監修:社会保険労務士 請川智章(社会保険労務士登録番号 第37250012号/中四国障害年金相談センター 代表)
本記事は日本年金機構の公表情報に基づき作成しています。
この記事の結論
病名が確定していなくても、社労士への相談は可能です。障害年金の「初診日」は、最終的に確定した病名で受診した日ではなく、その傷病について初めて医師の診療を受けた日を指すため、診断がまだ定まっていない今の受診こそが、将来の手続きを左右する重要な記録になります。
「原因不明」「経過観察」と言われている段階でも、通院の記録や症状の経過を残しておくことで、後日診断が確定したときの手続きがスムーズになります。
ただし、実際に障害年金を請求するには診断書に確定した傷病名が必要になるため、診断が確定するまでは「準備」を進める段階、確定した時点で「申請」に入る段階と考えておくとよいでしょう。
「まだ病名がはっきりしていないのに、障害年金の相談なんてしていいのだろうか」——検査待ちや経過観察が続いている方から、よくいただく不安の声です。診断が確定してから動くべきだと考えるのは自然なことですし、まだ何もかもがはっきりしない段階で専門家に相談するのは気が引ける、という気持ちもよく分かります。中には、症状はつらいのに検査結果が原因を特定できず、「気のせいかもしれない」と自分を疑ってしまう方もいらっしゃいます。
ですが結論からいえば、病名が確定する前の相談には大きな意味があります。この記事では、なぜ診断確定前の相談が重要なのか、そして診断が確定するまでの間に何を準備しておけばよいのかを、社労士の視点から解説します。
病名が確定していなくても、社労士に相談していいのですか?
病名が確定していなくても、社労士に相談することはまったく問題ありません。むしろ、診断が確定する前の段階こそ、早めに相談する価値があります。
障害年金の相談は、診断名を確定させてから行うものだと思い込んでいる方が多いのですが、実際には症状が出始めた時期や通院の経過を整理する作業は、診断が確定する前から始められます。
「まだ早いかもしれない」と迷う必要はありません
経過観察中や検査待ちの段階であっても、今後の見通しを一緒に整理することができます。相談したことによって、その後の審査で不利益が生じることは基本的にありません。
相談は、診断名を前提としていません
初回の相談では、いつから体調に異変を感じたか、どの病院にいつ通ったかといった経過を確認することが中心になります。診断名がまだ決まっていなくても、十分に話を進めることができます。曖昧な記憶のままで構いませんので、覚えている範囲でお話しいただければ十分です。
障害年金の「初診日」は、診断が確定した日のことですか?

違います。初診日は、その傷病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日のことで、必ずしも診断が確定した日と一致しません。
国民年金法第30条第1項では、初診日を「その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」と定めています(厚生年金保険法第47条にも同様の規定があります)。「これらに起因する疾病」という文言があるとおり、後から確定した病名が最初の受診時点の症状と医学的につながっていれば、最初の受診日が初診日として扱われる仕組みが、そもそも法律の条文に組み込まれています。
「病名がついた日が初診日」という考え方は、とてもよくある誤解です。実際には、最初は原因不明として経過観察になり、後日専門の診療科で診断が確定するケースは珍しくありませんが、その場合も、最初に関連する症状で受診した日が初診日として扱われます。
なぜ初診日が重要なのか
初診日によって、どの年金制度(国民年金・厚生年金)から支給されるか、保険料納付要件を満たしているかが決まります。診断が確定する前の受診であっても、この初診日としての重要性は変わりません。例えば、会社員として勤めていた時期に最初の症状で受診していれば、後に診断が確定した時点で無職や自営業に変わっていたとしても、初診日時点の厚生年金加入という事実に基づいて障害厚生年金の対象になり得ます。
健康診断の日は原則として初診日になりません
健康診断や人間ドックで異常を指摘されただけでは、原則として初診日にはなりません。その後、実際に医療機関を受診して治療や診療を受けた日が初診日になります。ただし、医学的に見て直ちに治療が必要と認められる健診結果の場合は、健診日が初診日として扱われることもあるため、個別の状況によって判断が分かれます。
| よくある誤解 | 正しい理解 | |
|---|---|---|
| 初診日の意味 | 病名が確定した日 | 症状について初めて医師の診療を受けた日 |
| 診断確定前の受診 | 初診日とは関係ない | 将来の初診日として扱われる |
| 健康診断の日 | 初診日になる | 原則として初診日にならない |
診断が確定する前に、何を準備しておけばいいですか?

