監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は国民年金法・厚生年金保険法・国の障害認定基準に基づき作成しています。
この記事の結論
脳腫瘍の治療後も、手足のまひや高次脳機能障害などで日常生活や仕事に支障が続いていれば、障害年金を申請できます。
審査は「脳腫瘍」という病名ではなく、残った障害ごとの認定基準で行われるため、障害に合った診断書を選ぶことが大切です。
良性の髄膜腫なども対象で、初診日は脳腫瘍と診断された日ではなく、頭痛などの症状で初めて受診した日になることがあります。
脳腫瘍の手術や放射線治療を終えたあとも、まひやもの忘れ、発作などが残り、以前のように働けない方は少なくありません。
この記事では、脳腫瘍で障害年金を申請するときに、どの基準で審査されるのか、初診日はいつになるのか、治療中や働いている場合はどうなるのかを、国の障害認定基準をもとに整理します。
脳腫瘍の治療後も働けないとき、障害年金は申請できますか?
申請できます。脳腫瘍やその治療によって障害が残り、日常生活や仕事に支障があれば、障害年金の対象になります。
悪性か良性かで対象が決まるわけではない
障害年金は、病名ではなく、病気やけがによって残った障害の程度で審査されます(国民年金法第30条・厚生年金保険法第47条)。髄膜腫のような良性の脳腫瘍でも、手術後に手足のまひや視野の障害が残っていれば対象です。腫瘍の種類よりも、治療を終えたあとに何ができなくなったかが審査の中心になります。
3級があるのは初診日に厚生年金だった方だけ
障害基礎年金は1級・2級だけで、3級は障害厚生年金にだけあります。初診日(その病気で初めて医師の診察を受けた日)に会社員などで厚生年金に加入していたかどうかで、受けられる等級の範囲が変わります。
脳腫瘍の障害は、どの基準で審査されますか?
脳腫瘍の障害は、残った症状ごとに、障害認定基準のそれぞれの節で審査されます。悪性新生物(がん)の認定基準も、腫瘍や治療によって起こる局所の障害は「本章各節の認定要領により認定する」と定めています。

| 残った主な症状 | 審査される基準 | 使う診断書 |
|---|---|---|
| 手足のまひ・歩行の障害 | 肢体の障害 | 肢体の障害用 |
| 記憶・注意などの低下(高次脳機能障害) | 精神の障害 | 精神の障害用 |
| てんかん発作 | 精神の障害 | 精神の障害用 |
| 視力・視野の障害 | 眼の障害 | 眼の障害用 |
| 言葉が出にくい・話しにくい | 音声又は言語機能の障害 | 聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用 |
| 治療による全身の衰弱・倦怠感 | 悪性新生物による障害 | 血液・造血器・その他の障害用 |
治療の副作用による衰弱も審査の対象になる
悪性新生物の認定基準は、腫瘍そのものによる障害だけでなく、「悪性新生物に対する治療の効果として起こる全身衰弱又は機能の障害」も対象にしています。放射線治療や抗がん剤のあとに続く強い倦怠感も、日常生活への影響として伝えましょう。
障害が複数残ったときは合わせて認定される
手足のまひと高次脳機能障害のように、別々の障害が残った場合は、それぞれの程度を合わせて等級を決める「併合認定」の仕組みがあります。どちらか一方の診断書だけで請求すると、残りの障害が審査に反映されないため注意してください。
まひもあるし、もの忘れもひどくなりました。診断書は何枚必要ですか?
社労士まひは肢体の障害用、もの忘れなどは精神の障害用と、障害ごとに診断書を用意して請求します。どの障害が日常生活に一番影響しているかを、まず整理してみましょう。
ご自身のケースが当てはまるか、迷っていませんか
障害年金は、同じ傷病でも初診日や日常生活の状況によって結果が変わります。記事だけでは判断がつかない部分も多いので、気になる点があればお気軽にお声かけください。ご依頼前のご相談は無料です。
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脳腫瘍の初診日は、いつになりますか?
脳腫瘍の初診日は、脳腫瘍と診断された日ではなく、その症状で初めて医師の診察を受けた日です。日本年金機構は初診日を「障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」としています。

頭痛やけいれんで受診した日が初診日になることがある
頭痛やめまい、けいれんなどで近くの内科を受診し、その後の検査で脳腫瘍が見つかった場合は、その症状が脳腫瘍によるものであれば、最初の受診日が初診日になります。脳神経外科で診断を受けた日だけを初診日と考えないようにしましょう。
救急搬送されたときは、最初に運ばれた病院を確認する
発作で救急搬送され、その後に別の病院で手術を受けた場合は、最初に運ばれた病院が初診の病院になることがあります。初診日に加入していた年金制度で、3級の有無や保険料の要件の判断が変わるため、受診した順番を書き出しておくと安心です。
治療を続けている人や働いている人も、申請できますか?
治療を続けていても、働いていても申請できます。審査で見られるのは、障害認定日の時点で障害がどの程度残っているかです。
治療中でも、初診日から1年6か月で申請できる
障害認定日は、初診日から1年6か月を経過した日か、それより前に症状が固定した日です(国民年金法第30条第1項)。再発予防の治療や経過観察が続いていても、1年6か月を経過すればその時点の状態で請求できます。
働いている場合は、職場での配慮を具体的に伝える
悪性新生物の認定基準は、検査の結果に加えて「具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する」と定めています。短時間勤務になった、復職後に担当業務を減らしてもらったなど、仕事で受けている配慮を主治医に伝え、申立書にも書きましょう。働き方に迷いがあるときは、早めに専門家へ相談してください。
よくある質問
Q. 手術から1年6か月たっていなくても申請できますか?
A. 数え始めは手術日ではなく初診日です。初診日から1年6か月を経過していれば、手術から日が浅くても申請できます。それより前に症状が固定した場合は、その日から申請できます。
Q. てんかん発作が残った場合、何級になりますか?
A. 発作の種類と頻度で判断されます。十分な治療をしても、意識障害を伴う発作や転倒する発作が年2回以上あり、日常生活が著しく制限される場合は、2級の目安に当たります。
Q. もの忘れなどは本人が気づきにくいのですが、どう伝えればいいですか?
A. ご家族が気づいた変化を書き出して、主治医に伝えてください。約束を忘れる、同じ質問を繰り返すなど、生活の中の具体的な場面を伝えると、診断書に反映されやすくなります。
Q. 身体障害者手帳を持っていなくても申請できますか?
A. 申請できます。身体障害者手帳と障害年金は別の制度で、それぞれ別の基準で審査されます。手帳の有無や等級は、障害年金の請求の条件ではありません。
まとめ:脳腫瘍は「残った障害ごと」に審査される
脳腫瘍の障害年金は、病名ではなく、治療後に残った障害ごとの基準で審査されます。まずは日常生活で困っている症状を書き出し、どの診断書が必要かを整理するところから始めてみてください。中四国にお住まいの方はもちろん、全国からのお問い合わせに対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
・国民年金法 第30条(e-Gov法令検索)
・厚生年金保険法 第47条(e-Gov法令検索)
・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(日本年金機構)
・用語集「初診日」(日本年金機構)
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