・虚血性心疾患・難治性不整脈・大動脈疾患・先天性心疾患に区分し、区分ごとに基準を定めています。原因の病気がどの区分に当たるかを、診断書を頼む前に主治医と確かめておきます。
Q. 不支給のあとで悪化したら、もう一度請求できますか?
A. 請求できます。障害認定日のあとに悪化して等級に当たる状態になれば、65歳の誕生日の前々日までに事後重症として請求できます(国民年金法第30条の2)。支給は請求した月の翌月分からで、さかのぼりはありません。
まとめ:3つの物差しに、生活の実態を重ねる
慢性心不全の等級は、異常検査所見、臨床所見の数、一般状態区分の3つで決まります。数値が基準に届かなくても、臨床症状や治療の経過を含めて総合的に認定されます。一般状態区分の参考値(METs)を手がかりに、動いたときの苦しさを具体的な場面で主治医に伝え、診断書に反映してもらうことから始めてください。
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参考資料
・国民年金法 第30条・第30条の2(e-Gov法令検索)
・厚生年金保険法 第47条(e-Gov法令検索)
・障害認定基準 第11節 心疾患による障害(日本年金機構)
・障害年金の請求手続き等に使用する診断書・関連書類(日本年金機構)
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