通院の記録(受診した病院名・診療科・日付)と、症状がいつからどのように現れているかのメモを残しておくことが、診断確定前にできる最も重要な準備です。
診察券や領収書、お薬手帳なども、後日初診日を証明する資料として役立つことがあります。転院や経過観察が続く場合ほど、記録が途切れやすいので注意が必要です。手帳やスマートフォンのメモアプリに、通院した日付と病院名だけでも残しておくと、後で大いに助かります。
同じ病院に通い続けることのメリット
転院を重ねると、初診日の証明がその分複雑になりやすくなります。やむを得ない事情がない限り、経過観察中も同じ医療機関に通い続けることで、後の証明がスムーズになります。転院する場合は、紹介状の発行日や転院先での初診日をメモしておくとよいでしょう。仕事や引っ越しの都合でどうしても転院が必要な場合も、前の病院でカルテのコピーを取っておくと安心です。
症状の経過をメモに残しておく
いつからどんな症状があったか、生活にどう影響しているかを簡単にメモしておくと、後で病歴・就労状況等申立書を作成する際の助けになります。診察の場では話しきれなかったことも、メモがあれば思い出しやすくなります。
今は「原因不明」としか言われていないのですが、それでも記録を残しておいた方がいいのでしょうか?
社労士はい、ぜひ残しておいてください。後から診断が確定したとき、今の受診が初診日として扱われる可能性があります。通院日や症状のメモは、今のうちにこそ整理しておく価値があります。
診断名が途中で変わった場合、初診日はどうなりますか?
前の傷病と後の傷病に「相当因果関係」が認められる場合、前の傷病で初めて受診した日が、そのまま初診日として扱われます。
これは、国民年金法第30条第1項が初診日を「傷病及びこれらに起因する疾病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」と定めていることに基づく考え方です。例えば、最初は原因不明の体調不良として経過観察になっていたケースが、後日特定の疾患と確定診断された場合でも、両者に医学的なつながりが認められれば、最初の受診日が初診日になります。
つながりが認められないケースもあります
一方で、前の傷病と後の傷病に医学的な因果関係が認められない場合は、後から診断された傷病で初めて受診した日が、新たな初診日として扱われます。例えば、高血圧を治療していた方が後に脳梗塞を発症した場合は、両者に相当因果関係なしと取り扱われるため、脳梗塞で初めて受診した日が新たな初診日になります。この判断は個別の事情によって異なるため、迷う場合は確認しておくと安心です。
いつになったら、本格的に申請の準備を始めればいいですか?
診断が確定し、医師から今後の見通しについて説明を受けた段階が、本格的に申請の準備を始める一つの目安になります。
障害年金を請求するには、診断書に確定した傷病名を記載してもらう必要があるため、診断が確定するまでは「準備」の段階、確定後は「申請」の段階と考えるとわかりやすいでしょう。ただし、診断確定を待つ間も、記録を残す準備は並行して進めておくことが大切です。両方を同時に進めておくことで、いざ診断が確定したときにスムーズに動けます。診断が確定した時点で、それまでの通院記録をまとめて社労士に見てもらえば、初診日の特定もしやすくなり、申請までの流れも早くなります。
よくある質問
Q. 診断がつかないまま何年も経過観察が続いています。それでも相談していいですか?
A. もちろんです。長期間経過観察が続いている場合こそ、初診日の記録が失われやすいため、早めに相談して記録を整理しておくことをおすすめします。年月が経つほど、当時の記憶も医療機関の記録も薄れていきます。
Q. 複数の病院を転々としていて、最初にどこに行ったか覚えていません。
A. 診察券や紹介状、お薬手帳などの記録が手がかりになることがあります。一緒に振り返りながら整理することもできますので、覚えている範囲で構いませんのでご相談ください。
Q. 精神的な不調で通院していますが、はっきりした病名がついていません。
A. 精神疾患は診断名が経過とともに変わることも珍しくありません。「うつ状態」のような暫定的な診断であっても、通院を続けていること自体が大切な記録になります。診断名が確定していないことを理由に相談を先延ばしにする必要はありません。
Q. 相談だけして、実際に申請するかどうかは後で決めることはできますか?
A. もちろんできます。相談の時点で申請を決める必要はなく、今後の見通しを知るためだけに相談される方も多くいらっしゃいます。
Q. 相談は無料ですか?
A. 初回相談は無料でお受けしています。診断名の有無にかかわらず、まずは今の状況をお聞かせください。
まとめ:今の記録が、将来の手続きを左右します
病名が確定していなくても、社労士への相談はいつでも可能です。障害年金の初診日は、診断が確定した日ではなく、その傷病について初めて医師の診療を受けた日を指し、後から確定した病名と医学的なつながりが認められれば、経過観察中の受診も初診日として扱われます(国民年金法第30条第1項)。今の受診記録こそが将来の手続きを左右する重要な情報になるため、診断確定前は通院記録や症状の経過を残す「準備」の段階、確定後は診断書を用意して「申請」に進む段階と考えると整理しやすいでしょう。
「まだ早いかもしれない」とためらう必要はありません。早めにご相談いただくことで、後になって初診日の証明に困ることを防げます。診断がついていない段階でも、遠慮なくお問い合わせください。香川県観音寺市に事務所を構え、全国どこからのご相談にも対応しています。来所が難しくてもLINEで気軽にご相談いただけます。
参考資料
LINEでのご相談手順(24時間受付)
当センターでは、外出が難しい方や遠方にお住まいの方でもスマートフォン一つでご相談いただけるよう、公式LINEでの無料相談・受給判定を承っております。全国どこからでもご利用いただけます。
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